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2008年4月21日

104のオペレーターさん、「切らないで男」はこんな人でした

 話題になっていた法務省横の看板が今週中に変わるらしい。「裁判員 参上!」から「裁判員 誕生!」へ。予算の都合で2文字しか変えられないって話だったんだけど、もともとがひらがな表記だったら、“さ”を“た”に変更するだけですんだのにね。

 あれも話題づくりの一環だろうから、法務省としては作戦成功なんだろうけど、全国から募った“参上”に変わるアイデアが、283件だけだって。意外と注目されてないのかな。

 さて、今回は4月16日(水)に行われた藤沼孝弘被告人(37)の裁判の話。罪名は業務妨害。NTTの番号案内104に半年間に約2600回のいたずら電話をかけ業務を妨害したとして、威力業務妨害の疑いで逮捕された事件です。
 藤沼は容疑を認め「独身の寂しさを紛らわすためにやった」と供述。番号を案内してもらうことなく一方的な会話を続けていた。「切らないで」とできるだけ話を引き延ばそうとするため、オペレーターの間では「切らないで男」と呼ばれていたという。
 同容疑者は「番号を案内してもらうまで通話料や案内料がかからないからかけた」とも供述。オペレーターを「お嬢様」と呼んだり、対応が悪いと怒ったりしていたという。

 これはテレクラ感覚で電話してたんですかね。同じいたずら電話の事件でも、110番や119番にかけるケースはよくあるんだけど、104の電話をかけるのは聞いたことがないな。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は大学を卒業後、高校や塾の先生をやっていたらしく、その後は職を転々としていたと。そして、平成18年の春頃、友達がいない寂しさから104に電話して、番号案内と関係ない会話をしたのがきっかけで、何度も電話をかけるようになったとのこと。
 平成18年からいたずら電話はしてたようなんだけど、起訴されたのは平成19年6月1日から11月17日までの2602回だけでした。

 取調べに対し、被害を受けたオペレーターは「無言になったので“失礼します”というと、被告人が“切らないで、切らないで”と話を引き延ばそうとしてきた。時には“客の話を聞くのが仕事だろ。クレームだから聞け”と怒り出すこともあり、多いときは1分間に3回も電話をかけてきました。被告人の電話を受けている間は、惨め感、無力感を味わい、被告人のせいで目標数に達しなかった」と、被害感情をあらわにしているようです。
 それにしても、104に目標数とかあるんですね。知らなかった。

 被告人の父親が出廷しての証人尋問。「息子は仕事が長続きしないので、我慢することを言っていきたいです」など、生活態度から監督していくことを約束していました。

 そして、被告人質問。まずは、弁護人から。

 弁護人 「平成18年春に、104に電話をしたきっかけはなんですか?」
 被告人 「正規に104を利用した際に、オペレーターさんとのやり取りがあったので」
 弁護人 「それは、あなたが“きれいな声ですね”と言ったら“ありがとうございます”と反応してくれた、と?」
 被告人 「はい、そうです」

 そんなちょっとした会話がきっかけだったんですね。オペレーターとしてもムゲに扱うのもなんだし、受け答えしただけだと思うんだけど。被告人にとっては“萌え”だったんでしょう。

 弁護人 「何度も電話するようになったのは?」
 被告人 「平成18年の秋ごろだと思います」
 弁護人 「理由はなんですか?」
 被告人 「正社員で勤めていた会社を辞めまして、比較的暇が出来たからだと思います」
 弁護人 「何度も電話したのはなぜですか?」
 被告人 「仕事をやめたので将来の不安もあって。あと、酒が好きなもんですから、酔った勢いで回数を多くかけてしまいました」

 先週分の被告人もそうなんだけど、またもやアルコールが原因のようです。それに対しては音で裁判官につつかれることになるんだけど。

 弁護人 「電話をしたのはお酒が入ってるときだけですか?」
 被告人 「そうです」
 弁護人 「では、今後どうすればいいと思います?」
 被告人 「継続的な仕事について、お酒を一切飲まないことだと思います」

 と、今後の生活態度を述べて、質問終了。次は検察官から。

 検察官 「こんなに続けてたのは、楽しかったから?」
 被告人 「…うーーーん…、そうですねぇ、楽しいという気持ちでかけてたと思います」
 検察官 「オペレーターにか冷たくあしらわれていたようだけど、それが楽しい?」
 被告人 「会話をしたがっていたので」
 検察官 「あなたが望んだのはそういうあしらわれる会話なの?」
 被告人 「いや…、ただ話したいというのがありましたので」

 会話が楽しかったかどうかはあまり関係ないような気もするんだけどね。被告人に対して、あらためてバカなことをしたんだと思わせるための質問なんでしょうか。

 検察官 「取調べで“友達がいない寂しさから”と答えてますけど、高校、大学の同級生とか友達はいなかったんですか?」
 被告人 「いないわけじゃないんですが、皆仕事をしていますし、夜中に話すのはちょっと…」
 検察官 「104はよくて、友達はダメってことですか?」
 被告人 「具体的に自分のことが分かってしまうので」
 検察官 「ん? 104は自分だとバレないからいい、と?」
 被告人 「そういうところがあったと思います」

 ちゃんと調べなきゃ誰だかわからないだろうけど、オペレーターの間では有名な存在だったんだよなぁ。バレてないと思っていたのは本人だけ、と。

 そして、裁判官からの質問。というか、一方的な説教です。

 裁判官 「さっきから話を聞いていると、お酒のせいにしているようだけど、そんな酒飲んだから電話をかけるって、そんなのないでしょ!」
 被告人 「えぇ…、そうですね」
 裁判官 「酒を飲んで気が大きくなったというのは分かりますけど、酒とは別に人格的なところが原因というのはないですか」
 被告人 「…」
 裁判官 「うーーーーーん、女性が嫌がるのが楽しいの?」
 被告人 「それはないです」
 裁判官 「じゃ、何で? すさまじい回数ですよ」
 被告人 「寂しさを紛らわすためです」
 裁判官 「かえって寂しくなる気がするけど」
 被告人 「次の日とか、お酒が抜けると“何してるんだろ”という気持ちになって、空しくなりました」

 この被告人の答えを聞いて、裁判官は「やっぱりね」という顔をして

 裁判官 「だと思いますわぁ」

 と納得していました。

 そして、ここからが裁判官の独演会。

 裁判官 「あと、お父さんが言ってましたけど、仕事が長続きしないのは?」
 被告人 「考えが甘いのか、我慢ができないというか」
 裁判官 「バカバカしい我慢はしなくていいと思いますけど、人と人とがコミュニケーションをとるにあたって、我慢しなきゃいけないことって、あると思いますよ。その部分が欠けてるんじゃないかなぁ。そういう意味ではね、オペレーターの方は我慢を強いられたでしょう。仕事とはいえ、こういう電話を受けるのが本来の仕事じゃないですからね。だから、お酒とかじゃなくて、分析していくと分かると思うんですよ。あなたの受け答えや身なりを見る限り、すぐに仕事をやめるようには見えないんですよ。社会常識がどこかにいってたのかなと思うんだけど。今後はこういうことにならないよう、がんばったらどうですか」
 被告人 「はい」

 と、被告人が答えて質問終了。裁判官も長々としゃべったわりには、最終的には「頑張ったら」というアバウトなアドバイスに落ち着いちゃいましたね。

 この後、検察官は懲役1年6月を求刑。すると、

 裁判官 「判決のタイミングについて、ご意見ありますでしょうか?」

 と、弁護人、検察官に質問しました。両方とも意見なしというわけで、即日判決です。
 結果は、懲役1年6月執行猶予3年。先ほど長々としゃべったからか、裁判官からはこれといったコメントなく、閉廷。
 コミュニケーションが下手な被告人が、いたずら電話で逮捕っていうのは皮肉なもんだ。

 それにしても、審理の端々から察するに、オペレーターからは冷たい態度をとられてたわけでしょ。なのに、2602回の電話をかけ続けるのは、根気もあるし、我慢強い被告人だと思うんだよね。どんなことがあっても、仕事が続けられそうな気がするんだけど。

注目の裁判

5月12日(月)被告人・武藤勇貴:殺人等
<実妹を殺害した事件> 06年12月、予備校生の武藤勇貴(当時21)は、実妹の亜澄さん(20歳)を殺害、死体をバラバラにした。亜澄さんから「勉強しないので成績が悪い」「夢がない」などとなじられ殺害を決意したと逮捕後に供述した。

5月12日(月)被告人・矢飼清正 上崎史登:準強制わいせつ(初公判)
<大手広告代理店社員によるわいせつ事件> 08年3月、大手広告代理店博報堂の社員矢飼清正(当時41)と、上崎史登(当時24)は、前年12月に港区の高級ホテル客室内で女性に睡眠薬を混入したワインを飲ませ、わいせつな行為に及んだとして逮捕された。

5月12日(月)被告人・後藤祐樹:窃盗、強盗傷害
<元人気歌手による窃盗事件> 07年10月、人気歌手ユニット「EE JUMP」元メンバーの後藤祐樹(当時21)は7月、江戸川区江戸川2丁目の都営住宅建築工事現場から、電気工事用ケーブル数十巻(約100万円相当)を盗んだとして逮捕された。その後、強盗傷害容疑でも逮捕された。後藤は「モーニング娘。」元メンバーの後藤真希さんの弟。00年、ユウキの芸名でソニンとのユニット「EE JUMP」でデビューした。

5月12日(月)被告人・小林一美(控訴審初公判):脅迫、威力業務妨害
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5月13日(火)被告人・小嶋重綱:婦女暴行未遂
<偽の警察手帳を使った婦女暴行未遂事件> 08年1月、無職小嶋重綱(当時71)は、友人と話をしていた都内の女子短大生(18)に「たばこを吸っていただろ」などと脅して河川敷に連れ出し「騒いだら殺す」と短大生を乱暴しようとした疑い。

5月13日(火)被告人・友部博文、新井拓:暴行
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5月13日(火)被告人・阿多真也、鷺谷輝行、伊藤玲雄:殺人、傷害致死、死体遺棄など
<架空請求詐欺グループの仲間割れによる殺害事件> 05年6月、架空請求詐欺グループの伊藤玲雄、阿多真也らは、グループを抜けようとした千葉県船橋市の男性ら4人を監禁した上で殺害した。1審判決で伊藤が死刑、残る2人は無期懲役の判決を受けた。

5月14日(水)被告人・宮田克彦、新田こと禹時允(判決):覚せい剤取締法違反
<北朝鮮からの覚せい剤密輸事件> 06年5月、指定暴力団極東会系組長宮田克彦(当時58)と韓国籍の禹時允(当時59)らは、北朝鮮から覚せい剤を密輸したとして、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)容疑で警視庁組織犯罪対策5課に逮捕された。逮捕当時、禹は01年の不審船事件で、北朝鮮工作船から回収された携帯電話の持ち主と報じられた。

5月15日(木)被告人・斎藤隆文 押味利明:贈賄、収賄(初公判)
<国土交通省関東地方整備局東京港湾事務所の贈収賄事件> 08年3月、国土交通省関東地方整備局の東京港湾事務所の元企画調整課長押味利明(当時49)は収賄で、印刷会社「ニッセイエブロ」社員斎藤隆文(当時32)が贈賄で、それぞれ逮捕された。07年4月、押味は広報資料作成などに関してニッセイエブロから随意契約を結べたことの謝礼などの目的で、斎藤から50万円相当のギフトカードを受け取った。

5月15日(木)被告人・栗山龍:強姦致傷、傷害
<AV撮影と称した強制わいせつ傷害> アダルトビデオの撮影と称して、出演女優に薬物を吸わせたうえ、わいせつな行為に及び、全治4カ月の重傷を負わせたとして、ビデオ制作会社バッキービジュアルプランニングの代表・栗山龍ら8人が、強制わいせつ傷害の疑いで04年12月までに逮捕された。それを発端として、次々に明るみに出る“ビデオ撮影”と称した暴行内容。女優の多くは騙されて連れてこられて監禁され、死の一歩手前まで激しい拷問を受けていた。長期入院して車椅子や人工肛門などの重い後遺症を受けた女優も数名。

5月15日(木)被告人・渡辺ノリ子(控訴審判決):放火など
<ドン・キホーテに放火した事件> 04年12月、無職渡辺ノリ子(当時47)はさいたま市のドン・キホーテなどの量販店に連続して放火、男女3人を死亡させた。1審では無期懲役の判決を受けた。

5月15日(木)被告人・秋山勝彦:監禁等
<テレビ番組の取材を装った監禁、強盗事件> 04年8月、香川県の観光牧場の支配人を、テレビ局の取材と称して呼び出し、監禁して現金を奪ったとして、秋山勝彦ら4人が逮捕された。支配人は7月上旬に在京テレビ局の番組に出演していた。4人は支配人をワゴン車に閉じ込め監禁。車内で殴るなどして「500万円用意しろ」と脅しキャッシュカードなどを奪った。

5月16日(金)被告人・黒岩勇:旅券法違反
<エビ養殖投資をめぐる詐欺容疑とパスポート偽造事件> 08年1月、投資会社「ワールドオーシャンファーム」会長の黒岩勇(当時58)は他人名義の偽造パスポートを使用したとして、旅券法違反などの疑いで警視庁生活経済課に逮捕された。  同社は「フィリピンでのエビ養殖に投資すれば1年で倍になる」と宣伝し、約4万人から約600億円を集めたとされ、詐欺容疑で家宅捜索を受けた。黒岩がパスポートを申請したのは07年春で、事業の破綻を見越して計画的に海外逃亡したとみられている。

5月16日(金)被告人・二瓶絵夢:詐欺未遂、有印私文書偽造・同行使
<ジャーナリストらによる詐欺事件> 07年9月、フリージャーナリスト二瓶絵夢容疑者(当時31)元衆院議員秘書で広告会社社長市川和久容疑者(当時45)らは東京・表参道の不動産に関して、架空の売却話を持ち掛け内金名目で11億円をだまし取ろうとしたとして、東京地検特捜部に逮捕された。二瓶は自民党の有力議員のインタビュー記事などを雑誌に執筆するなど活躍し、北朝鮮との交渉に同行するなどしていた。

5月16日(金)被告人・伊沢光二 小河喜信:著作権法違反
<ジャニーズ所属アイドルのDVDを無断販売した事件> 08年2月、小河喜信(当時53)と伊沢光二(当時40)は、ジャニーズ事務所の堂本光一氏主演ミュージカルを無断で録画したDVDをJR有楽町駅近くの路上で販売したとして、逮捕された。

5月16日(金)被告人・小林洋子(判決):詐欺
<手話を使っての詐欺事件> 07年2月、福祉機器販売会社のコニーワイズ(東京都港区)小林洋子社長(当時55)経理担当の町田栄子(56)長男の町田訓清(当時28)が警視庁と山梨県警の合同捜査本部に詐欺容疑で逮捕された。3人は05年に聴覚障害を持つ男性(53)に、手話を使って「私にお金を預ければいい。必ず返すから安心してほしい」と現金2300万円を預けさせ、だまし取った。被害者は約270人、被害総額は27億円にも上る。

5月16日(金)被告人・渡辺和三:公務員職権乱用(初公判)
<警察官が無料でマッサージをさせた事件> 08年3月、警視庁蔵前署刑事生活安全組織犯罪対策課の渡辺和三(当時57)は、交際目的でマッサージ店を経営する30代の女性に携帯電話の番号などを申告させ、無料でマッサージをさせ逮捕された。

阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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