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2008年6月10日

だから飲むな飲ませるなってことだよね

 先週は司法業界激震の決定がありました。それは、「サイバンインコ」が数ある地検広報キャラクターの代表になったこと。福岡高検が作った裁判員制度を宣伝するためのキャラクターだったのに、近年まれにみる大出世です。

 福岡高検のホームページに、サイバンインコの説明があるんだけど、何のプロフィールも書いてないんですよ。キャラクターに対する愛がないよなぁ。佐賀地検の「さがっこ戦隊シチケンジャー」とか、」仙台高検の「赤オニ コンパスちゃん」とか見習ってほしいもんだ。
 で、サイバンインコのことが気になる人のため、先日法務省で行われた赤れんがまつりで発表されたプロフィールを。

・九州にて大変珍しいインコを発見。
・福岡高検が調査をした結果、裁判員制度にとても興味を示すインコだと判明し、「サイバンインコ」と命名。
・お祭りごとが大好きで、自前のハッピを着て、各地のイベントに出没しては、会場を沸かせてくれる。
・裁判員制度広報の希望のトリである。

 現在わかっているのは、この4つだけ。よく考えてみたら、祭り好きでイベントに出没するから、代表に選ばれたのかもしれないですね。“裁判員 参上”をセンスがないといった人がネーミングで選ぶはずがないでしょ。選考理由はイベントに出没。だって、去年静岡で行われた裁判員のイベントに福岡から参加してるんですよ。それだけじゃなく、宮崎県で行われている巨人軍のキャンプにも顔出してるからね。プロ野球のキャンプは裁判員制度と何の関係もないと思うんだけど、イベントに出没するサイバンインコだからこそ、許されているのでしょう。今後はあなたの街にやってるくるかも知れません。
 果たして、裁判員制度じゃなくて、サイバンインコはどこに向かっているのやら。

 さて、今回は6月4日に行われた飯田友絵被告人の裁判傍聴記。罪名は、道路交通法違反。
 東京都江戸川区で今年1月、飲酒運転の乗用車が街路樹に衝突して、7人が死傷した事故で、酒酔い運転状態と知りながら、死亡した運転手に車を貸し、助手席に同乗していたのが、当時35歳の飯田友絵で、道交法違反(車両提供、同乗)で在宅起訴されました。昨年9月施行の改正道交法で新設された車両提供罪、同乗罪での公判請求は全国初めてということで話題になりましたね。

 飲酒していた会社員の運転する車は区道の街路樹に衝突し、会社員他飯田被告の子ども2人の計3人が死亡、4人が重軽傷を負ったという悲惨な事故となりました。

 今、飲酒運転に関する処罰は厳しい。先週はさいたま地裁で運転手に焼酎などを出した飲食店経営に酒類提供罪で有罪判決が出たし。このさいたま地裁での事件も、本件も、去年の9月以前だったら罪に問われてないんだよね。今までが甘かっただけかもしれないですね。

 で、裁判の話。起訴状によると、1月22日23時30分に被告人は、酒に酔っていた会社員に「(ファミリーレストランへ)車で行こうよ」と提案し、自分の車を提供。さらに、1月23日午前1時頃、その車に同乗した。

 これに対し、被告人の罪状認否です。

 裁判官 「起訴状に何か事実と違う点はありますか?」
 被告人 「車で行こうよ、とは言ってません」
 裁判官 「他の点、酒気帯びを知って車両提供したのは間違いない?」
 被告人 「はい」
 積極的に依頼はしていないと、一部否認です。
 検察官の冒頭陳述によると、被告人と会社員はアパートの隣室に住んでいて、家族ぐるみの付き合いをしていたらしい。

 そして、1月22日。被告人はお酒を持って、会社員の部屋へ行き、一緒に飲酒。その際、被告人の娘が「サイゼに行きたい」と言い出した。被告人の次男が「チャリで行こう」と提案したが、被告人は「チャリは寒いから嫌だ。車で行こうよ」と。

 そして、被告人の子ども3人、会社員の子ども2人、あとは被告人と会社員の7人で車でサイゼリアに行くことに。
 サイゼリアでは、被告人家族と会社員家族は別テーブルに着席し、会社員はビール1杯、焼酎の果汁割り3杯を飲酒。
 そして、帰り道に会社員が運転する車が、街路樹にぶつかった。これが事件の詳細です。

 亡くなった人を悪く言いたくはないけど、酒気帯び運転した出先でさらに酒を飲むなんてねぇ。子ども5人乗せてるのに。法廷には被告人の母親が情状証人として出廷。情状だけでなく、「孫を返してほしい」と被害感情も述べていました。
 そして、被告人質問。まずは、弁護人から。

 弁護人 「1月22日の夜、隣の会社員(法廷では実名)のとこに行ったのは?」
 被告人 「娘が“サイゼに”と言ったので連絡していきました」
 弁護人 「そのとき、お酒を持っていったのは?」
 被告人 「いつも持って行っていたので」
 弁護人 「ということは、サイゼリアには何で行こうと思っていたんですか?」
 被告人 「タクシーで行こうと思っていました」
 弁護人 「でも、車で行くことになりましたね」
 被告人 「息子が“チャリで行こう”と言ったんですが、私は“寒いからチャリはいやだ。タクシーで行こう”って言ったんです。でも、会社員が“車で行こう。俺はプロドライバーだから。お前(被告人のこと)車出せ”と言い出して」

 どうやら「車で行こう」と言ったのは、被告人じゃなくて会社員だったようです。検察官は「タクシーで行こう」と拡大解釈して「車で行こう」と言ったと起訴したんでしょうか?

 弁護人 「“車で行こう”と言われて、どうなりました?」
 被告人 「飲んでるからタクシーで行こうよと言いました」
 弁護人 「でも、あなたは自宅に戻って(車の)鍵を持ってきましたね」
 被告人 「会社員は1度決めると曲げないので」
 弁護人 「結局は貸しているわけだけど、この車は会社員によく貸していたんですね」
 被告人 「そうです」
 弁護人 「車を貸すと、ガソリンを満タンにして返してくれてた、と。あと、車購入代金として会社員が20万円出してくれてたそうですね。車の所有者はあなただけど、共有して使ってたんですね」
 被告人 「そうです」

 否認はしていないけど、貸したというより、2人で使っていた車だったと主張です。そして、

 弁護人 「亡くなった人たちに、どんなことを思ってますか?」
 被告人 「申し訳ないっていうか、謝っても謝りきれない思いです」

 と、謝罪して質問終了。次は検察官からの質問。

 検察官 「会社員とはサイゼリアによく行ってたんですか?」
 被告人 「一緒に行ったのは初めてでした」
 検察官 「なぜ、会社員は運転したんだと思います?」
 被告人 「近いから、と言ってました」
 検察官 「車で行くことになって、止めようとしなかったんですか?」
 被告人 「反論するとすぐ怒るので」
 検察官 「怖かった?」
 被告人 「はい」

 家族ぐるみの付き合いではあったんだろうけど、上下関係みたいのがあったんでしょうかね。
 そして、最後に、

 検察官 「犯罪になるかはさておいて、(酔っている人に車を貸して、同乗することが)悪いことだと思っていなかったんですか?」
 被告人 「はい」

 と、当時は悪いことをしている認識がなかったと、述べたところで、質問終了。
 最後は裁判官から。

 裁判官 「なぜ、会社員宅を訪れたんですか?」
 被告人 「一緒に(外食)行くと、(お金を)出してくれるので」
 裁判官 「おごってくれるから、たかりにいこうと」
 被告人 「そうなります」
 裁判官 「お子さんが自転車で行こうといってたんでしょ? それでなぜ車なの?」
 被告人 「寒かったからタクシーでと言ったんですけど」
 裁判官 「結果的にはタクシーじゃなく車に乗ってるんですよね」
 被告人 「親として軽率すぎる行動だったなと」

すると、裁判官は前のめりになって、

 裁判官 「一昨年、福岡で飲酒運転でお子さんが3人亡くなった事故がありましたよね。あれ以降、飲酒運転があるたんびに報道されて社会的に問題になっているのは知っていますよね」
 被告人 「はい」
 裁判官 「それなのに、(検察官の質問で)飲酒している人に車を貸すのが悪いと思っていなかった、と。どういう意味なのか聞きたいんですけど」
 被告人 「その時は、いけないとか、考えられなかった」
 裁判官 「寒いから自転車はいや。でも、会社員はお酒を飲んでる。そうなると、タクシーで行くのが合理的だと思うんですよ。なんで、車で行ったのかわからないんですよね」
 被告人 「会社員の言葉を信じちゃって、大丈夫かなと思って」

 軽い気持ちだったんだろうけど、家族ぐるみで付き合いをしていた会社員と、自分の子ども2人が亡くなるという結果は、あまりにも甚大だ。
 この後、論告・弁論の次回の期日を決めて閉廷でした。
 飲酒運転は、運転手だけでなく、助長した人や関与した人にも責任があるってのが、今の常識なわけだ。そう考えると、飲酒店がアルコールを提供するときに、車で来てるか否かを確認しないのは変な話だよなぁ。

注目の裁判

8月18日(月)被告人・吉田義一:強盗(初公判)
<コンビニ強盗事件> 08年7月、東京都足立区の無職吉田義一(当時45)は前月に足立区内のコンビニに強盗に入り9万円を奪ったとして逮捕された。吉田は事件後、同じコンビニで缶ビールを万引きしたため、犯行が発覚した。

8月18日(月)被告人・山下健児:逮捕監禁、強制わいせつ(初公判)
<女子高生を連れ回した事件> 08年1月、東京都大田区の無職山下健児(当時28)は、通学途中の女子高生を連れ回したとして逮捕監禁の現行犯で逮捕された。その後、他の強制わいせつ容疑で再逮捕された。

8月19日(火)被告人・広瀬正光:廃棄物処理法違反(初公判)
<汚泥などの不正投棄事件> 08年4月、産業廃棄物処理会社「江戸川集積センター」社長広瀬正光(当時43)ら6人は07年6月頃にマンションの建設現場で発生した汚泥などを不正に投棄したため、廃棄物処理法違反(不法投棄、受託違反など)で逮捕された。

8月19日(火)被告人・佐藤智孝:殺人、死体遺棄(控訴審初公判)
<交際の主婦を殺害した事件> 07年9月、ブロック工佐藤智孝(当時37)は、交際相手だった千葉市の主婦井上あさかさん(当時38)の首を絞めて殺害し、遺体を河川敷に埋めた。1審で懲役18年の判決を受けた。

8月19日(火)被告人・村上世彰:証券取引法違反(控訴審初公判)
<村上ファンド事件> 06年6月、村上ファンド代表の村上世彰元代表は、ライブドアによるニッポン放送株買占めに関しインサイダー取引の容疑で東京地検特捜部に逮捕された。1審で懲役2年の判決を受けた。

8月20日(水)被告人・アビナッシュ・シャルマ:不正アクセス禁止法違反など(初公判)
<社内ネットワークに侵入した事件> 08年7月、インド国籍の無職アビナッシュ・シャルマ(当時32)は、新生銀行の社内ネットワークに侵入してファイルを削除して、不正アクセス禁止法違反などの疑いで逮捕された。シャルマは07年10月まで、システムメンテナンス会社から新生銀行に派遣され社内ネットを管理していた。調べに「正社員採用を求めたが、断られ腹が立った」と供述しているという。

8月20日(水)被告人・鈴木一範:殺人、死体遺棄(控訴審初公判)
<クラブホステスが遺体で発見された事件> 06年12月、銀座のクラブホステスで都立定時制高校2年の荻野亜利沙さん(当時20)が行方不明になり、交際相手で同居していた無職、鈴木一範(当時39)が07年2月に殺害を供述した。その際、無職堤健一(当時29)とともに遺体を埋めたことも供述した。1審で懲役20年の判決を受けた。

8月20日(水)被告人・鈴木明:児童福祉法違反
<教え子とわいせつ行為をした事件> 08年5月、東京都台東区の中学校教諭鈴木明(当時51)は、06年ころ中学3年だった教え子の女子生徒とわいせつな行為をしたとして逮捕された。

8月21日(木)被告人・鈴木明:児童福祉法違反(初公判)
<教え子とわいせつ行為をした事件> 08年5月、東京都台東区の中学校教諭鈴木明(当時51)は、06年ころ中学3年だった教え子の女子生徒とわいせつな行為をしたとして逮捕された。

8月21日(木)被告人・小川洋平:覚せい剤取締法違反(所持)など(初公判)
<トンボ鉛筆会長による覚せい剤事件> 08年6月、トンボ鉛筆の元会長で無職の小川洋平(当時60)は風俗店の女性とラブホテルに入り、所持していた覚せい剤使用を勧めたが拒否され、店員に突き出され逮捕された。小川は07年にも覚せい剤所持などで懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決を受けたばかりだった。

8月21日(木)被告人・山口和清:人身売買罪(控訴審初公判)
<タイ人女性の人身売買事件> 07年6月、無職山口和清(当時56)は、タイ人女性を長野市のスナック経営の女に230万円で売り渡したとして、逮捕された。1審で懲役2年の判決を受けた。


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阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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