2008年7月14日
車上荒らしはホームレスカップル
7月10日、警視庁が08年上半期の刑法犯件数を発表しましたね。去年の上半期と比べると5%減少。なんと、6年連続減少ですよ。
年を追うごとに、平和になってきてるんですね。残念ながら、殺人(未遂含む)事件が10・8%の増加だけど。確か、去年って、戦後で一番、殺人事件が少なかったような。記憶違いか。俺の記憶が確かなら、殺人事件の件数が増加したのは仕方ないのかな。
さて、今回は7月11日に行われた小川忠宏被告人(30)と千明美由紀被告人(22)の裁判の話。罪名は窃盗。
当時の報道によると、2人は荒川の河川敷のテントで一緒に暮らしており、07年6月に東京都足立区の駐車場のトラックから預金通帳やキャッシュカードなどを盗んだ。ダックスフント1匹を散歩させながら、無施錠の車を探していたといい「犬を連れていれば目立たないと思った。5年前から都内や埼玉、千葉県で900件くらいやった」と供述していると伝えられた。
怪しまれないように犬を飼い、車上荒らしを繰り返していたホームレスのカップルってだけで、個人的には非常に興味深いです。
まずは、4月23日に東京簡易裁判所で行われた初公判。
起訴されたのは、去年の6月2日午前4時30分ごろ、足立区内の駐車場にとめてあった無施錠のトラックから、通帳や印鑑などを盗んだと報じられた事件だけでした。
検察官の冒頭陳述によると、小川被告人は前科1犯で、内容は本件同様の車上荒らし。千明被告人には前科はない。
2人は出会い系サイトで知り合い、千明被告人の両親とともに実家で生活していたが、小川被告人が仕事をしないので叱られ、居づらくなった。
そして、平成17年7月に2人上京。荒川の河川敷にテント(小屋?)を建て、そこで寝泊りし車上荒らしで生活費を得ていた。
逮捕後の取り調べで2人は「1000件はやっている」と供述しているらしい。
報道では900件って話だったんだけど、1000件の車上荒らしをやっていたようです。これだけ多いと、正確な数はわからないだろうけど、実はそんなもんじゃなかったのです。
初公判は、これで閉廷。余罪が多数あるのに簡裁ってのが驚きだったんだけど、そのうち地裁に移されるかなと思って、地裁の公判予定もチェックです。
でも、6月6日に行われた第2回公判も簡裁でした。この日は監禁王子こと石島泰剛被告人の裁判があって、全く同じ時間帯だったので傍聴できず。
後でわかったのは、車上荒らしの事件が1件追起訴されただけで、閉廷されたようです。
そして、7月11日の第3回公判。
追起訴されたのは、今年2月に行った2件と、平成18年にいった1件。取り調べでは1000件といっているのに、起訴されたのは5件だけということになります。
まずは、千明被告人の母親が出廷しての証人尋問から。
弁護人 「娘さん、そして小川さんと一緒に生活していたのはどのくらいですか?」
証人 「1カ月くらい」
弁護人 「1カ月と短いのは?」
証人 「部屋が狭いので出て行ったんです」
弁護人 「それで娘さんと小川被告人が同居することは許しましたか?」
証人 「初めは知らなくて。出会い系サイトっていうので知り合ったらしくて、そんな出会い系サイトだから、彼の性格もわからないんで。(家を出てから)まじめにやってると思ったのに、こんなことしてたなんてね。今は別れてもらいたいです」
と、答えになっていないんだけど、2人を別れさせたいと主張です。
弁護人 「娘さんの性格は?」
証人 「美由紀はおとなしくって、思いやりのある子なんですよね。優しいことがアタになったのかなぁって」
弁護人 「車上荒らしやるような娘さんでしたか?」
証人 「いやいやいや、びっくりしてます」
弁護人 「今後はどうしますか?」
証人 「私とお父さんで(実家で)面倒見て、そこで仕事探してもらわないと」
母親としては、小川被告人と別れさせ、実家に住まわせたいようです。そりゃそうか。
次は検察官から。
検察官 「1カ月間一緒にいたときですけど、小川被告人は仕事してました?」
証人 「いいえ、美由紀はしてましたけど」
検察官 「その後、2人で上京しますけど、心配じゃなかった?」
証人 「家出捜索願は出したんですけど」
検察官 「河川敷の小屋で逮捕されて、連絡がいった、と。今後また実家から出て行ったりとか、ないですか?」
証人 「それはないです。おとなしい子で信じてるから」
最終的にはいくら言っても本人を信じるしかないからねぇ。
次は注目の被告人質問。まずは、小川被告人への質問から。
弁護人 「元々は会社の寮に住んでたんですよね。仕事やめたのはなぜですか?」
小川被告人 「給料が安いっていうのが。日給7000円くらいで」
弁護人 「そうですか。でも生活はできるでしょ」
小川被告人 「パチンコやったりするんで」
弁護人 「仕事やめたあとは、河川敷に住んで派遣の仕事してたんですよね。でも、お金に困って、車上荒らしをやり始めた、と」
小川被告人 「はい、そうです」
この話は、本件の前、前刑のときの話なんです。前科の車上荒らしも、河川敷でホームレスをしながらの犯行だったようです。
そして、衝撃的な事実が弁護人から明かされます。
弁護人 「かなりの数やっていたようだけど、その一部始をノートにメモっていたのはなぜ?」
小川被告人 「これは長くもたないと思ってたので、わかりやすくするために」
弁護人 「アハハ、逮捕された時のため?」
小川被告人 「そうです。書いてみろ、と案を出しました」
なんと、警察が調べやすいように泥棒日記をつけてたんですね。その日記もあるから、取り調べで「1000件はやってる」と述べたんでしょう。
弁護人 「もし、逮捕されていなければ車上荒らし続けてました?」
小川被告人 「多分、そうですね。早く捕まりたかったんですけど、自首すると、別れなければいけないわけで」
弁護人 「互いにラブラブだったんですか?」
小川被告人 「そうっすね」
ラブラブって。千明被告人を支配下においていたわけじゃないって弁護なんだろうけど。
弁護人 「調書では、車上荒らし1000件、と。総額いくらくらいですか?」
小川被告人 「(金額は)わかりません。(千明被告人とやりだしてからの)3年間で3000件はやってると思います」
弁護人 「弁償したいと考えています?」
小川被告人 「したいと思ってますけど、今はお金がないので、仕事をしてからになります」
弁護人 「社会復帰後、またやるんじゃないの?」
小川被告人 「一応、やらないつもりです。もう、疲れたんで。普通に仕事した方が稼げたので、なんていうか、引退します」
ここは“一応”じゃなく、断言してもらわないとね。とにかく、もうやらないと誓ったわけです。
弁護人 「あとね、美由紀さんへの今の気持ちを教えてください」
小川被告人 「…」
質問が聞こえなかったのかな? と思うほどの沈黙。しかし、弁護人も聞き直しません。1分ほど黙ったままなので、どうしたのかなと思ったら、小川被告人は涙声になって
小川被告人 「申し、わけ、ないと、思ってます。自分が、誘って、こう、なったのが、悔しい、んで。もう、こんなことさせません!」
今後は悪いことを2人でしないと主張です。すると弁護人は目を丸くして
弁護人 「いやいや、(千明被告人の)お母さんは別れさせたいようだけど」
小川被告人 「刑務、所、行く、つもりで、いるんで。その後、謝ることもでき、るんで、手紙出したり、そして、美由紀さんを迎えにいきます!」
これは弁護人の言う“ラブラブ”どころの話じゃないでしょ。交際を反対する親がいる公開の法廷で、出所後にあらためて一緒になるって言ってるんですよ。熱い!
次は検察官から。
検察官 「前刑だけじゃなく、少年時にも車上荒らしで捕まってるでしょ。カギは簡単に開けられるんですか」
小川被告人 「無施錠ばっかり狙っていました」
検察官 「はさみをもって、盗みしてるでしょ」
小川被告人 「○○○○(具体的な車種を挙げたので、さすがに伏字で。こんな車売るなよ!)だけは、鍵はハサミで壊せるので」
検察官 「さっき、3000件って言ってたけど」
小川被告人 「もっと多いと思いますけど、年間1000件で、単純計算で3000件、と」
鍵がかかってない車がそんなにたくさんあることも、あの車の鍵が簡単に壊れることも、すべて驚きです。
そして、2人の関係について
検察官 「千明被告人と知り合って、男女の仲になってから、何年ですか?」
小川被告人 「7年くらい」
検察官 「あなたが盗みをして、千明被告人が見張りをしてたと言ってますけど、この法廷で千明被告人にかっこよく見せたくて、かばって言ってます?」
小川被告人 「それはないです」
検察官 「今後、事件の償いの意味もこめて、きっぱり別れるべきでは?」
小川被告人 「…」
検察官 「お母さんの意見に異存はあるの?」
小川被告人 「…いえ、ありません」
と、強引に別れさせるようにして、質問終了。
最後は、裁判官からの質問です。
裁判官 「同じことを繰り返した原因は?」
小川被告人 「自分のだらしなさ、ぐうたら」
裁判官 「抽象的すぎるよ、具体的に」
小川被告人 「うーーーん、わからないです」
裁判官 「わからないかぁ。パチンコは大きいんじゃない?」
小川被告人 「そうですね」
裁判官 「パチンコのせいで、河川敷に住むようになったんでしょ。2人で車上荒らしやってるときもパチンコしてました?」
小川被告人 「平成17年のころは、月2~3回は行ってましたけど、去年は年に2回くらいで。でも、もう目標があるので、やりません」
裁判官 「別にパチンコ自体は犯罪じゃないんだけどさ。なんでそうなっちゃうのかなって。それで目標って何ですか?」
小川被告人 「100万円貯めようかな、と」
裁判官 「ん。何のため?」
小川被告人 「あの、あの、千明美由紀を迎えに行きたいんで!」
結婚資金ってこと? 2人で部屋を借りるための金ってこと? しかし、裁判官は眉をしかめて
裁判官 「お母さんの言うように、キッパリ別れるのが、美由紀さんのためじゃないのかね」
小川被告人 「んーーー、あの、二度と、こういうことはさせません」
裁判官からの提案すらもはねのける愛のパワー。常識的に考えて別れるべきなんだろうけど、最終的には本人次第でしょ。
次は、その相手である千明被告人への質問。
弁護人 「あなたは見張り番?」
千明被告人 「はい」
弁護人 「車の中を物色したことは?」
千明被告人 「1度もありません」
弁護人 「(接見で)自分の性格は意志が弱いと言ってましたけど、悪いことですからやめようと思わなかった?」
千明被告人 「被害者がどんどん増えていくのが、自分の中で辛くなってきたんです。彼が覚えているかわかりませんけど、止めたんですよ。でも、聞き入れてくれませんでした」
弁護人 「小川さんと長く関係が続いてますけどね、被害者に対してどんな気持ちですか?」
千明被告人 「被害者の気持ちも考えず、自分たちの勝手な思いだけで、こんなことをしてしまって、申し訳ないことをしてしまいました。大変申し訳ありませんでした」
反省の言葉を何度も何度も述べていました。そして、気になる今後の2人について。
弁護人 「小川さんについてですが、社会復帰後はどうするつもりですか?」
千明被告人 「実家に帰って、まじめに仕事して、たくさん親孝行したいです。一からやり直したいと思います」
小川被告人については答えてないような。実家に帰るってことは、別れるってことなのか。次は検察官からの質問。
検察官 「周りに河川敷で住んでる人、ホームレスの人とかいると思うけど、女性は?」
千明被告人 「いませんでした」
検察官 「ちゃんと働いて、アパート借りてよとか言わなかったんですか」
千明被告人 「離れるのがさびしくて」
検察官 「犯行ですけど、ついていったのは?」
千明被告人 「1人で待ってる怖さと、離れるのが嫌だったので」
先行き不安な生活で、相当さびしい思いをしてたんでしょう。そして、過酷な生活状況が明かされました。
検察官 「お金は何に使ってました?」
千明被告人 「ほとんど食費で消えてます」
検察官 「2人でいた2年半の間、収入源は車上荒らしだけ?」
千明被告人 「はい」
検察官 「生活費って月々いくらでした?」
千明被告人 「切り詰めれば、月2万円くらいです」
検察官 「2人で? でも贅沢することもあったでしょ?」
千明被告人 「弁当とかお菓子を買えば、2万円以上になりますけど、普段はパスタとか茹でて食べてたので」
多分、検察官は盗んだ金で、豪華な食事や遊びに使ったことを言わせたかったんだろうけど、2人にとっての贅沢は弁当やお菓子。厳しい暮らしだったんだろうな。
そして、最後に2人の今後の関係について。
検察官 「2人の関係ですけど、あなたの中では結論出てるの?」
千明被告人 「はい、この機会にキッパリ別れたいと思います」
見るも無残に小川被告人の想いが砕け散った瞬間です。もうパチンコはしないと誓った小川被告人の最後の賭けが外れたわけです。
最後は裁判官からの質問。
裁判官 「やめて、とは言わなかったんですか?」
千明被告人 「不安定な生活は嫌でした。でも、彼と一緒にいたい気持ちが強くていえませんでした」
裁判官 「犯罪までして一緒にいるって惨めさはなかったですか?」
千明被告人 「自分の気持ちを優先してしまって、そのときはあまり考えませんでした」
裁判官としては、事件の内容より2人の関係が気になるようで、この後もずーーっと恋愛に関しての質問です。
裁判官 「あなたにとって、小川君はどんな人ですか?」
千明被告人 「ギャンブルと悪いことさえしなければ、優しくていい人なんですけど」
裁判官 「それなら、ギャンブルと悪いことやめさせればいいじゃないですか?」
千明被告人 「(ギャンブルは)隠れて行ってたので、あきらめていました」
裁判官 「別れようとは?」
千明被告人 「好きという気持ちが強くて、許しちゃう自分がいたんだと思います」
裁判官 「好きの中には人格の評価ってないのかなぁ。ギャンブルと盗み、いくら言ってもやめてくれない小川君を、今はどう評価します?」
千明被告人 「今後一切、関わりたくないと思っています」
裁判官 「逮捕されていろいろ考えたんですか?」
千明被告人 「捕まって、冷静になって、このままではダメになると思いました。これを機に別れようと思います」
裁判官 「小川君の考えは違うようだけど」
千明被告人 「信用できないので、キッパリ別れたいです!」
これには小川被告人も涙目。7年交際してた女性に、ウソは許されない法廷で何度も別れを告げられるとは。この後、検察官が小川被告人に対しては懲役2年6月。千明被告人には懲役1年6月を求刑しました。その間、小川被告人はモジモジして落ち着かない状態でした。余程ショックだったんだろうな。
ま、別れるには遅すぎたとも言えるんだけどね。彼女と共に車上荒らしは引退か。
注目の裁判
10月14日(火)被告人・上田賢治:強制わいせつ致傷(判決)
<電通の子会社社員によるわいせつ事件> 08年3月、電通テックの社員上田賢治(当時39)は、同年1月に知り合いの20代女性をカラオケ店に誘い、無理やり体を触るなどして、女性に軽傷を負わせたため逮捕された。
10月14日(火)被告人・横木正行:昏睡強盗(初公判)
<派遣風俗店員に対する昏睡強盗> 08年7月、東京都足立区の無職、横木正行(当時44)は、豊島区巣鴨のホテルに風俗店勤務の女性(当時24)を呼び睡眠薬入りの酒を飲ませ、現金6万2000円を奪った。
10月14日(火)被告人・守屋武昌、秋山収、宮崎元伸、今治友成:収賄、議員証言法違反、贈賄
<防衛装備品調達をめぐる汚職事件> 前防衛事務次官、守屋武昌(63)は、防衛省の装備品調達で山田洋行に便宜を図る見返りにゴルフ旅行接待を受けたり、現金を家族名義の口座に受け取ったりした。また、国会の証人喚問で虚偽の証言をした。
10月14日(火)被告人・桑原和宏:殺人等(判決)
<両親を死傷させた事件> 07年9月、東京都杉並区の無職・桑原和宏(当時38)は、カッターナイフで切りつけ、父親の正さん(当時70)を殺害、母親の房子さん(当時69)に重傷を負わせた。父親と口論になったのが原因だったと供述した。
10月15日(水)被告人・山本英世:強盗傷害(判決)
<郵便局員から小包を奪った事件> 08年7月、無職山本英世(当時23)は、東京都新宿区のビル玄関で、郵便配達員の男性(当時39)に催涙スプレーを吹きつけ、配達小包を奪って逃走した。
10月15日(水)被告人・緒方重威 満井忠男:詐欺
<朝鮮総連中央本部に対する詐欺事件> 07年6月、元公安調査庁長官、緒方重威(しげたけ)(当時73)らは、朝鮮総連に架空の売却話を持ちかけ、中央本部の土地・建物をだまし取った。
10月16日(木)被告人・荻野宏:公務執行妨害ほか(初公判)
<医師が警察官の拳銃を奪った事件> 08年5月、東京都世田谷区の医師荻野宏(当時42)は、杉並区の路上で別居中の妻とトラブルになり、かけつけた警察官の拳銃を奪って上空に向けて発砲。公務執行妨害と銃刀法違反、強盗容疑で逮捕された。
10月17日(金)被告人長沢清:殺人(判決)
<別居中の妻を刺殺した事件> 07年12月、団体職員長沢清(当時55)は、路上に止めた車内で別居中に妻の文子さん(当時52)を刃物で刺して殺害。自身も腹部や手首を切って一時意識不明の重体となった。
10月17日(金)被告人・下藤卓生:脅迫(初公判)
<ネット掲示板で歌手を脅迫した事件> 08年8月、住所不定、無職下藤卓生(当時23)は、札幌市のネットカフェから歌手小宮真央(当時20)を「8月10日に殺します 場所はてめぇの家だ」と掲示板に書き込んだ。み、脅迫した疑い。
10月17日(金)被告人・渋谷博久:不正アクセス禁止法違反、電子計算機損壊等業務妨害(初公判)
<会員データを消去した事件> 08年9月、派遣社員渋谷博久(当時28)は、ITサポート会社「アットスター」のサーバーに不正にアクセスし、通販サイトの氏名、住所などの会員データと商品データを削除した。「待遇や給与でトラブルになった上司を困らせたかった」と供述した。
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