2008年6月23日
窃盗犯の芸術的手口、出所後は不動産の営業職だって
先週の非常に気になるニュースをひとつ。司法の課題を話し合う長官所長会同が最高裁で開かれ、来年5月施行の裁判員制度への取り組みなどが議論された。裁判員を経験した市民に記者会見で感想を述べてもらうことの是非も話し合われ、今後検討していくことになった。
会同では裁判所が市民の不安や疑問を解消する必要があるとの意見で一致。了解を得られた裁判員に記者会見で感想を話してもらうことの是非も協議。
いつの間に、裁判員の記者会見なんてイベント企画されてたんだ。裁判員法を読み直したけど、まったく書いてないんだけど。ただでさえ、いろいろと職務や義務を背負わされるのに、記者会見までやられるとはね。
記事によると、希望者だけで強制ではなさそうだけど、裁判員になりたくないって思う人は増えるだろうなぁ。ま、同時期に死刑執行があったんで、こっちのニュースは話題になってないんだけどね。
さて、今回は、6月19日に東京簡易裁判所で行われた大塚謙一被告人(35)の裁判の話。罪名は住居侵入、窃盗。
ドアの郵便受けから手を突っ込んでカギをはずし、空き巣を行った事件ですね。大塚は腕が細長く、カギの部分まで手が届いたといい、逮捕時には同様の手口で東京都荒川区や足立区、杉並区などで100件以上の空き巣を繰り返していたとみられると報じられました。
大塚は工具を使って郵便受けの金具を外し、手を突っ込んで犯行に及んでいた。同じ手口で空き巣をしたとして、窃盗罪で服役。昨年に出所して、11月ころから再び空き巣を始めていたが、特徴的な手口から捜査線上に浮上していた。
実際に足がついたのは、07年12月10日、荒川区のアパートに住む女性会社員方に忍び込み、現金約6000円と指輪など4点(9万3100円相当)を盗んだ事件で、このうち指輪を実名で質屋で入れていたことなどから、容疑が固まり、逮捕された。
いろんな空き巣の手口があるのだろうけど、郵便受けを外してから手を入れて、カギを開けるなんて前代未聞でしょ。考え付かないよなぁ。ドアのカギの防犯技術は向上しても、郵便受けの防犯なんかされていないだろうし。
どれだけ腕の細い男なのかをこの目で確かめるため、5月1日に行われた初公判へ。
刑務官2人に連れられて入廷してきた被告人の印象は「細いっ…ことは細いけど、そんなに細くない気がするだけかもしれません。腕だけでいえば、俺の方が細いような。
検察官の冒頭陳述によると、前科2犯の出所後、アパートで知人と生活していたらしい。家賃などは折半だったので、同居人に生活費を渡さなければならなかったが、被告人は仕事をやめて収入がなかったので、空き巣を再開したとのこと。
被告人は、昨年12月10日電気メーターの動きで部屋の中に人がいないことを確認すると、ドライバーで郵便受けをはずし、そこから手を入れてドアのカギをはずして女性宅に侵入。現金6000円と指輪3つ、ネックレス、貯金箱を盗んだ。
新聞記事にも100件以上の空き巣をしていると書いてあるとおり、他に追起訴があるというわけで初公判はこれで閉廷。
6月3日に行われた第2回公判。追起訴されたのは、今年の1月28日に練馬区のアパートに住む女性宅に侵入し、現金2万円と、5万円相当の指輪を盗んだ、という事件。侵入の手口は当然ながら郵便受けをはずして、というやり方。
他にもまだ追起訴があるということで、今回もこれだけで閉廷。全部起訴してから裁判をしてくれると傍聴としてはありがたいんだけどね。
そして、6月19日の第3回公判です。追起訴内容は、今年1月7日に同様の手口でアパートに侵入し、現金35万円入りの封筒を盗んだという事件。
という訳で、実際起訴されたのは3件だけ。新聞記事がホントなら被害者はもっとたくさんいるはずなんだけどね。起訴されてない被害者は泣き寝入りするしかないのかなと思ってたら、その辺のことは裁判であきらかにありました。
まずは弁護人からの質問。
弁護人 「裁判所に謝罪文を提出しましたが、どんな気持ちで書きました?」
被告人 「今まで同じことを繰り返して、前回刑務所に行ったときは、被害者のことや自分がしたことを毎日考えていたんですが、出所したら忘れてしまって。でも、今回で最後にしようと思って(書きました)」
弁護人 「そうですか。起訴は3件ですが、被害者は他にもいますよね。その起訴以外の被害者に対してはどういう気持ちですか?
被告人 「(前科2犯で)裁判では毎度同じことを言ってるのかも知れないですけど、不快感、恐怖感を与えてしまい大変申し訳ないと思います。弁償したいのですが、今はお金がありませんので、働いて少しずつ返していきたいと思います」
何件空き巣をやったのかははっきりしてないんだけど、全員に対して被害弁償したいと考えているようです。
弁護人 「刑務所を出所したのはいつでした?」
被告人 「平成19年4月19日です」
弁護人 「その後、仕事は?」
被告人 「翌日から派遣で建設業の仕事を」
弁護人 「仕事して収入もあったのい、なぜまた盗みをやってしまったんですか?」
被告人 「仕事上の人間関係でのトラブルや怠け癖でそこから逃げてしまって、同じことをしてしまいました。今後はつらいことや苦しいこともあるでしょうけど、逃げないようにします」
盗みを繰り返す人の多くは刑務所を出てすぐに盗みをやる場合が多いんだけど、被告人はちゃんと出所した翌日に働いてたんだけどね。就労意欲はある人なんでしょう。ただ、長続きしない、と。
弁護人 「将来、仕事はどうしますか?」
被告人 「目標としては、不動産の営業職をしたいと思っています」
弁護人 「どうやって、その仕事に就くんですか?」
被告人 「私は車の免許がないので、普通免許をとるために、お金を貯めなきゃならないんです。で、自分の土台を固めてから目標に近づいたらいいなと思っています。その土台から逃げていては同じことの繰り返しになってしまうので」
弁護人 「土台って、資格をとること?」
被告人 「車の免許、宅建の試験など」
弁護人 「それならいやな仕事でもやれる、と」
被告人 「はい!」
と、力強く答えたところで、弁護人からの質問は終了。被告人は何ひとつ間違ったことは言ってないし、目標を持ってるのはすばらしいんだけど、被害弁償はいつやるつもりなんだろ? 服役して、車の免許を取得するため貯金して、不動産の仕事につく、と。貯金しながら、弁償していくなら問題ないんだけど。起訴されてるだけでも被害金額52万円。他の被害者の分も含めると。相当な額になりそうなんだけど。ちょっと現実的じゃない目標だよなぁ。
次は検察官からの質問。
検察官 「裁判所に出した謝罪文の中に“何十年かかっても弁済します”と書いてあるけど、前回、前々回の被害者に対しては?」
被告人 「(法廷で)言いましたけど、実行してないです」
検察官 「なんで? 出所したら忘れたの?
被告人 「そうです」
立派なこと言っといて、忘れるとは。となると、今回の弁償するって話も疑わしいもんだ。…いい質問だよ。弁護人が一生懸命出した不動産の営業職だの宅建主任などの夢のような話が、いかに「夢」でしかないか、よく分かるってもんだ。
検察官 「これだけ繰り返してると、手口もなれてくるでしょう」
被告人 「はい」
検察官 「郵便受け外すのも(コツをつかんで)段々速くなるでしょ。警察官と現場に行って再現した時、外す時間どれくらいでした?」
この事件をニュースで知った時、このことも気になったんです。そうカンタンに取り外せないだろうから、外してる最中に捕まりそうなもんでしょ。なのに、100件以上成功させてるわけですよ。いったい、郵便受けを外すにはどれだけの時間が必要なのか。その答えは、
被告人 「1分20秒でした」
速い! 外し方は明らかにされなかったけど、ドライバー使ってたから、ねじを外したりして1分20秒ですよ。これだけの速さだから捕まらなかったんでしょう。何度もやってると、どんなことでも上手になるんですね。
検察官 「2分切ってるじゃない。速くなってきてるでしょ。実際、犯行をしてた時はどれくらいかかってたの?」
被告人 「あの~、もっと速かった」
検察官 「え、そうなの? 再現のときは警察官がいたから、緊張しちゃった?」
被告人 「はい」
人が見ているとうまくいかないようです。悪いことだから、警察に見られると、緊張するってのは気持ち的にはわかるけど。実際は1分もかからずにカギをあけてたんでしょう。
そして、最後に、
検察官 「(盗みで)いくら稼いだんですか? 100万以上?」
被告人 「そうだと思います」
検察官 「本当に返すんです?」
被告人 「今回はホントにちゃんと返していくつもりなんで」
と、あらためて弁償すること誓って、質問終了。今回だけじゃなく、前回、前々回のもお金返すべきなんだけどね。
最後は裁判官からの質問。
裁判官 「過去2回とも侵入窃盗、と。被害者の多くが、女性の一人暮らしで、どんな気持ちかわかります? 今回は被害後に引越ししてる人もいますよね。金銭面だけじゃなく、精神的な苦痛も与えているのわかります?」
被告人 「はい」
裁判官 「30代前半は、刑務所。そして、30代後半も刑務所で拘束されることになるけど、40代はよく考えて…ね」
と、長い服役になることを匂わせて、質問終了です。
この後、検察官が懲役3年を求刑して閉廷。
事件をニュースで伝えるのって、再犯を防ぐって意味合いもあるらしいんだけど、この犯罪は防ぎようがないよなぁ。ドアに郵便受けがついてないアパート、マンションに住むくらいしか防御策が見当たらないもの。被告人には反省して二度とやらないようにしてもらわないと。
それにしても、郵便受けを1分ほどで取りはずせる技術を持ってるのに、不動産の仕事に憧れてるのがわからないんだよね。その技術を活かせる仕事があるような気がするんだけど。…窃盗以外で。
注目の裁判
10月14日(火)被告人・上田賢治:強制わいせつ致傷(判決)
<電通の子会社社員によるわいせつ事件> 08年3月、電通テックの社員上田賢治(当時39)は、同年1月に知り合いの20代女性をカラオケ店に誘い、無理やり体を触るなどして、女性に軽傷を負わせたため逮捕された。
10月14日(火)被告人・横木正行:昏睡強盗(初公判)
<派遣風俗店員に対する昏睡強盗> 08年7月、東京都足立区の無職、横木正行(当時44)は、豊島区巣鴨のホテルに風俗店勤務の女性(当時24)を呼び睡眠薬入りの酒を飲ませ、現金6万2000円を奪った。
10月14日(火)被告人・守屋武昌、秋山収、宮崎元伸、今治友成:収賄、議員証言法違反、贈賄
<防衛装備品調達をめぐる汚職事件> 前防衛事務次官、守屋武昌(63)は、防衛省の装備品調達で山田洋行に便宜を図る見返りにゴルフ旅行接待を受けたり、現金を家族名義の口座に受け取ったりした。また、国会の証人喚問で虚偽の証言をした。
10月14日(火)被告人・桑原和宏:殺人等(判決)
<両親を死傷させた事件> 07年9月、東京都杉並区の無職・桑原和宏(当時38)は、カッターナイフで切りつけ、父親の正さん(当時70)を殺害、母親の房子さん(当時69)に重傷を負わせた。父親と口論になったのが原因だったと供述した。
10月15日(水)被告人・山本英世:強盗傷害(判決)
<郵便局員から小包を奪った事件> 08年7月、無職山本英世(当時23)は、東京都新宿区のビル玄関で、郵便配達員の男性(当時39)に催涙スプレーを吹きつけ、配達小包を奪って逃走した。
10月15日(水)被告人・緒方重威 満井忠男:詐欺
<朝鮮総連中央本部に対する詐欺事件> 07年6月、元公安調査庁長官、緒方重威(しげたけ)(当時73)らは、朝鮮総連に架空の売却話を持ちかけ、中央本部の土地・建物をだまし取った。
10月16日(木)被告人・荻野宏:公務執行妨害ほか(初公判)
<医師が警察官の拳銃を奪った事件> 08年5月、東京都世田谷区の医師荻野宏(当時42)は、杉並区の路上で別居中の妻とトラブルになり、かけつけた警察官の拳銃を奪って上空に向けて発砲。公務執行妨害と銃刀法違反、強盗容疑で逮捕された。
10月17日(金)被告人長沢清:殺人(判決)
<別居中の妻を刺殺した事件> 07年12月、団体職員長沢清(当時55)は、路上に止めた車内で別居中に妻の文子さん(当時52)を刃物で刺して殺害。自身も腹部や手首を切って一時意識不明の重体となった。
10月17日(金)被告人・下藤卓生:脅迫(初公判)
<ネット掲示板で歌手を脅迫した事件> 08年8月、住所不定、無職下藤卓生(当時23)は、札幌市のネットカフェから歌手小宮真央(当時20)を「8月10日に殺します 場所はてめぇの家だ」と掲示板に書き込んだ。み、脅迫した疑い。
10月17日(金)被告人・渋谷博久:不正アクセス禁止法違反、電子計算機損壊等業務妨害(初公判)
<会員データを消去した事件> 08年9月、派遣社員渋谷博久(当時28)は、ITサポート会社「アットスター」のサーバーに不正にアクセスし、通販サイトの氏名、住所などの会員データと商品データを削除した。「待遇や給与でトラブルになった上司を困らせたかった」と供述した。
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