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企画特集


2008年5月05日

法廷で詩を朗読したアーチスト岡村靖幸

 去年からちょこちょこ報じられたんだけど、裁判所と偽って個人情報を入手しようとする輩がいるらしい。裁判所もホームページで注意をうながしてたしね。
 で、5月1日のニュースですよね。記事をちょっくら引用。

 最高裁は「最高裁判所」を名乗る、自動アナウンス装置を利用した不審電話が頻発していると発表した。
 不審電話は自動アナウンスで「東京裁判所」に出頭するように要請。その後「問い合わせをする場合は9番を押すように」と続き、9番を押すとオペレーターにつながる。オペレーターはたどたどしい日本語で「あなたは詐欺事件の被告になった」などと話した上で、聞き出そうとするという。

 これで騙される人はいたのかね? 「詐欺事件の被告になった」と言っているのに、名前を知りたがっているんでしょ。しかも、被告じゃなくて被告人でしょ。っていうか「東京裁判所」ってどこ? 家裁なのか、簡裁なのか、地裁なのか、高裁なのか。
 今後も裁判員制度を掲げて悪いことを考えているやつが出てくるだろうから、要注意。
 さて、今回は5月2日に行われた岡村靖幸被告人(42)の裁判傍聴記。またまたと言うべきか、覚せい剤使用事件です。
 新聞報道によると、2月5日、「だいすき」などのヒット曲で知られるミュージシャン岡村靖幸が、新宿区内の自宅で使用目的で覚せい剤を少量所持していたために関東信越厚生局麻薬取締部に逮捕された。岡村は、同様の薬物事件で、03年に懲役2年執行猶予3年、05年には懲役1年6月の判決を言い渡されている。

asozan080505.jpg

 去年からは、イベントに出演したり、CDを発売したり音楽活動を再開していたんだけど、全国ツアー中に逮捕と。それで、公演中止、ファンクラブ解散ですからねぇ。覚せい剤の事件は被害者が存在しないなんていわれるけど、この場合は多大な迷惑がかかってることでしょうね。

 被告人が有名人ということで、傍聴券20枚に対して傍聴希望者が201人という大行列。倍率10倍の難関をくぐりぬけ、なんとか当選しました。

 法廷に入ると、テレビカメラがスタンバイしてあって、いつでも撮影できる状態なんだけど、弁護人がいないんです。すると、裁判官と廷吏が小声でゴニョゴニョ打ち合わせ。

 裁判官 「え、撮影あるって言った? あっっちゃーーーー、時間なくなっちゃうね」

 どうやら、弁護人の到着が遅れているようです。そして、廷吏が法廷を何度も出たり入ったりして、

 廷吏 「あ、今いらっしゃいました。でも、(撮影には)入らないそうです」

 というわけで、弁護人抜きで撮影されました。開始前からドタバタした裁判だこと。

 起訴されてたのは2月2日に自宅でフェニルアミノプロパンをあぶって吸入したということと、2月5日に自宅でフェニルアミノプロパン0・231グラムを持っていたという、2つ。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は24歳から大麻をはじめ、20代後半からはコカイン、30歳からは覚せい剤にも手を出していて、違法薬物の常習者であるとのこと。
 06年12月に仮釈放され、刑執行終了の07年3月25日以降、覚せい剤の使用を再開していたらしい。

 取調べで、自宅にあった覚せい剤のことを被告人は「埃(ほこり)だ。のどの薬だ」と最初は否認していたものの、のちに自供。他には「平成19年(2007年)4月頃から知人を介して外国人から覚せい剤を購入した。曲作りの悩みやけがの痛みもあって、使用した」と述べているとのこと。

 刑務所を出てから数カ月で覚せい剤使用を再開するって、反省していないというか、依存性の高さを証明しているというか。

 法廷には情状証人として、テレビでもおなじみの精神科医・名越康文氏が出廷していました。被告人とは以前から知り合いとのことでの出廷のようです。

 弁護人 「証人は覚せい剤依存の治療を何度も行っているのですか?」
 名越証人 「100例以上の治療にかかわってまいりました」
 弁護人 「治療は難しいものなんでしょうか?」
 名越証人 「一般の方が考えるより難しいと思います」
 弁護人 「復帰できるのはパーセンテージで言ったら、何パーセントくらいですか?」
 名越証人 「そうですねー、10~20パーセントしか復帰はできないと思います」
 弁護人 「かなり難しい、と」
 名越証人 「はい!」

 証人は大阪でその手の治療に13年かかわってきたらしいんだけど、そんなプロが力強く「はい!」と答えているところをみると、よほど大変な治療なんでしょう。

 弁護人 「何故、今後監督していく立場として証人になったんですか?」
 名越証人 「実質上、これが最後のチャンスになると思いまして。彼からオファーがあったとき、(断れば)医師として後悔するのではないかと」
 弁護人 「面会に行って、どんなことを言いました?」
 名越証人 「人間は決意するのは簡単です。それを継続するのは、100倍の意志が必要になることを伝えました」

 医師として、知人として、自分の更生プログラムで、被告人を更生させたいと述べていました。

 次は赤坂で沖縄料理屋をやっている女性が証人として出廷。家族や医師が情状証人ってのはわかるんだけど、沖縄料理屋の女将さんが証人って。

 弁護人 「被告人とはどうやって知り合いました?」
 女性証人 「私のお店に01年頃いらっしゃいまして、いきなり“ここは家族でやってるんですか”って。最初は、アーティストって知らなかったんですけど、毎日のように来てくれるようになりました」
 弁護人 「その後の付き合いは?」
 女性証人 「息子とランチやストレッチに行ったり、沖縄料理のお店を手伝ってくれたりしました」
 弁護人 「家族のような付き合いですかね」
 女性証人 「そうです」

 この証人は単なる知り合いというより、東京での被告人の母親みたいな存在なのではないでしょうか。

 弁護人 「被告人の逮捕はどうやって知りました?」
 女性証人 「息子がパソコンで見たのと、マネージャーさんから電話がありました」
 弁護人 「逮捕を知って、どう思いました?」
 女性証人 「岡村さんが生きていて、よかったなぁって」
 弁護人 「では、最後に被告人に対して言いたいことはありますか?」
 女性証人 「肩の力を抜いて、ね、もう少しゆっくりして生きていきませんか? …2年後、また会いましょ! そして、一緒に沖縄行きませんか?」

 と、取り繕(つくろ)うような明るい声で出所後の約束をすると、被告人は何度も何度もうなずいていました。判決が出る前に実刑、収監を前提に話をしています。
 そして、被告人質問です。まずは、弁護人から。

 弁護人 「今、どこにいるか分かっていますね? どこですか?」
 被告人 「裁判所です」
 弁護人 「そこに立つのは何回目ですか?」
 被告人 「3回目です」

 長い拘束生活に疲れているのか、被告人の声は小さくモゴモゴとして聞き取りにくいんだけど「今どこ?」って質問をしなきゃいけないほど、薬物の影響が出ているのかと、変に勘繰(かんぐ)ってしまいます。

 弁護人 「覚せい剤の使用は、人を傷つけないからいいと思ってるんじゃないですか?」
 被告人 「そんなことはありません。たくさんのスタッフ、ファン、親、知人を苦しめました」

 検察官のように厳しい弁護人です。さらに

 弁護人 「前刑の裁判でね“2度と覚せい剤に手を出しません。100パーセント約束します”とか“麻薬撲滅の活動をしていきたい”と裁判官の前で誓ってるんですよ。100パーセントってどういう意味ですか?」
 被告人 「完全という意味です」
 弁護人 「撲滅は?」
 被告人 「なくしていくという意味です」

 子供じゃないんだから、そんなにこと細かに意味を聞かなくてよさそうなもんだけどね。

 弁護人 「なぜ、繰り返すんですか?」
 被告人 「ちゃんと治療する前に仕事をしてしまって、ファンの人が待ってくれて、待ってくれている人たちの期待に応えたい一心で仕事を始めてしまいました。それで、仕事がうまくいかないこともあり、コンディションが悪いこともあり、手を出してしまいました」

 これはファンからのプレッシャーが原因と解決するべきなのか、ファンを言い訳に使っていると見るべきか。

 弁護人 「社会復帰後、どうするつもりですか?」
 被告人 「仕事をすぐに始めることはせず、カウンセリング、治療をして、完治しても続けていく生活をしていこうと思います」
 弁護人 「世間の人たちはどうせ4回目もあるだろうと思っていますよ。ここにいる人のほとんどがそう疑っています。そんな疑われる中で頑張っていく大変さを分かっていますか?」
 被告人 「分かっています。はぁー、私は今回たくさんの人を傷つけてしまいました。スタッフ、親族、ファンの皆様に悲しい思いをさせてしまいました。100パーセント治療し、100パーセント、カウンセリングを受けて、完治してから仕事したいと思います」

 と、前刑の裁判ではウソになってしまった“100パーセント”を用いて、再犯しないことを誓っていました。

 次は検察官からの質問。

 検察官 「復帰後すぐにメジャーシーンに行ってしまったのも原因なんですか?」
 被告人 「そうなのかもしれませんが自分に原因があると思います」
 検察官 「1、2回目の裁判のあと、カウンセリングを受けようと思いませんでした?」
 被告人 「そういう発想がありませんでした。スケジュールが山のように組まれていて」
 検察官 「それは自分で減らすのは無理なんですか? お願いするとか」
 被告人 「今にして思えば、そうすればよかったです」

 なんだか、検察官の方が情状に近い気がする質問です。そして

 検察官 「あなたの音楽活動を待っている人もたくさんいるようなんで、まーーー、なんと言ったらいいか分からないけど、あのーー、行き詰まることもあると思うんですよ。どうします?」
 被告人 「カウンセリング受けます」

 と最後に聞いて質問終了。仕事のいらだちや焦りが原因であったとしても「音楽やめろ」とは言えないようで、言葉を選んで質問している検察官に人の良さが垣間見えましたね。

 最後は、裁判官から

 裁判官 「原因が仕事に焦って、頑張ったと。それで、なぜ、覚せい剤なんですか?」
 被告人 「不眠不休になるので、使ってしまいました」
 裁判官 「本末転倒だと思いません?」
 被告人 「冷静さを欠いていました。(前刑で)ファンをがっかりさせてしまって、もっと頑張って、不眠不休でやらなければ、と」
 裁判官 「覚せい剤を使って、曲をつくっても、意味あります?」
 被告人 「全然ないです」

 高圧的な裁判官の質問に、力なく答える被告人。そして、覚せい剤の入手ルートについての質問です。

 裁判官 「(調書に)知り合いを介して覚せい剤を購入とあるけど、知り合いって?」
 被告人 「いや、介していません」
 裁判官 「え? じゃ、あなたが直接、外国人と連絡をとってたんですか? 連絡先は?」
 被告人 「前のケータイに(電話番号が)入ってましたので」
 裁判官 「は? 前のケータイ? 2回の裁判受けて、ケータイの連絡先見て、自分で電話したんですか?」

 呆れている様子の裁判官。これは検察官が適当な調書を作ったのか、被告人が知り合いをかばうためにうそをついているのか、1年半もケータイ番号を変えない密売人がいるのかどうかでしょうか。そのケータイは廃棄されているらしんだけど、深く追求されませんでした。

 裁判官 「最後に。完治するまで仕事はしないということですけど、蓄えはあるわけですか?」
 被告人 「はい」

 そりゃ、金はあるだろうけど、裁判官としては社会復帰後の生活費が気になったようです。

 この後、検察官は懲役2年6月を求刑。これに対し、弁護側は今まで隠していた薬物遍歴を告白し、治療を約束しているとして、寛大な判決をお願いしていました。

 それを受けて、被告人の最終陳述です。

 被告人 「迷惑をかけた方々にお詫び申し上げたいと思います」

 などなど、謝罪を言ったあと

 被告人 「今の気持ちを詩にしましたので、朗読してよろしいでしょうか」

 と言ったんです。裁判史上そんなことってあったのか? 判決で、さだまさしの歌を引き合いに出した裁判官はいたけど、最終陳述でオリジナルの詩を朗読する被告人は初でしょ。

 被告人 「タイトルは“樹氷”。
裸足で氷の上を歩くようにしかコミュニケーションを取れない僕
裸足で氷の上を歩くようにしか人を愛せない僕
なぜだろう
皆はすらすらっとプロスケーターのように滑るのに
僕はすってんころりん
上手に滑っていく人もいるし
エヘヘと笑ってく人もいる
嘘ついて嘘ついて
嘘ついて嘘ついて
嘘ついて嘘ついて
裏切って逃げて
これは本当の僕じゃない
僕は寂しがり屋だ
僕は生まれてよかったのだろうか
何を着ても
何を履いても気持ちが悪い
時代とうまくやっていけない
友達とうまくやっていけない
というか友達がいない
生きていていいのだろうか
今まで人にホントのことを話したことがない
ホントの僕は君と川を泳ぎたい
真夜中に泳ぎたい
裸で泳ぎたい
…ファンの皆さん、本当にすみませんでした!」

 と、3~4分に及ぶポエトリーリーディング。被告人の声が小さいのと、こもっているので、正確ではないけど、こんな感じです。

 ミュージシャンに限らず、人前で何かを表現する人たちって、そんなにファンのことを常に考えてなきゃいけないのかね。ファンのために何かしなきゃいけないのかね。しかも、身を削ってまで。

 完治後に仕事を再開しようと考えてることや、詩の朗読を聞いてると、被告人の気持ちの先走り感は否めないですね。サービス精神が旺盛なのかも知れないけど、今は治療のことだけ考えればいいわけでしょ。

 でも、復帰を望む人はたくさんいるんだろうなぁ。

 「生きていてよかった」「ゆっくり生きていきませんか」といってくれる沖縄料理屋の女将みたいなスタンスで待ってあげれば、被告人のプレッシャーも軽減すると思うんだけどね。沖縄の誘いにあんなに何回もうなずいてたんだから、沖縄音楽にかぶれていく岡村ちゃんってのもありでしょ。音楽を続けられるだけでも幸せじゃないか。

 傍聴券の抽選に並んでくれるファンもいない俺が言っても、何の説得力もないけどね。

※覚せい剤(右)と注射針。いったん使用すると復帰できるのは10~20%とか(資料写真、共同)

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5月16日(金)被告人・小林洋子(判決):詐欺
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5月16日(金)被告人・渡辺和三:公務員職権乱用(初公判)
<警察官が無料でマッサージをさせた事件> 08年3月、警視庁蔵前署刑事生活安全組織犯罪対策課の渡辺和三(当時57)は、交際目的でマッサージ店を経営する30代の女性に携帯電話の番号などを申告させ、無料でマッサージをさせ逮捕された。

阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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