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2008年7月28日

同僚のカード盗んだ警察官、消化不良な公判ですよ

 内閣改造がうわさされる仲、鳩山法務大臣が、「サイバンインコは、私が法相を辞めましても留任します。死神は辞任します」と発言ですよ。ってことは、死神の職についていたのを認めているような。

 それより気になるのは、地検広報キャラクターの代表に昇格したサイバンインコの今度。なんと、鳩山氏の発言後に、官房長官から「裁判員だからサイにしては」と注文がつけられたのですよ。サイバンインコ大ピンチ!

 裁判員制度のキャラクターでサイといえば、日本弁護士連合会の「サイサイ」があるんだけど、格上げ予告なんでしょうか。果たしてどっちが代表キャラになるのやら。法廷の外で検察vs弁護士の争いが勃発するなんて。裁判員制度も話題づくりに必死だなぁ。

 さて、今回は、先週裁判が少なかったので、7月18日に行われた川村辰夫被告人(43)の裁判の話。罪名は、窃盗、詐欺未遂。

 同僚のクレジットカードを使い、パソコンを購入しようとしたとして警察官が逮捕されたという事件です。報道によると、小松川署地域課の巡査長川村辰夫は今年2月17日、大阪府の家電量販店で、以前同じ独身寮に住んでいた警察官のカードを提示。ノートパソコン1台(約15万円相当)を購入しようとした。川村はこの日非番でクレジット会社から名義の警察官に問い合わせがあり、発覚した。

 現役警察官によるカード詐欺です。それにしても、この記事を読んだだけでは、なぜ大阪で購入しようとしたのか、どうやってカードを入手したのか、そもそもの犯行の動機は何なのか、すべてが謎。それが法廷で明らかになりました。1つを除いては。
 起訴されたのは、3つ。1つは、今年の2月8日に独身寮から後輩の封書を持ち帰り、開封してクレジットカードを窃取した件。

asozan080728.jpg


 2つ目は、その不正入手のカードを使って、都内のセルフ式ガソリンスタンドで灯油(1万6465円相当)を購入した件。

 3つ目は、2月17日に大阪でノートパソコンを予約しようとしたが、不正入手のカードが使用不可になっていたため、未遂に終わった件。

 報道された以外にも、他人のクレジットカードで灯油を買ってたようです。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は平成14年に独身寮を退寮していたが、その後もちょくちょく独身寮に泊まりに着ていたらしい。そして、2月8日。被害者である後輩宛の封筒が独身寮に届いていたが、その後輩は退寮していたので、職場で直接手渡そうと被告人は自宅に持ち帰った。しかし、被告人は自宅でその封筒を開けて、クレジットカードを入手。

 被告人はそのカードを使い、従業員のいないガソリンスタンドで灯油を2度購入。

 カードがまだ使えることはわかったが、警視庁管内で使用すればバレると考え、大阪行きの航空券をカードで購入し、大阪へ。大阪のヤマダ電機でノートパソコンを購入しようとしたが、店員が不審を抱いたため、被告人は逃走。後日、逮捕された、というのが事件の詳細です。

 被告人はバレにくいようにわざわざ大阪に行ってたんですね。しかも、飛行機のチケットもカードで購入ですよ。なぜか、起訴されていないけど。

 法廷には、72歳になる被告人の父親が情状証人として出廷。「警察官なのに、なぜ」と落ち込んでいました。

 そして、被告人質問。まずは、弁護人から。

 弁護人 「被害者の封筒ですけど、最初は届けてあげようと思って持ち帰ったんですね」
 被告人 「そうです」
 弁護人 「他の人も含めて、届けたことは?」
 被告人 「何度かあります」
 弁護人 「再送すればいいと思うんですけど、自分で届けようと思ったのはなぜですか?」
 被告人 「今回の場合、(被害者と)同じ所属で、数日のうちに会うので、渡した方が早いかなと」

 どうやら、被告人は親切心から郵便配達みたいなことを以前からしていたようです。

 弁護人 「もともと、警察官を志望したのはなぜですか?」
 被告人 「人の役に立つ仕事だろう、と」
 弁護人 「それで、部署が変わって疑問を持ち始めた、と」
 被告人 「3年くらい前からです」
 弁護人 「どんな仕事がよかったんですか?」
 被告人 「交番勤務やパトカーがよかったです。一般の人と直接話して、世の中のために働いていると思えるのが」

 人のためになっていないと思っていたから、他人の郵便物を届けたりしてたんでしょう。でも、交番勤務以外でも十分、人のためになっていると思うんだけどねぇ。

 弁護人 「今まで人を諭してきた方でしょう。こんなことをしてどう思っていますか?」
 被告人 「犯罪を取り締まる立場にあったのに、こんなことをして。被害者、社会に対して迷惑をかけてしまい、大変申し訳ないと思ってます」

 と、反省の弁を述べ、質問終了。次は、検察官からの質問。

 検察官 「あのー、大阪行くときは飛行機だったのに、帰りは新幹線だったのはなぜですか?」
 被告人 「特に考えていませんでしたけど、すぐに現場を離れようと思って」
 検察官 「カードが使えないからでは?」
 被告人 「いいえ」
 検察官 「すぐに警察が来るかもと思った、と」
 被告人 「はい」

 犯行に関する質問は、これだけ。

 検察官 「5月16日に逮捕されるまでの間、どんな気持ちで仕事してました?」
 被告人 「捕まるかも、と思っていました」
 検察官 「自白しようとは?」
 被告人 「それはちょっと難しいというか、出来ないなと」
 検察官 「逮捕されたくなかった?」
 被告人 「それもありましたが、仕事も続けたかったので」

 仕事に疑問を感じていたはずでは? 犯行から逮捕までの3カ月の間に、仕事にやりがいを感じ始めていたんでしょうか。最後は、裁判官からの質問。

 裁判官 「弁護人からも聞かれてましたけど、そもそも警察官になろうと思ったのは、なぜですか?」
 被告人 「警察はさまざまな仕事が出来るんじゃないかと思ったのと、世のため人のために仕事がしたいと思ったからです」
 裁判官 「その気持ちを持ち続けられなかったの?」
 被告人 「自分が役に立っているのかわからなくなってしまっていて」
 裁判官 「仕事のこととかを相談できる上司はいなかったんですか?」
 被告人 「その時々はいましたけど、ここ3年位はいませんでした」
 裁判官 「わかりました」

 と、質問して終了。

 うーーん、なんだろうか。この消化不良の裁判は。聞かなきゃいけないことは他にあると思うんだけどなぁ。なぜ、クレジットカードを盗ったのかはなぞのまま。封筒も預かったのはいいとして、開封してカードを使うって、かなりの行為でしょ。しかも、被告人は警察官。よほどの理由がありそうなんだけどなぁ。仕事での悩みみたいな片付けたされてもなぁ。

 ちなみに、この裁判は7月23日に判決がありました。結果は、懲役2年6月執行猶予4年。判決よりも仕事を失ったことの方が大きいだろうけど。

※警察官は同僚のクレジットカードを無断使用し被告人席へ(写真は加工されています)

注目の裁判

11月2日(月)被告人・氏家信子:殺人ほか(判決)
<息子を殺害した事件> 09年1月、東京都大田区の無職氏家信子(当時65)は傷害を持つ双子の息子に包丁で切りつけた。弟は病院で死亡が確認された。

11月2日(月)被告人・秋山直紀:所得税法違反(初公判)
<防衛汚職関連の所得税法違反事件> 08年8月、日米平和・文化交流協会会長の秋山直紀(当時58)は、防衛関連企業から受け取ったコンサルタント料を隠し所得税を免れたとして逮捕された。

11月2日(月)被告人・竹林守、成田茂之、他1人:公職選挙法違反(詐欺登録・詐欺投票)(初公判)
<従業員の住民登録を移し投票を支持した事件> 09年9月、機械製造販売会社「水戸工業」の社長・成田茂之(当時57)らは自社の従業員の住民登録の場所を変更させ、衆議院議員選挙で自民党に投票するよう指示したとして逮捕された。

11月2日(月)被告人・熊谷智幸:強制わいせつと偽造私印使用(初公判)
<テレビ局員を装ってわいせつ行為をした事件> 09年8月、インターネット広告会社役員、熊谷智幸(当時35)は、東京都板橋区内の路上で30代の女性にフジテレビの社員を装った偽の名刺を手渡して声をかけ、近くのマンションのエントランスまで連れて行き、わいせつな行為をした疑いで逮捕された。

11月2日(月)被告人・押尾学:麻薬取締法違反(使用)(判決)
<俳優による麻薬事件> 09年8月、東京・六本木のマンションで女性が死亡していると119番通報があり、部屋に出入りしていたとして俳優の押尾学(当時31)が任意で事情聴取を受けた。任意の尿検査で、合成麻薬のMDMAに陽性反応が出たため麻薬取締法違反(使用)の疑いで逮捕された。

11月4、5、6日(水、木、金)被告人・太田周作:殺人未遂(初公判)
(初公判、5日6日も) <駅のホームから女性を突き落とした事件> 09年3月、無職太田周作(当時24)は、JR東京駅で女性(当時60)をホームから突き落とし、電車に接触して負傷させたとして、殺人未遂で逮捕された。取調べに対して「(事件を起こすのは)どこでも、誰でもよかった」などと供述した。

11月5日(木)被告人・寺岡誠吉:殺人
<運送会社役員を殺害した事件> 08年12月、運送会社社長の寺岡誠吉(当時71)は、元暴力団組員に依頼して06年9月に同社役員の栩野雅晴さん(当時66)を殺害させたとして逮捕された。

11月5日(木)被告人・中田静子 ほか1名:昏睡強盗、窃盗
<スナック客に対する昏睡強盗> 09年3月、バー経営の中田静子(当時62)はスナック経営の細江敏光(当時39)と共謀、スナックで男性客に強い酒を飲ませて昏睡状態にさせ、キャッシュカードを奪って現金自動預払機から金を引き出したとして逮捕された。

11月6日(金)被告人・波和二ほか:組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)
<L&G詐欺事件> 09年2月、健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー」は、組織的に会員から出資金をだまし取ったとして会長の波和二(かずつぎ)(当時75)や幹部を逮捕した。被害者約3万7000人、被害総額約1260億円とみられる。

11月6日(金)被告人・片石肇:強盗傷害(控訴審判決)
<プロレスグッズ専門店での強盗事件> 09年2月、千葉県柏市の無職、片石肇(当時28)は他の2人と共謀して東京都千代田区のプロレスグッズ専門店に押し入った。男性店員に暴行を加え、現金15万9000円と、マスク5点などの商品を奪った。

11月6日(金)被告人・多田知信:窃盗、住居侵入(初公判)
<警察寮での窃盗事件> 09年8月、警視庁大森警察署地域課巡査長の多田知信(当時30)は、08年11月に警察寮の同僚の部屋に侵入し、腕時計を盗んだとして逮捕された。


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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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