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2008年7月07日

無罪主張のにゃんころパークは有罪希望?

 昨年の1審判決の無罪率が最高裁から発表されましたね。その無罪率は0・14%。逆に言えば、有罪率99・8%。日本の検察って、優秀ですね。ここまで有罪率の高い国はないんだから。
 で、ニュースになったのはこの先。起訴事実を被告人が否認した裁判だけで計算すると、無罪率は2・91%。この数字は過去10年で最高らしい。最高と言っても、微々たる差なんだけどね。

 被告人が「やってません」「違法ではない」って主張しているのに、97%は有罪判決を受けているわけだ。否認してる被告人のほとんどがウソつきなのか、有罪判決を下す裁判官のほとんどが真実を見抜けないのか。
 否認事件の裁判を傍聴すると、ちゃんと審理はしているんだけど、有罪になる証拠に限って裁判官は寛大な気がするんだよな。気のせいかね。少なくとも、「疑わしきは罰せず」は建前になっちゃってるような。

 今回は、7月1日に行われた滝井啓有被告人(32)の裁判傍聴記。罪名は、脅迫。IT関連企業「サイバーエージェント」のブログに、藤田晋社長を名指しして、殺害予告を書き込むなどして逮捕された事件です。藤田氏のブログ「渋谷で働く社長のアメブロ」はコメントが殺到する人気ブログなのだが、ブログへの脅迫的書き込みで逮捕者が出るのは初という。

 報道によると、今年1月、自宅のパソコンから藤田社長のブログに「ゴミ社会をネット上に作った藤田晋へ。お前、殺していいですか? 犯行予告を出していいですか? 犯行予告を出していいですか? 藤田晋は射殺します。マスコミのみなさん、報道をお願いします。本気です」などと計4回にわたり書き込み、脅した疑い。

 滝井は父親の遺産で、同社株100株を1株15万円で購入したが、株価が半分以下になったことを恨んだとみられる。「株価が下落したのに社長が責任を取ろうとしないので懲らしめようと思った」「パーティの写真をブログに載せていているに腹が立った」と供述していると伝えられた。

 そして、この報道から約3週間後、今度は「サイバーエージェント」が運営するブログに、藤田晋社長の女性秘書に対し「殺す」と書き込んだとして、滝井を再逮捕したというニュース。

 調べによると、今年1月7日から8日にかけ、20数回にわたり「あなた(藤田社長)の返事がなければ、秘書を殺します」「あなた(秘書)が自殺してくれると非常に助かります」と書き込んだ疑い。藤田社長を脅迫する書き込みをして無視され「側近で広報の秘書を脅した」と容疑を認めとか。

 とにかく、ブログのコメント欄に殺害予告をするという、ちょっと珍しい事件です。まずは、4月28日の初公判。

 起訴されたのは前記の2つの事件。起訴状に対しての罪状認否です。

 裁判官 「今、読み上げられた2つの起訴状に何か言いたいこと、間違っていることはありますか?」
 被告人 「書き込みをしたのは事実ですが、脅すつもりはありませんでした」
 裁判官 「脅迫の意志はなかった、と。弁護人のご意見は?」
 弁護人 「被告人が書き込みをしたことは争いませんが、脅迫の意志はなかったので、脅迫罪は成立しない、無罪であると考えます」

 と、無罪主張です。新聞では容疑を認めているって書かれてたんだけどね。

 被告人が否認しているので、次回は証人尋問を行うことにして、初公判はこれで終了。
 5月30日の第2回公判。

 傍聴席の前と被告人席の前についたてが置かれ、遮へいしての証人尋問です。出廷したのは藤田晋社長。まずは、検察官からの質問。

 検察官 「被害届を出した経緯を教えてください」
 証人 「今年の1月4日に多数の殺害予告が書かれて(いるのを見て)、被害届を出しました」
 検察官 「直接閲覧しました?」
 証人 「はい」
 検察官 「その書き込みの内容は?」
 証人 「“殺害します。本気です”とか私の母親を殺す、などです」
 検察官 「殺し方も書いてましたか?」
 証人 「“射殺します”とか“女性社員をレイプして殺します”とかです」
 検察官 「あなたや社員以外に有名人のことも?」
 証人 「(アメブロを利用してる)星野真理さんに対してですね。“笑っていいともに出てるときに殺す”と」
 検察官 「それらを見て、どう思いました?」
 証人 「2年半の間に、(被告人から)いろんな多くの書き込みがありましたが、直接的な殺害予告が急に増えてきて、会社に直接来るのではないか、と。(書き込んだ人が)元社員なのか、株主なのかわかりませんから、社員、アメブロを利用している芸能人、家族に被害があったら、という恐怖感がありました」

 被告人の書き込みすべてが明らかにされたわけじゃないんだけど、証人及び社員が恐怖を感じてたのは十分にわかります。

 そして、起訴されている以外にも、男性社員に対しては、「家族全員殺します」、女性社員に対しては「監禁してレイプして、殺します」などと書き込みしていたことが明かされました。

 検察官 「数日前、変な手紙が届いたそうですね」
 証人 「(殺害予告された女性社員に)“5月30日にホテルの予約を取ってるから待っている”という内容の手紙が届きました」

 被告人は身柄を拘束されているからホテルに行くことはできないんだけどね。そもそも、予約取れるんだろうか。そんなことより、拘置所からそんな手紙を出すなんて。よりによって、指定の日付も第2回公判の日だし。意味深。

 検察官 「最後に、裁判官に対して言っておきたいことがあれば、どうぞおっしゃってください」
 証人 「従業員、芸能人の安全が第一です。(被告人が社会に)出たときに逆恨みなどがないようにしていただきたいです」

 拘置所から脅迫の内容ではないけど、手紙を出してくる被告人を恐れているようです。残念ながら、それを裁判官にお願いしても意味はないんだけどね。
 次は、弁護人から。

 弁護人 「被告人と面識は?」
 証人 「ありません」
 弁護人 「被告人は“にゃんころパーク”というハンドルネームでコメント欄に書き込みしていたんですが、にゃんころパークは?」
 証人 「それは有名です」

 そんな名前で書き込んでたんですね。2年半も同じ名前で書き込んでいたので、社内でも有名だったようです。

 弁護人 「にゃんころパークさんに返事したことは?」
 証人 「返事はないですけど、ブログ上で記事を書いたことはあります」
 弁護人 「にゃんころさんの書き込みは読んでました?」
 証人 「にゃんころさんの書き込みは長くて読みにくいんです。だから、(一目見て)にゃんころの書き込みだな、と。そんなに読んでないです」
 弁護人 「にゃんころさんは事業提携を提案もコメントしているんですが」
 証人 「ニャーニャー言ってますんで、どこまで本気なのか」

 と、ずっとにゃんころ、にゃんころ。こういう場合は、「滝井さんの書き込みですが」って言っちゃダメなのかね。IPアドレスで、にゃんころパーク=被告人なのはわかってるんだから。

 弁護人 「にゃんころが株を買った、平成17年末頃、株価は?」
 証人 「変動しているものなので、はっきり言い切れませんが、15万円くらいです」
 弁護人 「去年の10月ごろは?」
 証人 「5万~6万円くらい」
 弁護人 「わかりました。最後に何か言いたいことはありますか?」
 証人 「株価は(被告人が買った価格に)戻ってますので、どのような株主にも期待に応えようと思ってますので」

 と、述べて質問終了。あくまで被告人を株主として扱っている姿に、大人というか社長であることを感じさせましたね。だって、万引きの被害店なら“2度とウチには来てほしくない”って言うのに。

 本題の7月1日。
 前日までは拘束されていたんだけど、この日は保釈されていました。そして、無罪主張の被告人への質問です。

 弁護人 「にゃんころパークとはなんですか?」
 被告人 「ネット上のキャラクターです」
 弁護人 「それはあなたにとって作品なんですか?」
 被告人 「映画、歌、遊園地をネット上で作ったりしていました」
 弁護人 「逮捕されて、どう思いました」
 被告人 「私は物語を作っていました。確かに(社長や秘書などの)実名を使ったのは失礼でしたが、書き込みは物語のワンシーンであって、それを藤田さんが脅迫ととらえたのであれば残念です」

 脅迫するような架空のストーリーを書いたら、被害者が怖がって被害届を出したってことでしょうかね。

 弁護人 「藤田さんへコメントを送った(書き込んだ)のは2006年10月から?」
 被告人 「頻繁に送ってたのは2006年末ごろから2007年2月です」
 弁護人 「その後、送ったのは?」
 被告人 「去年5月の藤田さんの誕生日です。まだ承認制ではなかったので」
 弁護人 「その翌日から、コメント欄は承認制になっているんですが、なぜだと思います?」
 被告人 「株価が6万円台に突入して、株主の反感を買うようなブログを書いていました。それでブログが炎上しそうになったので、承認制にしたと思います。みんな、他の社員のブログに怒りをぶつけていました」
 弁護人 「あなたはどんな思いだったんですか?」
 被告人 「株価が下がって不安になっている株主も多いのに。(社長は)普段はいい人を気取っているけど、仲間を売るような裏表があるのかな、と。株主としては、それは正さなければと思いました」

 どうやら、株価が下がったことが動機ではなく、社長の態度に腹が立って、一連の書き込みをしたようです。どんなブログの内容だったのかは知らないけど。

 次は、秘書ブログの件です。

 弁護人 「そして、秘書のブログに移って“ひしょひしょパーク”という名前で書き込みしてますね。起訴状にある殺害予告の書き込みをした動機は何ですか?」
 被告人 「ブログで、いじめに悩む子どもを取り上げていました。大人が子どもの話を真剣に聞いてくれないから、こういう凶行に及ばざるを得ないんだというメッセージでした」
 弁護人 「うーーん、ちょっとわかりにくいね」
 被告人 「え? はい」
 弁護人 「大人が話を聞いてくれないと、子どもは気持ちのやり場がなくなって、犯罪をしてしまうと伝えたかった?」
 被告人 「はい。比喩的な表現をすると、藤田さんは学校の校長で、にゃんころは反抗する不良の気分でした」
 弁護人 「それは物語なんですか?」
 被告人 「そうです」

 やはり脅迫する意志はなく、架空の物語であるという主張です。

 弁護人 「コメントを読めば、物語だとわかりますか?」
 被告人 「はい。“この映画は”と(冒頭に)書いてますので」
 弁護人 「でもね、それを読んだ人は怖がるんじゃないですか?」
 被告人 「それは…」

 と、検察官からのような質問に長考に入る被告人。しばらく考えて

 被告人 「確かに、怖い。でも、ホラー映画の怖さだと思います」
 弁護人 「身の危険を感じることはないだろう、と」
 被告人 「はい。それよりもにゃんころが怒っていることを真剣に考えてくれるだろうと」
 脅迫する意志はなくても、怖がるだろうとは思っていたようですね。
 最後はちょっと変わった主張です。

 弁護人 「あなたは現在保釈されていますが、今ね、秋葉原での事件以降、インターネットでの犯行予告がたくさん出てきている。今から振り返って、自分の行動についでどう思います?」
 被告人 「当時、私は未来の警告の意味で物語を作っていました。秋葉原の事件は、私が保釈される前日に起きたんですが、それ以降、子供たちが犯行予告する社会になってしまいました。いくら“映画ですが”と書いたといっても、私が無罪を主張するのはおこがましいかな、と」
 弁護人 「無罪になると、子どもたちが真似してよくない、と?」
 被告人 「…………はい」

 かなり悩んで、肯定していました。無罪主張の被告人が本件を無罪にしてはいけないといっているんです。うーーん、変なの。

 次は検察官からの質問。有罪を望む被告人に困惑しながらの質問です。

 検察官 「今、無罪主張がおこがましいって言ってたけど、引き続き、無罪主張なんでしょ?」
 被告人 「その判断は裁判官にお任せします。ただ、これを無罪としてしまうと、子どもたちが“これは映画です”と(ネット上の犯行予告の)マネをするので、よくないと個人的には思います」
 検察官 「ふーーん、脅迫だとは思っているの?」
 被告人 「紙一重だと思って物語を作っていました」
 検察官 「普通の人が見たら、怖いよね」
 被告人 「突然見たらびっくりするでしょうけど、本気かどうかは相手が判断することだと思います」
 検察官 「社長に対して態度を正してほしい、本気になってもらいたくないというメッセージを伝えたいのであれば、そのように書けばよかったんじゃないですか」
 被告人 「僕個人としては出来たと思うんですけど、子どものにゃんころがやるので、悪い方に怒りがころがってしまったのかなと」

 やっぱり、変なんだよなぁ。脅迫とは紙一重で悪い方に転がって、無罪になるのはよくないって言ってるんですよ。

 最後は、被告人に判断を任された裁判官からの質問。と思ったら

 裁判官 「ま、時間もないので、裁判所からは次回質問しますので。論告・弁論に影響ない範囲で質問する予定なので、よろしいですか?」

 と、弁護人・検察官に確認をとって、閉廷でした。

 さすがの裁判官も頭が混乱してしまったのか。
 刑法のことは詳しくないので無罪相当なのか有罪相当なのかはわからないけど、被告人の言い分を聞いてると否認していないような気がするんだよね。
 無罪主張をして有罪の判決が下されるとき、「反省していない」と言われて、より重い罰になるわけで、素直に認めた方がいい気がするんだけどなぁ。

注目の裁判

11月2日(月)被告人・氏家信子:殺人ほか(判決)
<息子を殺害した事件> 09年1月、東京都大田区の無職氏家信子(当時65)は傷害を持つ双子の息子に包丁で切りつけた。弟は病院で死亡が確認された。

11月2日(月)被告人・秋山直紀:所得税法違反(初公判)
<防衛汚職関連の所得税法違反事件> 08年8月、日米平和・文化交流協会会長の秋山直紀(当時58)は、防衛関連企業から受け取ったコンサルタント料を隠し所得税を免れたとして逮捕された。

11月2日(月)被告人・竹林守、成田茂之、他1人:公職選挙法違反(詐欺登録・詐欺投票)(初公判)
<従業員の住民登録を移し投票を支持した事件> 09年9月、機械製造販売会社「水戸工業」の社長・成田茂之(当時57)らは自社の従業員の住民登録の場所を変更させ、衆議院議員選挙で自民党に投票するよう指示したとして逮捕された。

11月2日(月)被告人・熊谷智幸:強制わいせつと偽造私印使用(初公判)
<テレビ局員を装ってわいせつ行為をした事件> 09年8月、インターネット広告会社役員、熊谷智幸(当時35)は、東京都板橋区内の路上で30代の女性にフジテレビの社員を装った偽の名刺を手渡して声をかけ、近くのマンションのエントランスまで連れて行き、わいせつな行為をした疑いで逮捕された。

11月2日(月)被告人・押尾学:麻薬取締法違反(使用)(判決)
<俳優による麻薬事件> 09年8月、東京・六本木のマンションで女性が死亡していると119番通報があり、部屋に出入りしていたとして俳優の押尾学(当時31)が任意で事情聴取を受けた。任意の尿検査で、合成麻薬のMDMAに陽性反応が出たため麻薬取締法違反(使用)の疑いで逮捕された。

11月4、5、6日(水、木、金)被告人・太田周作:殺人未遂(初公判)
(初公判、5日6日も) <駅のホームから女性を突き落とした事件> 09年3月、無職太田周作(当時24)は、JR東京駅で女性(当時60)をホームから突き落とし、電車に接触して負傷させたとして、殺人未遂で逮捕された。取調べに対して「(事件を起こすのは)どこでも、誰でもよかった」などと供述した。

11月5日(木)被告人・寺岡誠吉:殺人
<運送会社役員を殺害した事件> 08年12月、運送会社社長の寺岡誠吉(当時71)は、元暴力団組員に依頼して06年9月に同社役員の栩野雅晴さん(当時66)を殺害させたとして逮捕された。

11月5日(木)被告人・中田静子 ほか1名:昏睡強盗、窃盗
<スナック客に対する昏睡強盗> 09年3月、バー経営の中田静子(当時62)はスナック経営の細江敏光(当時39)と共謀、スナックで男性客に強い酒を飲ませて昏睡状態にさせ、キャッシュカードを奪って現金自動預払機から金を引き出したとして逮捕された。

11月6日(金)被告人・波和二ほか:組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)
<L&G詐欺事件> 09年2月、健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー」は、組織的に会員から出資金をだまし取ったとして会長の波和二(かずつぎ)(当時75)や幹部を逮捕した。被害者約3万7000人、被害総額約1260億円とみられる。

11月6日(金)被告人・片石肇:強盗傷害(控訴審判決)
<プロレスグッズ専門店での強盗事件> 09年2月、千葉県柏市の無職、片石肇(当時28)は他の2人と共謀して東京都千代田区のプロレスグッズ専門店に押し入った。男性店員に暴行を加え、現金15万9000円と、マスク5点などの商品を奪った。

11月6日(金)被告人・多田知信:窃盗、住居侵入(初公判)
<警察寮での窃盗事件> 09年8月、警視庁大森警察署地域課巡査長の多田知信(当時30)は、08年11月に警察寮の同僚の部屋に侵入し、腕時計を盗んだとして逮捕された。


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阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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