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2008年7月21日

強姦の長崎国際テレビ局員、否認したのは会社のため

  「ありふれた表記で格別な工夫が凝らされてはおらず、筆者の個性が発揮された部分はなく、創作性は認められない」

 産経新聞しか報じなかったので、そんなに話題になってないんだけど、裁判傍聴記の著作権を認めない判決が、先週、知的財産高等裁判所で下されました。

 これは原告がネット上に公開したライブドア事件の裁判傍聴記を、別のブログで勝手に転載されたので、そのブログが記事の削除を求めた訴訟の控訴審。こんな民事裁判があったなんて、産経新聞が伝えてなかったら知らないままだったな。これは傍聴記を書いている俺としても他人事じゃない判決ですよ。ってなわけで、最高裁のホームページで公開されている判決文を見てみました。

 その判決文によると

 実際に証言した内容を原告が聴取したとおり、記述したか、ごくありふれた方法で要約したものであるから、原告の個性が表われている部分はなく、創作性を認めることは出来ない。

 と、裁判所は判断したようです。

 うーーむ、創作性がない文章には著作権はないってことなんですね。ってことは、個性がない創作性のない文章は、著作権フリーでいいんですよね。ま、何をもって個性や創作性を判断するのか知らないけど。

 で、気になるのは新聞記事。記者や筆者の主観で書かれたものはさておき、事実を伝える記事はどうなるんだ。創作して伝えるわけにはいかないでしょ。
 でも、転載するに著作権料が必要なんだよなぁ。単行本「被告人、前へ」では1つの記事で5250円かかったし、このサイトも毎週7350円かかってるだろうし。ライブドアブログ「阿曽山大噴火のつれづれ裁判の日記」の場合は、予算の都合で記事の転載はしないように編集部から言われているし。

 すべての新聞記事に創作性はあったのかね。著作権法第10条第2項の「事実の伝達」には含まれないのかね。俺個人支払ったわけじゃないから、返金求める訴訟を起こしたりはしないけどさ。

 今回の判決文には、原告の傍聴記が載ってるんだけど、果たして創作性はないんだろうか。証人の発言をすべて箇条書きにしてある傍聴なんだけど。
 わざわざライブドア裁判の傍聴券抽選に並んで、傍聴券を入手して、丸1日がかりで傍聴したのに、要約して箇条書きですよ。俺から言わせてもらえば、もったいない! こんなぜいたくな傍聴記って他にないよなぁ。かなり、個性的だと思うんだけど。

 とにかく、これからはブログの盗用でも、盗用した文章に創作性が認められなければ、何の問題もないってことですね。今後はパクられないように、語尾に「~でR」とか「~っての。ジャン、ジャン」とか誰も思いつかない言葉をつけて、創作性を強調させて書かなくちゃ。

 さて、今回の格別な工夫が凝らされてない傍聴記は、7月17日に行われた栄紀祥被告人(25)の裁判の話。罪名は住居侵入、強姦、強姦致傷。テレビ局員による犯罪ということで、大々的に報じられましたね。報道によると詳細は以下です。
 長崎国際テレビ東京支社社員の栄紀祥は06年(平18)9月8日午前5時頃、マンションの鍵のかかっていない部屋に侵入し、眠っていた住人の女性に馬乗りになって、「ナイフを持っている。言うことを聞かないと殺すぞ」などと脅し、乱暴したという事件です。現場に残された遺留物のDNAや掌紋から栄が容疑者として浮上したが、逮捕当時は「全く身に覚えがない」と否認していたそうだ。

 そして、約1カ月後。強姦致傷などの疑いで再逮捕された。この時は栄は「会社に多大な迷惑をかけるので、当初は否認していたが、罪に服し、自らを律してまっとうな人生を送りたい」と供述し、余罪数件についても容疑を認めたと報じられた。
 調べでは、07年(平19)12月28日未明、マンションの1室に無施錠の玄関から侵入。目を覚ました女性を乱暴しようとして殴り、首や腰などに軽傷を負わせた疑い。女性に抵抗され未遂に終わった。

 事件の内容もとんでもないけど、逮捕当初否認していた理由が「会社に迷惑をかけるから」というのはひどい。本件は、再逮捕で罪を認めたことも報じられているけど、再逮捕のニュースがなければ、世間的には否認した事実しか伝えられなかったわけで「誤認逮捕かな」という印象のままだったかもしれないわけですよ。そこはテレビマンとしての知恵か。計算ずくなら、相当ひどい。

 個人的には、無施錠の部屋ってそんなにたくさんあるのかなと気になったんだけど、それは裁判で明らかに。起訴されたのは、報道された2つだけ。余罪もあるって話だったんだけど、被害届を出してないとか捜査協力をしてないのか、起訴されてないようです。

 まずは、弁護人から被告人への質問。

 弁護人 「平成17年に大学を卒業して、長崎国際テレビに就職したんですね。まずはどこで勤務したんですか?」
 被告人 「長崎本社です」
 弁護人 「部署は?」
 被告人 「営業部です」
 弁護人 「営業って、どんな仕事をするんですか」
 被告人 「CMやスポンサー広告をとる仕事です。なので、広告代理店やスポンサーを回ったり、顔をつなぐために飲み会があったり」
 弁護人 「飲み会も重要なんですか?」
 被告人 「(代理店やスポンサーの人と)知り合いになるのが重要なので。それが情報の入手や売り上げにつながると思います。昼は担当者と直接お会いしますし、夜であればお酒を一緒に飲んだり」

 どうやら、飲み会に参加するのも仕事のうちのようです、そこまでしないと広告はとれないんですね。テレビ業界は大変だ。

 弁護人 「その飲み会の代金は?」
 被告人 「自腹です」

 そういうのって交際費として領収書で切れそうなもんだけど。会社によってさまざまですね。被告人は仕事の一部である飲み会の代金が自腹であることに加え、酒が強くないこともあって、日に日にストレスがたまっていったらしい。

 弁護人 「平成18年4月に、営業部の人が1人増員したそうですね」
 被告人 「はい。自分より年上の人でしたけど、体制も整ってないので、あまり仕事をしてませんでした。自分は夜中まで残業しているのに、その人は“まだ仕事してんの”とか言って、夕方には帰っていって」

 飲み会のストレスだけじゃなく、新たにやってきた上司が仕事をしないことへのストレスも加わったのか平成18年の4月。この頃から、被告人は変な行動を始めるのです。

 弁護人 「この頃から、自分の住んでるマンションで他の部屋のドアノブをガチャガチャとやるようになったんですね」
 被告人 「はい」
 弁護人 「ガチャガチャやって、鍵がかかってない部屋はありましたか」
 被告人 「どこかの部屋が開きました」
 弁護人 「中に入った?」
 被告人 「(平成18年4月ごろは)入ってません」
 弁護人 「そんなことをやり始めたのはなぜですか?」
 被告人 「小学生がピンポンダッシュをやる感覚だったんですが、ガチャくらいだったら気づかれないんじゃないかと。それがスリルがあって」
 弁護人 「理由はそれだけ?」
 被告人 「もう1つは、社内で年下だったので、仕事を押し付けられる被害妄想があって、俺だって、こんなことが出来るんだという自己顕示欲というか」

 自分の住んでるマンション内で、ドアノブをガチャガチャするのはギリギリ犯罪じゃないとしても、こんなことでストレス解消するなんて。しかも、「俺だってこんなことできる」って、自慢にならない行為なんだけど。
 とにかく、手当たり次第に施錠をチェックしていたから、無施錠の部屋を見つけることができてたわけなんですね。

 そして、ガチャガチャが当たり前になってた平成18年9月8日に強姦事件を起こす。事件の性質上、詳細は書かないけど、被告人は飲み会のあとの犯行だったので、酔っていて記憶が断片的にしかないようです。

 平成19年12月28日の事件も同様にあまり覚えていない状態。口で反省の弁は述べてるんだけど、本当に自分の行動を理解しているのかどうか。
 次は検察官からの質問。

 検察官 「平成18年の4月から、他の部屋のドアノブをガチャガチャしたって話なんだけど、それはガチャガチャしたかったの? ドアを開けたかったの?」
 被告人 「ガチャガチャしたかった」
 検察官 「ガチャガチャが自己顕示欲?」
 被告人 「もともとはピンポンダッシュみたいな感じだったので」
 検察官 「満足した?」
 被告人 「えぇ、その時は」
 検察官 「興味がわいてきて、スリル…、ちょっとした感じで」
 検察官 「それはガチャガチャだけでは満足できなくなってたんじゃないの?」

 規範意識が鈍って、ガチャガチャだけでは止まらずに侵入したんじゃないか、と検察官が問い詰めたわけです。すると

 被告人 「(中に入るのが)悪いことをしているような感覚になって、スリルが…」
 検察官 「悪いことしてるですよ!」

 ガチャガチャも微妙(刑法132条の住居侵入未遂に抵触か?)なとこなんだけど、中に入ったら住居侵入(刑法130条)ですからね。それを「悪いことしているような」とはね。

 検察官 「あと、事件のことは本当に記憶ないの?」
 被告人 「ないです」
 検察官 「どんな被害与えたかわかってます?」
 被告人 「はい。私が理解してるのは、被害者の体と心を傷つけたこと。今までの平穏な生活を奪ってしまって、以前の生活には、戻れないし…」

 と、自分のしたことを思い返したのか、すすり泣きをしながら答える被告人。

 検察官 「なぜ、こんなことをしたと思いますか?」
 被告人 「未熟だったことです。仕事の不満の…矛先が…他人を…傷つけることに…なって…しまって。人間…として…正しい心を持って…違う…ストレスの発散の仕方を…探せばよかったと思います」

 この後は、被害女性2人と起訴されてない被害者との示談の経緯など聞かれて、質問終了。

 最後は裁判官からの質問です。

 裁判官 「ガチャガチャはどのくらいのペースでやってたんですか」
 被告人 「月に1、2回だと思います」
 裁判官 「あと、逮捕時に否認していたのは会社に迷惑をかけたくなかったのが理由ですか?」
 被告人 「はい、それだけです」
 裁判官 「それで、犯行については断片的にしか覚えていないと」
 被告人 「はい」

 すると、裁判官は呆れたようなため息をついて

 裁判官 「被害者がこれ(法廷での証言)を聞いたら、どう思うと思います?」
 被告人 「もしかしたら、こんなに(事件を)覚えてないのがわかったら、憤りを覚えるかも知れません。示談まで…してくれ…て…情けない…んですが…私…は…」

 と、証言台に頭をたれるようにして、泣き崩れていました。最後は何を言っているのか聞き取れず。

 この後、検察官は本件も含め10件ほど住居侵入をしていて、再犯の恐れがあるとして、懲役7年を求刑して、閉廷でした。

 仕事のストレスが発端でガチャガチャから始まり、住居侵入、そして強姦。犯行が徐々にエスカレートしていった典型的なパターンですね。

 それにしても、仕事のストレスが原因なのに、会社のためを思って否認をして、その心理が明かされなかったのは被害者にしてみれば、二重で頭に来ると思うんだけど。

注目の裁判

10月14日(火)被告人・上田賢治:強制わいせつ致傷(判決)
<電通の子会社社員によるわいせつ事件> 08年3月、電通テックの社員上田賢治(当時39)は、同年1月に知り合いの20代女性をカラオケ店に誘い、無理やり体を触るなどして、女性に軽傷を負わせたため逮捕された。

10月14日(火)被告人・横木正行:昏睡強盗(初公判)
<派遣風俗店員に対する昏睡強盗> 08年7月、東京都足立区の無職、横木正行(当時44)は、豊島区巣鴨のホテルに風俗店勤務の女性(当時24)を呼び睡眠薬入りの酒を飲ませ、現金6万2000円を奪った。

10月14日(火)被告人・守屋武昌、秋山収、宮崎元伸、今治友成:収賄、議員証言法違反、贈賄
<防衛装備品調達をめぐる汚職事件> 前防衛事務次官、守屋武昌(63)は、防衛省の装備品調達で山田洋行に便宜を図る見返りにゴルフ旅行接待を受けたり、現金を家族名義の口座に受け取ったりした。また、国会の証人喚問で虚偽の証言をした。

10月14日(火)被告人・桑原和宏:殺人等(判決)
<両親を死傷させた事件> 07年9月、東京都杉並区の無職・桑原和宏(当時38)は、カッターナイフで切りつけ、父親の正さん(当時70)を殺害、母親の房子さん(当時69)に重傷を負わせた。父親と口論になったのが原因だったと供述した。

10月15日(水)被告人・山本英世:強盗傷害(判決)
<郵便局員から小包を奪った事件> 08年7月、無職山本英世(当時23)は、東京都新宿区のビル玄関で、郵便配達員の男性(当時39)に催涙スプレーを吹きつけ、配達小包を奪って逃走した。

10月15日(水)被告人・緒方重威 満井忠男:詐欺
<朝鮮総連中央本部に対する詐欺事件> 07年6月、元公安調査庁長官、緒方重威(しげたけ)(当時73)らは、朝鮮総連に架空の売却話を持ちかけ、中央本部の土地・建物をだまし取った。

10月16日(木)被告人・荻野宏:公務執行妨害ほか(初公判)
<医師が警察官の拳銃を奪った事件> 08年5月、東京都世田谷区の医師荻野宏(当時42)は、杉並区の路上で別居中の妻とトラブルになり、かけつけた警察官の拳銃を奪って上空に向けて発砲。公務執行妨害と銃刀法違反、強盗容疑で逮捕された。

10月17日(金)被告人長沢清:殺人(判決)
<別居中の妻を刺殺した事件> 07年12月、団体職員長沢清(当時55)は、路上に止めた車内で別居中に妻の文子さん(当時52)を刃物で刺して殺害。自身も腹部や手首を切って一時意識不明の重体となった。

10月17日(金)被告人・下藤卓生:脅迫(初公判)
<ネット掲示板で歌手を脅迫した事件> 08年8月、住所不定、無職下藤卓生(当時23)は、札幌市のネットカフェから歌手小宮真央(当時20)を「8月10日に殺します 場所はてめぇの家だ」と掲示板に書き込んだ。み、脅迫した疑い。

10月17日(金)被告人・渋谷博久:不正アクセス禁止法違反、電子計算機損壊等業務妨害(初公判)
<会員データを消去した事件> 08年9月、派遣社員渋谷博久(当時28)は、ITサポート会社「アットスター」のサーバーに不正にアクセスし、通販サイトの氏名、住所などの会員データと商品データを削除した。「待遇や給与でトラブルになった上司を困らせたかった」と供述した。


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阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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