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2008年3月24日

大麻栽培男、今後はまじめに栽培します

 なんと、法廷にカメラを設置することが決定ですよ! これは裁判をテレビで生中継したり、傍聴席が満席の場合に、別室で傍聴可能になったり、と期待してたんだけど、そういう意図ではないようです。もちろん裁判員制度を見越してのカメラ設置で、評議の時に被告人や証人の供述をDVDで再生して確認するためだってさ。

 170の裁判員用法廷すべてに設置するって話だからすごいことです。よく考えると、審理後の評議でDVDを見るんだから、必要な部分だけを編集したり、頭出しできるようにしたり、今までになかった作業が増えるわけだ。いったい誰がやるんだろ。

 ついでに言えば、東京地裁では先週から重罪事件の連日審理が開始したんだけど、法廷での供述を文字に起こすのは誰がやってんだろ。証人や被告人がしゃべったものが翌日必要なこともあるだろうし。連日、誰かが残業してるんでしょうか。外部に委託しているのかもしれないけど、裁判員制度ってホントに大掛かりだ。

taima.jpg

 さて、今回は3月21日に行われた細谷悦喜被告人(23)の裁判傍聴記。罪名は大麻取締法違反。東京都葛飾区の公園で大麻を栽培していた事件です。
 新聞報道によると、細谷は07年5月から10月にかけて、都立水元公園「水辺ゾーン」で大麻5本を栽培。園内に生えているアシの間に大麻草を植えた鉢を隠していた。
 細谷は自宅で大麻を栽培していたなどとしてすでに同法違反の疑いで逮捕、起訴されており、この件で再逮捕された。警視庁亀有署はこれまでに自宅などから大麻370グラムを押収されており、調べに対し、「自宅が手狭になったので公園で栽培した」と供述している。栽培した大麻は乾燥させた上で友人ら10数人に1グラム4000円で売り、約200万円の利益を得ていた。

 事件の前に、再逮捕や追起訴のニュースって“容疑者”と記載されているケースがあるけど、起訴されたら“被告人”じゃないの? 起訴されても、初公判が開かれるまでは“容疑者”なのかな。新聞が間違って報道するはずはないから、認識違いだと思うんだけど、詳しい方は、ニッカンスポーツコムまでメールで教えてください。「訊くは一時の恥、訊かぬは一生の恥」ってことで。(※起訴された案件では被告人ですが、再逮捕された案件では起訴前で容疑者であるため、当該事件を報道する場合は、容疑者と表記するのが一般的です。たとえば窃盗で逮捕された容疑者が起訴されたら被告人と表記されますが、その後、殺人容疑があることが判明して再逮捕された場合、殺人事件に関して報じる場合は、まだ容疑の段階ですから容疑者と表記します=ニッカンスポーツコムから)

 で、事件は変わった内容ですね。自宅で大麻を栽培するのもアウトなのに、公園内で栽培するとは罪意識が鈍麻してたとしか言うほかない。公園を勝手に自分の土地扱いしているし、大麻草丸見えだし。ま、普通の人は見ただけじゃ分からないだろうけど。
 報道された時点で公判が始まっていたのか、傍聴できていません。なので、まずは、3月14日の第2回公判の話から。

 起訴されてるのは2つ。1つは自宅で営利目的の大麻を183グラム・非営利目的の大麻を80グラム所持していた件。もう1つは去年の3月~10月12日まで、水元公園内で発芽した大麻草を自宅の鉢に移植して、栽培したという報じられた件。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は06年の1月から自宅で大麻草を栽培。06年7月、水上公園での栽培を思いつき、計画をノートに書いて、07年3月に実行に移す。そして、07年10月13日に大麻所持で逮捕されるまでの間、172万円の利益をあげたとのこと。
 取調べで、被告人は、「大麻は友人に販売していた。売り上げのお金は遊興費や肥料、機材費に使った」と述べているそうです。
 で、この裁判が非常に面白いのがここから。検察官が押収した大麻の写真をすべて証拠として請求すると、

 裁判長 「で、大麻ですけど、営利目的と非営利目的を検察官が分けたのは? メルクマールというか、基準と言いますか…」
 検察官 「取調べの被告人供述に基づきまして…」
 売り物の大麻か否かは、被告人次第ってことなんでしょうか。すると、弁護人が立ち上がって、
 弁護人 「写真で被告人に確認したところ、営利目的は95・145グラムです」

 とのこと。起訴されている183グラム中の半分は非営利目的という主張ですね。それにしても細かいなぁ。営利目的で懲役10年以下、それ以外は懲役7年以下(だったと思う)だから、弁護人としては、はっきりしたいところなんでしょう。その思いは裁判官も同じのようで、

 裁判官 「じゃ、それは直接被告人に聞きましょう」

 と、急きょ被告人質問です。確かに、大麻の売人を証人に呼ぶわけにもいかないんだろうけど、裁かれている被告人が営利・非営利を決めるって変な話だよなぁ。

 弁護人 「大麻を売り始めた最初のころ、大麻を友人に渡してお金はもらってましたか?」
 被告人 「作り始めのころはもらってません」
 弁護人 「では、なぜ、有料になったんですか?」
 被告人 「自分が一括して栽培して、無料であげてたんですけど“お前だけリスクがあるのに”と友人の方が申し訳ないということで、お金をもらうようになりました」
 弁護人 「一般的なものより高かった?」
 被告人 「普通は1万~7000円くらいなんですが、(自分がもらってたのは)3000~4000円くらいで安かったと思います」

 乾燥大麻自体、一般的じゃない気もするんだけど、安く譲っていたようです。

 弁護人 「ちなみに友人の評価は?」
 被告人 「他のより質がいいと言ってました」
 弁護人 「そう言われて、どう思いました?」
 被告人 「素直に嬉しいと思いました」

 農家の人が、作った物をおいしく食べてる人を見て喜んでる感覚に近いんでしょうかね。そして、重要な営利目的かどうかの選別です。弁護人は写真を示しながら、

 弁護人 「これは営利目的とされてる写真3ですが、どうですか?」
 被告人 「これは花の密集度が高いので、品質が高いというのが分かります」
 弁護人 「では、こちらは? 営利目的とされている写真で、ハンガーにぶら下げられている大麻ですが」
 被告人 「これは花が小さいですし、花の密度が低く、成熟していません」
 弁護人 「営利目的の物ではない、と」
 被告人 「はい。出来がいいとは言えません。反対側が透けるほどの花の密集度ですのでいいものとは言えません」

 と、こんな感じで、この法廷で一番大麻に詳しい被告人が写真を選別です。そして、数十枚の写真の選別が終わって、

 弁護人 「写真53は営利目的ですか?」
 被告人 「これは作った人の特権で、自分で使用しようと思ってたものです」

 営利目的ではないと主張しているものの、売るのがもったいないほどの上物と言っているようにも聞こえます。すると、裁判官が割って入ってきて、

 裁判官 「出来の良し悪しで言えば、(営利・非営利の)どっち?」
 被告人 「…」
 裁判官 「お金を倍積むからと言われたら?」
 被告人 「いや、これは、お金の問題ではないので」
 裁判官 「あぁ、そう…」

 と、苦笑いする裁判官。よほど上質の大麻なんでしょう。
 気がつくと予定の1時間を過ぎていたので、被告人質問は終了。弁護人が、

 弁護人 「あのー、情状証人として被告人のお父さんが傍聴席にいるのですが」
 裁判官 「お父さん! 次回も来てもらえますか。すみませんけど」

 と、テレフォンショッキング的な約束をして、お父さんが「いいとも!」と答え…るわけはないですね。とにかく、この日はこれで閉廷。
 そして、3月21日の第3回公判。まずは、前回の結果から。

 裁判官 「営利と非営利の件ですけど、被告人の話で裁判所は分かりましたので、営利目的の大麻が98・85グラム、と。あと、写真53については評価の問題なので、裁判所で判断させていただきますね」

 と、前回の被告人の分け方がほぼ採用されました。1時間弱質問はしていたけど、あれだけで決まるって、警察・検察の取調べは何をやってたんだろう。
 1週間待たされた父親の証人尋問です。

 弁護人 「本件は新聞やニュースで大きく報道されましたが、親族から何かありました?」
 証人 「連絡ありました」
 弁護人 「近所の方からは何かありました?」
 証人 「気を使ってくれているのか、犬の散歩でも家の前を通らなかったり」

 と、寂しそうな証人。多少の社会的制裁を受けているという主張なんでしょう。

 弁護人 「接見は何回行きました?」
 証人 「30回以上は行っていると思うんですけど」
 弁護人 「今後についてはどんな話をしました?」
 証人 「農家やってますんで、一緒にやっていこうと」

 これからは親子で農業をやるので、しっかし監督していく、と誓って証人尋問は終了です。そして、前回の追加分の被告人質問が行われました。

 弁護人 「取り調べのとき、営利目的の大麻とそうじゃない大麻について話しました?」
 被告人 「話したんですが、あまり聞き入れてもらえず、時間に追われてすべて話すことができず、(調書に)サインしました」

 はっきりと被告人が言わなかったのが悪いのかもしれないけど、取調べに不備があると前回みたいに裁判にしわ寄せが来るんだよなぁ。

 弁護人 「水元公園に警察官と一緒に行ってますよね。人は多かったです?」
 被告人 「土曜で人出は多かったです」
 弁護人 「手錠姿を見られて、どういう気持ちにでした?」
 被告人 「恥ずかしい気持ちになりました」
 弁護人 「あと、保釈を請求しなかったのは?」
 被告人 「保釈で外に出ると、反省して積み上げてきたものが崩れてしまう気がしましたし、親に保釈金を出してもらって迷惑かけてしまうのは申し訳ないと思いましたので」

 十分反省している、とアピールです。そして、最後に、

 弁護人 「社会に戻ってからはどうするつもりですか?」
 被告人 「父の元で農業の手伝いをしたいと思います」

 と、農業をすると約束していました。この後、裁判官が、

 裁判官 「わが国で禁止されている薬物を栽培して売ったわけ。ま、売ったことは起訴されてないけどね。提供したんだから、大麻を吸ったというのより重大なんです。それは、分かってるよね」
 被告人 「はい、分かっております」

 と、事件の重大性を確認して、被告人質問終了。
 検察官は、被告人の部屋は大麻工場のようで、2年間にわたり営利目的で大麻を栽培していたのは悪質として、懲役3年と罰金50万円を求刑しました。これに対し、弁護人は、売り上げから肥料の代金を引くと利益は少なく、長期間拘束されて反省している、と執行猶予を求めていました。

 大麻を栽培した被告人が、今後は農業をやると言っているのがなんとも。もちろん、大麻を育てなきゃ何の問題もないんだけど。友人に大麻の出来がよいことを褒められて、喜びを感じたんだから、農業には向いているのかもしれないな。

※写真は栽培された大麻草(資料写真)

注目の裁判

5月7日(水)被告人・河江浩司:詐欺
<朝鮮総連中央本部に対する詐欺事件> 07年6月、元公安調査庁長官、緒方重威(しげたけ)(当時73)らは、朝鮮総連に架空の売却話を持ちかけ、中央本部の土地・建物をだまし取った。元銀行員の河江浩司(当時42)は資金調達役とされた。

5月7日(水)被告人・後藤祐樹:窃盗、強盗傷害
<元人気歌手による窃盗事件> 07年10月、人気歌手ユニット「EE JUMP」元メンバーの後藤祐樹(当時21)は7月、江戸川区江戸川2丁目の都営住宅建築工事現場から、電気工事用ケーブル数十巻(約100万円相当)を盗んだとして逮捕された。その後、強盗傷害容疑でも逮捕された。後藤は「モーニング娘。」元メンバーの後藤真希さんの弟。00年、ユウキの芸名でソニンとのユニット「EE JUMP」でデビューした。

5月7日(水)被告人・赤坂信之:児童福祉法違反(控訴審初公判)
<芸能関係者を装いわいせつ行為に及んだ事件> 07年9月、東京都荒川区の無職赤坂信之(当時40)は児童福祉法違反容疑で逮捕された。赤坂は芸能関係者を装い、アイドルグループ「KAT-TUN」のメンバーに会わせると言って17歳の女子高生を誘い、わいせつな行為をした。

5月8日(木)被告人・上鈴木広行:昏睡(こんすい)強盗
<昏睡強盗事件> 07年7月、無職上鈴木広行(当時41)らは、東京・歌舞伎町のスナックで男性を酔わせて現金を奪ったとして、逮捕された。上鈴木が女装して客を呼び込み、ほかの者が酒をつくったり、客を装って酒を勧めたりして昏睡状態にさせていた。

5月8日(木)被告人・柿沢秀次:窃盗など
<古美術商宅に盗みに入った事件> 07年3月、美術品鑑定のテレビ番組にも出演している古美術商安河内真美さん(当時52)の自宅マンションに侵入し現金約820万円を盗んだとして、別の強盗事件で起訴されていた無職柿沢秀次(当時39)らが再逮捕された。

5月8日(木)被告人・岡本千鶴子:殺人(控訴審初公判)
<平塚市の5遺体事件> 06年5月、神奈川県平塚市のアパートで、岡本利加香さん(当時19)と異母兄弟の山内峰宏さん、ダンボールの中から3人の幼児の遺体が発見された。母親の岡本千鶴子(当時54)は殺人容疑で逮捕された。発見された幼児の遺体は85年に「息子を誘拐された」などと岡本がテレビなどで訴えていたの息子・利英ちゃんと判明した。岡本は1審で懲役12年の判決を受けた。

5月8日(木)被告人・田所隆:殺人など(控訴審判決)
<暴力団幹部殺害事件> 07年6月、元暴力団組員で会社役員田所隆(当時36)は、仲間と共謀し、元暴力団幹部の佐藤宏明さん(当時44)を手錠をかけて車内に監禁し、畑で首を絞めるなどして殺害した。

5月9日(金)被告人・亀山祥之:薬事法違反(初公判)
<糖尿病やがんに効能があると健康食品を販売した事件> 08年2月、健康食品販売会社「東洋食品興業」の社長亀山祥之(71)らは、糖尿病やがんに効能があるようにうたって健康食品を、医薬品販売業の許可を受けずに販売したとして逮捕された。亀山は「特許取得 薬では治らなかった糖尿病が治った!」との題名の本を出版。ラジオのトーク番組の司会もしていた。

阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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