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2008年5月12日

インチキ薬販売の社長が検察官から苦い薬飲まされ…

 司法のゴールデンウイークこと、憲法週間が先週で終わりました。全国でいろんなイベントが行われたみたいなんだけど、憲法週間が終わった後でも、催し物はたくさん予定されているようですね。興味がある人は近くの裁判所に問い合わせてみてはいかがでしょう。

 そんな中、ものすごい気になるイベントがあるんですよ。それは、岡山地裁で行われる“親子で探検!クイズで裁判員制度!”。この手のイベントが土曜日に行われるっていうのも驚きなんだけど、気になるのはイベント内容。予定では、裁判員法廷の見学、模擬裁判、クイズ、そして、法廷での記念撮影となっているんです。普段は撮影NGである、法廷での記念撮影は非常に気になりますね。岡山の人がうらやましい。このイベント、お近くの人は是非。

 さて、今回は5月9日に行われた亀山祥之被告人(71)の裁判の話。罪名は薬事法違反。
 “糖尿病が治る”などと効能をうたった未承認医薬品“健祥桑梅品(けんしょうそうばいもん)”を無許可で販売した事件ですね。健康食品販売会社“東洋食品興業”社長・亀山は逮捕後は「医薬品としては販売していない」と容疑を否認したと報じられた。

 “健祥桑梅品”は、シソや梅、桑の実を乾燥させてつくった粉末や錠剤。毒性はないが、糖尿病の治癒効果はないという。亀山は1箱1万2000~1万5000円で約3300人に販売し、約3億2000万円を売り上げていたというから、驚きです。

 新聞によっては、“ガンが治るとうたい”と報じられたこともあって、病気で悩む人を食い物にする悪質な犯行だなと思いましたよ。治癒効果もないって話だし。
 でも、傍聴してみたら、起訴されているのは被告人と被告人の会社。記事によると、否認しているってことだったけど、裁判では罪を認めていました。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は1971年(昭46)に自動車部品を取り扱う会社の代表取締役になる。80年(昭55)に糖尿病を患い、数々の治療を試みているが、すべてうまくいかず思い悩んでいたとのこと。医者に桑の実が血糖値を下げる効果があると言われ、桑の実と梅を(お湯に溶かして?)飲んだところ、少しずつ血糖値が下がったという。それで、研究を重ね“健祥桑梅品”を完成。前記会社の子会社“東洋食品興業”で96年(平8)から販売を開始。
 しかし、医薬品の効能をうたっていたため、01年(平13)に警告を受けたが、販売を続けたので、今回の逮捕に至ったというのが事件の流れです。

 今回いきなりの逮捕ではなく、過去に警告を受けていたようです。というか、糖尿病に全く効果がないのかと思ったら、被告人が使用して血糖値が下がったという実績があったことが驚き。だって、桑と梅とシソの粉末だけで、薬品は入ってないんですよ。これがホントなら、現代の医学って一体。

 そして、被告人質問です。まずは弁護人から。

 弁護人 「健祥桑梅品は、桑の実、梅、シソを粉末にした健康食品ですね」
 被告人 「はい」
 弁護人 「防腐剤とかは?」
 被告人 「一切入っておりません」

 余計なものは全く入っていない健康食品のようです。体にはよさそうな粉末ですね。
 そして、健祥桑梅品の作られたきっかけが明かされました。

 弁護人 「(糖尿病で)入院した時、治らなかったんですか?」
 被告人 「多少、良くはなったんですが、(病院で出される)1000キロカロリーの食事では体の方の調子が悪くなってしまうんですね…」
 弁護人 「それで桑の実を飲むようになったと。効果はありました?」
 被告人 「いえ、効果は得られませんでした」

 ん? 血糖値を下げる効果があるはずでは?

 弁護人 「それでも、2~3年飲み続けたと」
 被告人 「はい。他に頼るものがなかったんで。それである日、妻が“疲れているから梅も飲んだら”というので、一緒に飲んだんです」
 弁護人 「梅を入れたらどうでした?」
 被告人 「桑の繊維を溶かして、飲みやすくなりました。それで、梅を入れて、飲み続けたんですが、月を追うごとに血糖値が下がっていきました」

 きっかけは奥さんの何気ない一言だったようです。っていうか、これは桑の実に効果があるというより、梅に効果があるような気もするんだけどね。治療の効果が徐々に出てきたのかもしれないし、これだけでは因果関係は分からないと思うんだけど。

 弁護人 「それで商品化しようと思ったのは?」
 被告人 「自分の苦しみがたちまちにして克服できました。それで、多くの人が(糖尿病で)苦しんでおられまして、中には薬では治らない人もおります。母の教えで、人のためになることをしろといわれていたこともあり、人の役に立てればという一心で商品化を思いつきました」
 弁護人 「悩んでいる人のために、と。でも、1度指導を受けたのに続けたのは?」
 被告人 「(効能内容など)文章を直したんですけど、原稿の出し間違いがありまして」
 弁護人 「ん? 文章を直せという指導だと思っていた、と」
 被告人 「はい。勘違いしておりました」

 これは指導した人がはっきり言わなかったか、被告人がよく聞いていなかったのか、いずれにせよ、不備はあるものの自分なりに直したんだという主張をしていました。

 弁護人 「とにかく、人のためにやった、と」
 被告人 「その一念でございます」
 弁護人 「でも、結局は奥さんにも多くの人にも迷惑かけましたよね。もう二度と同じことはしませんね」
 被告人 「はい!」

 と、再犯しないことを誓って質問終了です。誓うのはいいんだけど、どっちの意味なんでしょうか? 今後は医薬品の届け出を出して、販売するってことなのか、販売自体をやめるってことなのか。それは検察官が質問するんだけど。

 検察官 「医薬品の許可を受けようとは?」
 被告人 「考えたことはありますが、膨大なお金がかかりますし、時間もかかりますので」
 検察官 「やらなかったと。販売していた当時、違反だと分かっていましたか?」
 被告人 「認識しておりました」
 検察官 「反省文に“厚生労働省もお目こぼししてくれるだろうと考え”と書いてありますけど」
 被告人 「人のためにあるもので逮捕したりしないだろうと、思っていました。甘い認識とおごりだと思います」

 弁護人の質問の時と同様、人のためにやっていたと。そして、厳しい質問です。

 検察官 「自分で飲んで効果があったようですけど、なぜ効果があるのか説明できないですよね」
 被告人 「はい。現代の医学でも説明できません」

 ほんとに健祥桑梅品と血糖値の低下に因果関係はあるのかってことを言ってるんでしょう。そして、

 検察官 「今後、販売はどうするんですか」
 被告人 「一切、いたしません!」

 と、販売をやめることを宣言です。弁護人からの「二度と同じことはしませんね」と質問の答えは「売りません」という意味だったようですね。

 しかし、検察官は被告人の顔色をうかがうように、驚きの提案をしたんです。

 検察官 「健康食品で売ればいいんじゃないですか?」

 そんなにいい品なら、ルールに従って販売したら? ってことでしょう。暗に、検察官が健祥桑梅品の効果を認めてくれています。これに対し、

 被告人 「いえ。自分の思い込みが多くの人に迷惑をかけてしまいましたから」

 と、決意の固い被告人。せっかく検察官が勧めてくれているのにねぇ。
 というか、考えすぎかもしれないけど、検察官の質問が巧みですよ。それはこういうことです。
(1)被告人は「健祥桑梅品」は理由は分からないけど、効能はあると思っている。
(2)母から「人のためになることをしなさい」と言われ、自分も人のため、その一念で売った。
(3)(1)と(2)が事実なら、病気で苦しむ人に届けることに特に障害はない。

 ここまではいいですよね。これができない理由は被告人が言うには、たった1つ、医薬品と偽って売って多くの人に迷惑をかけたから、ですよ。それならば検察官の言うように、実現に向けてのたった1つの障害を除去してしまえば、つまり「医薬品と偽ることなしに、健康食品として販売すれば」売ることで多くの人を喜ばせることができるわけです。

 それなのに、それをしないのはなぜなんでしょうかね? 人のためにやっていたなら、やった方が人のためになるじゃないですか。ということはこの証言により「人のためにやっていた」という証言は全く信憑性がなくなってしまうわけです。では本当の理由は? 被告人が「販売しない方が得だ」と考えているからでしょう。どうして販売しない方が得なのか。それは普通に考えれば「医薬品と偽って売らないと売れない、あるいは儲けが少ない」からでしょう。

 裁判官がそう考えたかどうかは分かりませんが、少なくとも「人のためにやっていた」というのは「ウソだ」というのは認識したんじゃないですか。「人のため」でなければ「自分のため」にしていたのは間違いないと思いますけどね。見事です、検察官。たった1つの質問で相手の証言を根底から覆しましたね。検察官の薬は、さぞ苦かったことでしょう。

 この後、検察官が被告人に対して、懲役1年6月と罰金100万円、被告会社に罰金300万円を求刑して、閉廷でした。

 “人のため”という被告人にとって、迷惑をかけた“人のため”に販売をやめるべきか、待っている“人のため”に販売を続けるべきか。どっちがホントの“人のため”になるんだ?

注目の裁判

11月24日(火)被告人・秋山直紀:所得税法違反
<防衛汚職関連の所得税法違反事件> 08年8月、日米平和・文化交流協会会長の秋山直紀(当時58)は、防衛関連企業から受け取ったコンサルタント料を隠し所得税を免れたとして逮捕された。

11月24日(火)被告人・芳賀吉孝、小野克巳、五郎川弘之、他2人:わいせつ図画販売・頒布
<わいせつDVD販売を手助けした事件> 08年3月、アダルトDVD業界最大手の自主審査機関「日本ビデオ倫理協会」が、作品の審査基準を甘くして、わいせつDVDの販売を手助けしたとして、審査部統括部長小野克巳(当時51)らを逮捕した。

11月24日(火)被告人・板垣宏 十亀弘史 須賀武敏:爆発物取締罰則違反
<迎賓館などにロケット弾が発射された事件> 1986年に迎賓館などにロケット弾が発射したとして、中核派の須賀武敏、十亀弘史、板垣宏が逮捕された。1審では証拠不十分で全員が無罪とされたが、2審では無罪判決を破棄して審理を地裁に差し戻した。上告審も2審判決を支持し、1審に差し戻された。

11月24日(火)被告人・松田真知:銃刀法違反など(控訴審初公判)
<大量の拳銃や実弾を密輸した事件> 06年1月、指定暴力団稲川会系松田組組長、松田真知は幹部の後藤広一らと共謀して拳銃11丁、実弾220発などを密輸したとして逮捕された。1審で無期懲役、罰金400万円(求刑無期懲役、罰金500万円)を言い渡された。

11月25日(水)被告人・寺岡誠吉:殺人
<運送会社役員を殺害した事件> 08年12月、運送会社社長の寺岡誠吉(当時71)は、元暴力団組員に依頼して06年9月に同社役員の栩野雅晴さん(当時66)を殺害させたとして逮捕された。

11月25日(水)被告人・竹田慶介:公然わいせつ(初公判)
<路上で下半身を露出した事件> 09年10月、東京都豊島区の学習塾経営、竹田慶介(当時27)は同年9月に同区内の路上でズボンを降ろして下半身を露出し男子中学生3人に見せたとして逮捕された。

11月25日(水)被告人・小川俊之:爆発物取締罰則違反(控訴審判決)
<皇居に向かって火薬を詰めた消火器を発射した事件> 08年9月、神奈川県相模原市の元陸上自衛隊員の小川俊之(当時34)が、火薬を詰めた消火器を皇居に向けて発射したとして、逮捕された。

11月26日(木)被告人・原田久:威力業務妨害(初公判)
<サラ金の業務を妨害した事件> 09年10月、愛知県岡崎市の無職、原田久(当時38)は、消費者金融「レイク」のコールセンターに約500回電話をかけ、女性オペレーターにひわいな言葉をかけたとして逮捕された。女性の体の一部を表す言葉などをかけて業務を妨害したという。

11月26日(木)被告人・小川美津子、他2人:昏睡(こんすい)強盗と保護責任者遺棄(初公判)
<スナック経営者による昏睡強盗事件> 09年2月、東京都渋谷区のスナック経営、小川美津子(当時73)ら男女4人は、スナックで男性客に酒を飲ませて泥酔させ、キャッシュカードを盗んで路上に放置したなどとして逮捕された。

11月26日(木)被告人・松原弘樹:強盗(初公判)
<自衛隊員による強盗事件> 09年9月、陸上自衛隊第1空挺団(千葉県船橋市)の陸士長松原弘樹(当時21)らは、東京・六本木のビル敷地内で飲食店従業員男性(当時22)を倒し、顔を殴るなどして現金約13万円入りの財布を奪ったとして逮捕された。

11月26日(木)被告人・植本勝也、井福一郎、他1人:児童買春・ポルノ処罰法違反(初公判)
<暴力団員らによる児童ポルノ販売事件> 09年9月、大阪府守口市の指定暴力団山口組系暴力団組長井福一郎(当時61)と大阪市西淀川区の無職植本勝也(当時43)は、インターネットで児童ポルノのDVDを販売したとして逮捕された。

11月27日(金)被告人・波和二:組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)
<L&G詐欺事件> 09年2月、健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー」は、組織的に会員から出資金をだまし取ったとして会長の波和二(かずつぎ)(当時75)や幹部を逮捕した。被害者約3万7000人、被害総額約1260億円とみられる。

11月27日(金)被告人・高相祐一:覚せい剤取締法違反(所持、使用)(判決)
<酒井法子の夫の覚せい剤事件> 09年8月、自称プロサーファーで、女優酒井法子の夫、高相祐一(当時41)は、東京都渋谷区の路上で覚せい剤を所持していたとして逮捕された。

11月27日(金)被告人・和田達夫、嘉藤悦男:背任(初公判)
<理化学研究所をめぐる汚職事件> 09年9月、独立行政法人「理化学研究所」(理研、埼玉県和光市)の主任研究員、和田達夫(当時53)は、取引先の理化学器具開発販売会社「秋葉産業」の社長、嘉藤悦男(当時76)から旅行や飲食費などの代金付け回しを受け、その穴埋めに架空発注を行ったとして逮捕された。


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阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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