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2008年3月31日

22億通の迷惑メール鬱陶しいんだけど…

 ちょこっと宣伝。先週「コラムの花道 2007傑作選」が発売されました。これはTBSラジオ「ストリーム」の1コーナーを書籍化したものなんだけど、豪華な本ですよ。よくぞ、これだけの人を集めたもんだ。だってコラムの花道の出演者だけじゃなく、このコーナーの愛聴者として、石野卓球、しまおまほ、林操、水道橋博士の寄稿も載ってるし。そんな中で俺はちょっとだけ載ってるんだけど、なぜか、表紙のど真ん中に名前が載ってるんですよ。端っこでいいのに。興味がある人は是非。

 今回は3月24日に行われた椎名勇気被告人(25)の裁判の話。罪名は特定電子メールの送信の適正化等に関する法律違反。

 架空の送信者名を使い22億通の迷惑メールを送信して逮捕された事件ですね。
 調べではアルバイトの椎名は架空の電子メールアドレスを使用して、昨年11月15日午前1時ころから10時25分ころにかけて、自分のパソコンを使用して、競馬情報サイトや出会い系サイトに誘導する迷惑メールを9回送信。
 06年5月ころから07年12月までの間、約22億通の迷惑メールを送信していた。1度に大量のメールを送信できるソフトを使って、送信者名を書き換えて送っていた。送信先のメールアドレスはインターネットを通じて名簿業者から80万件購入。受信者が利用登録すると広告主から手数料が入る仕組みで、これまでに2000万円の利益を得ていた。

 俗に迷惑メール防止法なんて言われる罪名なんだけど、裁判は初のような。今まであったのかもしれないけど、非常に珍しい裁判です。

 起訴されていたのは、「勝てる馬券に直結した情報を提供します。登録料は一切ありません」と書いた競馬情報サイトの広告メールを4回送信したというもの。
 報道では9回、それ以外に約22億通の迷惑メールって話だったけど、起訴は4回のみ。大量の同時送信だから、4回だけでもかなり迷惑メールを送ってることになるんだろうけどね。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は06年1月にメールの一括送信のソフト広告を見る。その2カ月後に自宅とは別にアパートを借り、同年5月からは6人雇って迷惑メールの送信を開始。07年12月までに、19億5000万通の迷惑メールを送信し、930万円の利益を得ていたとのこと。

asozan080331.jpg

 人を雇って、文面作成したりしてたようなので、会社みたいな感じでやってたんでしょうか。この手の事業は、社会問題になってるわりには逮捕者少ないんですよ。だから、逮捕の経緯を知りたかったんだけど、最後まで語られずでした。どうやって、足がついたのかなぁ。

 まず、被告人の父親が出廷して証人尋問。

 弁護人 「本件は大きく報道もされましたが、事件を知って、どう思いましたか?」
 証人 「社会に与えた影響の大きさを痛感しております」
 弁護人 「今後はどのように監督していきますか」
 証人 「家族で話し合う機会を増やしたいと思います」

 どうやらメールに関する仕事をしていたのは知ってたんだけど、違法なことをしてたとは思っていなかったようです。今後はコミュニケーションを取っていくと。

 証人 「まっとうな仕事をしていただいてですね、楽しく稼ぐような仕事じゃなく」

 と、汗水たらして働く仕事をさせたいと述べて、質問終了。続いて、被告人質問です。まずは、弁護人から。

 弁護人 「やってる時に違法だとわかってました?」
 被告人 「はじめのころは分かりませんでしたけど、途中でニュースで(自分と)似たようなことをやって捕まった人がいて、それで知りました。まさか、自分が捕まるとは思ってませんでした」
 弁護人 「知ってて続けてた、と?」
 被告人 「楽して稼げてたのもありますし、あまり判例がないでの大丈夫だろう、と」
 弁護人 「軽く考えてた?」
 被告人 「軽く考えてたと思います」
 弁護人 「そこは反省してくださいね」

 人を傷つける種類の犯罪じゃないし、バレにくいし、気軽にやってたんだろうなぁ。今後は同じことをしないと誓っていました。

 次は検察官からの質問。

 検察官 「“勝てる馬券に直結した情報を提供”という広告メールを送ってますけど、そもそもその会社がいかがわしいとは思いませんでしたか?」
 被告人 「自分は競馬は全くわからないので」
 検察官 「詐欺まがいの商法では、とは?」
 被告人 「詳しくないのでわかりませんでした」

 この罪名って受信者が望んでないメールを送りつけることを罰するルールですよね。多分。それならいかがわしいとか詐欺まがいとか関係ないような。こういうことを質問すれば、より悪いことをしてた感は強まるかも知れないけど。

 検察官 「迷惑メールのメーンは出会い系?」
 被告人 「そうです」
 検察官 「出会い系というと、中にはいかがわしい業者もあると思うんだけど、選別してたんですか?」
 被告人 「そういう選別はしていませんでした」

 やっぱりいかがわしさを強調です。さらに、

 検察官 「あなたはメードの事業をやろうとしてましたよね」
 被告人 「秋葉原内を観光案内する仕事ですね。メードが(秋葉原を)案内・紹介する仕事ってないので、やってみようと、と」
 検察官 「その件はどうなりました?」
 被告人 「もうなくなりました」

 正直いって事件と全く関係ないような。メードブームに便乗した商売をやろうとしてる、っていう、うさん臭さは印象付けられるけど。でも、確かにありそうでない商売ですね。誰かやってみたらどうでしょう。意外とヒットするかも知れない。この後、友人を巻き込んだことも謝って質問終了。最後は、裁判官から。

 裁判官 「犯行時はいくら稼ぎました?」
 被告人 「合計ですと、2000万ちょっと」
 裁判官 「今のアルバイトは?」
 被告人 「お弁当の配達です」

 この被告人は誰かに送ったり配ったりってのが好きなんですかね。犯行時は望まれないメールを配り、現在は求められた弁当を配達しているわけね。

 裁判官 「いくら稼いでます?」
 被告人 「1日7200円です」
 裁判官 「稼ぎから見ると、今は地味な仕事ですが、続けられますか?」
 被告人 「はい!」

 と、弁当配達を続けることを約束して質問終了。
 これって、迷惑メールを受け取った側が被害者ってことでしょ。なのに、誰もその辺のことは質問しないんですよ。被告人が罪を認めてるから、省略したのかもしれないけど。
 検察官は、懲役6月を求刑。これに対し、被告人の最終陳述です。

 被告人 「多くの人に多大な迷惑をかけてしまいました。これからは地味な仕事でも続けていきます。申し訳ありませんでした」
 
 と、述べました。19億5000万通のメールを受け取った人のことを“多くの人”と言ってるなら、何が悪いか分かってるんでしょう。なんだか、被告人だけが唯一把握してる気になってきます。これで閉廷かと思いきや、

 裁判官 「この後、判決にしますけど、よろしいですか?」

 と、弁護人に検察官に確認をとって、即決です。

 判決は懲役6月執行猶予3年。
 この手の事件の相場はこの程度のようです。それにしても、こんなことで稼ごうとしてたのは非難されるべきだし、反省すべきなんだけど、受信者に対しての気持ちとか誰も質問しなかったのは腑に落ちなかったなぁ。あれって結構鬱陶(うっとう)しいんだけど。

※この類のメール、本当に迷惑(資料写真)

注目の裁判

11月24日(火)被告人・秋山直紀:所得税法違反
<防衛汚職関連の所得税法違反事件> 08年8月、日米平和・文化交流協会会長の秋山直紀(当時58)は、防衛関連企業から受け取ったコンサルタント料を隠し所得税を免れたとして逮捕された。

11月24日(火)被告人・芳賀吉孝、小野克巳、五郎川弘之、他2人:わいせつ図画販売・頒布
<わいせつDVD販売を手助けした事件> 08年3月、アダルトDVD業界最大手の自主審査機関「日本ビデオ倫理協会」が、作品の審査基準を甘くして、わいせつDVDの販売を手助けしたとして、審査部統括部長小野克巳(当時51)らを逮捕した。

11月24日(火)被告人・板垣宏 十亀弘史 須賀武敏:爆発物取締罰則違反
<迎賓館などにロケット弾が発射された事件> 1986年に迎賓館などにロケット弾が発射したとして、中核派の須賀武敏、十亀弘史、板垣宏が逮捕された。1審では証拠不十分で全員が無罪とされたが、2審では無罪判決を破棄して審理を地裁に差し戻した。上告審も2審判決を支持し、1審に差し戻された。

11月24日(火)被告人・松田真知:銃刀法違反など(控訴審初公判)
<大量の拳銃や実弾を密輸した事件> 06年1月、指定暴力団稲川会系松田組組長、松田真知は幹部の後藤広一らと共謀して拳銃11丁、実弾220発などを密輸したとして逮捕された。1審で無期懲役、罰金400万円(求刑無期懲役、罰金500万円)を言い渡された。

11月25日(水)被告人・寺岡誠吉:殺人
<運送会社役員を殺害した事件> 08年12月、運送会社社長の寺岡誠吉(当時71)は、元暴力団組員に依頼して06年9月に同社役員の栩野雅晴さん(当時66)を殺害させたとして逮捕された。

11月25日(水)被告人・竹田慶介:公然わいせつ(初公判)
<路上で下半身を露出した事件> 09年10月、東京都豊島区の学習塾経営、竹田慶介(当時27)は同年9月に同区内の路上でズボンを降ろして下半身を露出し男子中学生3人に見せたとして逮捕された。

11月25日(水)被告人・小川俊之:爆発物取締罰則違反(控訴審判決)
<皇居に向かって火薬を詰めた消火器を発射した事件> 08年9月、神奈川県相模原市の元陸上自衛隊員の小川俊之(当時34)が、火薬を詰めた消火器を皇居に向けて発射したとして、逮捕された。

11月26日(木)被告人・原田久:威力業務妨害(初公判)
<サラ金の業務を妨害した事件> 09年10月、愛知県岡崎市の無職、原田久(当時38)は、消費者金融「レイク」のコールセンターに約500回電話をかけ、女性オペレーターにひわいな言葉をかけたとして逮捕された。女性の体の一部を表す言葉などをかけて業務を妨害したという。

11月26日(木)被告人・小川美津子、他2人:昏睡(こんすい)強盗と保護責任者遺棄(初公判)
<スナック経営者による昏睡強盗事件> 09年2月、東京都渋谷区のスナック経営、小川美津子(当時73)ら男女4人は、スナックで男性客に酒を飲ませて泥酔させ、キャッシュカードを盗んで路上に放置したなどとして逮捕された。

11月26日(木)被告人・松原弘樹:強盗(初公判)
<自衛隊員による強盗事件> 09年9月、陸上自衛隊第1空挺団(千葉県船橋市)の陸士長松原弘樹(当時21)らは、東京・六本木のビル敷地内で飲食店従業員男性(当時22)を倒し、顔を殴るなどして現金約13万円入りの財布を奪ったとして逮捕された。

11月26日(木)被告人・植本勝也、井福一郎、他1人:児童買春・ポルノ処罰法違反(初公判)
<暴力団員らによる児童ポルノ販売事件> 09年9月、大阪府守口市の指定暴力団山口組系暴力団組長井福一郎(当時61)と大阪市西淀川区の無職植本勝也(当時43)は、インターネットで児童ポルノのDVDを販売したとして逮捕された。

11月27日(金)被告人・波和二:組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)
<L&G詐欺事件> 09年2月、健康寝具販売会社「エル・アンド・ジー」は、組織的に会員から出資金をだまし取ったとして会長の波和二(かずつぎ)(当時75)や幹部を逮捕した。被害者約3万7000人、被害総額約1260億円とみられる。

11月27日(金)被告人・高相祐一:覚せい剤取締法違反(所持、使用)(判決)
<酒井法子の夫の覚せい剤事件> 09年8月、自称プロサーファーで、女優酒井法子の夫、高相祐一(当時41)は、東京都渋谷区の路上で覚せい剤を所持していたとして逮捕された。

11月27日(金)被告人・和田達夫、嘉藤悦男:背任(初公判)
<理化学研究所をめぐる汚職事件> 09年9月、独立行政法人「理化学研究所」(理研、埼玉県和光市)の主任研究員、和田達夫(当時53)は、取引先の理化学器具開発販売会社「秋葉産業」の社長、嘉藤悦男(当時76)から旅行や飲食費などの代金付け回しを受け、その穴埋めに架空発注を行ったとして逮捕された。


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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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