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2008年3月17日

「死刑になりたくて逃亡しました」って…(笑)

 東京地裁の1階のロビーの中心に大きなシャンデリアがつり下げられているんだけど、これが普段は真っ暗なんです。全く明かりをともさない単なるオブジェ。それが、先週は点灯してたんですよ。これは珍しい! 

 うわさによると、裁判官が退官するときとか、お偉いさんが裁判所に来たときにシャンデリアがつくらしいんだけどね。どうやら、外国から裁判官が来日してた(視察?)らしいです。点灯したシャンデリアは俺も10回くらいしか見たことがないけど、年度末につくことが多いかもしれないですね。見たい方は、この時期毎日通えば遭遇できるかもしれないですね。

 さて、今回は3月11、12日と連日開廷された安西良一被告人の裁判傍聴記。罪名は強盗殺人未遂。
 報道によると2007年11月、警備員・安西良一(当時55)が同僚の男性(当時66)の首をベルトで絞めてズボンから現金3万円を奪い、強盗殺人未遂の疑いで逮捕された事件ですね。逮捕当時は「金を借りたが返済のあてがなく、殺してしまおうと思った」と供述していたそうな。

 金額の問題じゃないんだけど、3万円欲しさに人を殺(あや)めようとはねぇ。不幸中の幸いで、被害者は死に至ってないんだけどさ。
 検察官の冒頭陳述によると、被告人は前科1犯。強盗の罪で服役後、前科を隠して2006年に警備会社に就職する。被害者とはこの会社で知り合い、2007年5月から被害者宅に居候する生活を開始。しかし、被告人は被害者の知人(恋人?)であるタイ人女性と交際するようになり、借金を抱え、被害者の銀行口座から4万5000円を勝手に引き出す。被害者は被害届を出さず、月々分割で返済してもらうことで話はまるく収まった。

 そして、犯行当日の11月9日。週払いの給料を使い果たして、所持金のない被告人は、被害者に返済する金に困り、殺害を決意。 被告人は被害者宅で被害者の帰宅を待ち、17時15分ころ、給料を持って、帰宅した被害者の首をベルトで後方から絞めた。被害者が息をしないのを確認すると、被告人はポケットから1万円札を奪ってタイ人女性と食事に出かける。その日はタイ人女性とホテルに泊まり、小遣いを渡していたとのこと。
 そのころ、首を絞められた被害者は息を吹き返し、事件を友人に伝えていた。

 事件翌日の11月10日。被告人は逃走するお金を得るため、友人の元へお金を借りに行くが、その友人は事件のことを被害者から聞いていたため、警察に逮捕されたというのが事件の流れです。
 本件の前にも、被告人は被害者のお金を勝手に引き出すという迷惑をかけていたんですね。居候までさせてもらっているというのに。さらに、被害者と付き合いがあったタイ人女性とこっそり交際していた、と。

 この裁判は裁判員用の法廷で行われたんだけど、新しく設置されたモニターを使って事件の内容が説明されました。多分、初のモニター使用だったと思うんだけど、検察官は使い慣れている感じでしたね。初公判はこれで閉廷。
 翌日第2回公判。被告人質問です。まずは弁護人から。

 弁護人 「被害者は辛い思いをしていると思ういますが、何が一番つらいと思いますか?」
 被告人 「面倒見ていたのに、裏切られた、というのが」
 弁護人 「そうですよね、もし、逆の立場ならどうですか?」
 被告人 「全く許せないです」
 弁護人 「なぜ、こんなことをしたんですか?」
 被告人 「(給料がなくなり)自暴自棄になって、被害者を殺せば…死刑になるかな…と」

 動機は死刑になりたいからということです。どうやら被告人は犯行の2週間前に体調を崩して仕事を休んでいたらしく、給料が全く入らない状況で、借金の返済もあるし、と自暴自棄になったとのこと。でも、死刑になりたがっているのに、逃走を図ろうとしていたんだよなぁ。それはあとで裁判官に突っ込まれるんだけど。

 弁護人 「謝罪の手紙の中にも“死刑にして欲しい”って書いてありますが、今はどう考えています?」
 被告人 「今も変わらないです」
 弁護人 「どんな判決になるかは分かりませんけど社会復帰して、謝罪する、働きたいとかは考えないんですか?」
 被告人 「20年かかって、社会に戻っても、被害者に何もできないですし」
 どこから20年という数字が。強盗殺人未遂の最高刑は懲役30年なんだけどね。それはさておき、謝罪は何をするかより、何をしようとするかの気持ちが大事だと思うんだけどね。
 弁護人 「被害者は“罪を償って生きていって欲しい”と言っているようなんですが、それでも死刑にして欲しいという気持ちは変わらないの?」
 被告人 「そうです」

 死刑を望む被告人の気持ちにゆるぎがないようです。でも、死刑はありえないんですよね、強盗殺人未遂は。
 この後、「迷惑をかけて申し訳ない」等の反省も弁を述べて、質問終了。
 次は検察官からの質問です。

 検察官 「被害者を狙った理由はなんですか?」
 被告人 「一緒に住んでたのと給料がもらえる日が分かっていたので」
 検察官 「高齢で抵抗されないだろうと思ったことはないですか?」
 被告人 「それはないです」
 検察官 「動機は死刑になりたいからなんですか? それはあまりにひどくないですか?」
 被告人 「…最終的にはそうなります」
 検察官 「死にたいのであれば、あなたが死ねばいいのであって、殺すことはないでしょう!」

 もう質問じゃなく、感情的に怒っています。よりによって、居候させてもらって、お金を勝手に引き出されても警察に言わなかった、人の良すぎる被害者を殺そうとしたわけだから、検察官が立腹するのはわかるけど。

 検察官 「殺害して捕まるのが目的なのに、お金を奪ったのはなぜですか?」
 被告人 「それは仕事を休んで、給料がなく、お金がなかったので盗っちゃいました」
 検察官 「取り調べの時に“コンビニ強盗も考えたが、すぐに捕まるだろうからやめた”と言ってませんか? お金が目当てじゃないですか?」
 被告人 「それは(体を壊して仕事ができなくなって)お金がなくなってきたときの心境です」

 いずれにせよ、そんなことを企んでたようです。この後は、弁護人同様、反省の言葉を述べさせて質問終了。
 最後は裁判長から。

 裁判長 「お金を奪ったのはなぜですか?」
 被告人 「(タイ人)女性と会う予定がありましたし、これで最後だなと思っていましたので」
 裁判長 「でも、動機はお金のためではないんですよね」
 被告人 「相手が死んで自分が死刑になれば、と。それなら女性と会うのも最後かな、と」

 そして、俺も抱いた単純な疑問を裁判長が聞きます。

 裁判長 「死刑になりたい気持ちと、逃亡しようという気持ちはどういう関係なんですか?」
 被告人 「あの、逃げれば(刑罰が)重くなるだろう、と」

 その考えはないでしょ。自暴自棄になって死刑を望んで、これだけの犯行に及んだというのは話としてつながるけど、さらに重い刑罰を受けるために、逃亡したって言われてもねぇ。単純に捕まりたくないだけのような気が。となると、死刑を望んでいるのも反省心をアピールするための詭弁か? 裁判長も納得いかないのか、さらに質問です。

 裁判長 「死にたいのなら自殺する方法もあると思いますが」
 被告人 「いろいろ考えたんですが、できなかったんです」
 裁判長 「それは自殺より人を殺すほうが簡単ってことなんですか?」
 被告人 「死刑になればいいな、としか頭になくて」

 自殺の是非はさておき、自分の人生を締めくくりとして、なんで他人をまきこまなくちゃいけないのよ。

 裁判長 「今、死にたい気持ちはあるんですか?」
 被告人 「はい」
 裁判長 「どうしてですか?」
 被告人 「こういうことを考える人間はだめですね。やらないって言っても、またやるかもしれませんし」
 裁判長 「考え方を変えようとは?」
 被告人 「それは弁護人にも言われたんですが、刑務所で反省してって。ん~~、ちょっとできないですね」

 自分が悪い考えを持っていることを冷静に受けとめてはいるんだけど、それを治そうとは考えられないようです。裁判長がしつこく質問してたけど、被告人の決意は変わらず、質問終了。
 そして、検察官からの求刑です。求刑、懲役20年。被告人が希望する刑から考えるとかなり軽い刑ですね。
 判決は出てないけど、現在55歳の被告人は出所して、社会復帰できるチャンスがわるわけだ。どんな考えをもって戻ってくるか。変わってもらわないと困るんだけどさ。

注目の裁判

5月12日(月)被告人・武藤勇貴:殺人等
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5月12日(月)被告人・矢飼清正 上崎史登:準強制わいせつ(初公判)
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5月15日(木)被告人・渡辺ノリ子(控訴審判決):放火など
<ドン・キホーテに放火した事件> 04年12月、無職渡辺ノリ子(当時47)はさいたま市のドン・キホーテなどの量販店に連続して放火、男女3人を死亡させた。1審では無期懲役の判決を受けた。

5月15日(木)被告人・秋山勝彦:監禁等
<テレビ番組の取材を装った監禁、強盗事件> 04年8月、香川県の観光牧場の支配人を、テレビ局の取材と称して呼び出し、監禁して現金を奪ったとして、秋山勝彦ら4人が逮捕された。支配人は7月上旬に在京テレビ局の番組に出演していた。4人は支配人をワゴン車に閉じ込め監禁。車内で殴るなどして「500万円用意しろ」と脅しキャッシュカードなどを奪った。

5月16日(金)被告人・黒岩勇:旅券法違反
<エビ養殖投資をめぐる詐欺容疑とパスポート偽造事件> 08年1月、投資会社「ワールドオーシャンファーム」会長の黒岩勇(当時58)は他人名義の偽造パスポートを使用したとして、旅券法違反などの疑いで警視庁生活経済課に逮捕された。  同社は「フィリピンでのエビ養殖に投資すれば1年で倍になる」と宣伝し、約4万人から約600億円を集めたとされ、詐欺容疑で家宅捜索を受けた。黒岩がパスポートを申請したのは07年春で、事業の破綻を見越して計画的に海外逃亡したとみられている。

5月16日(金)被告人・二瓶絵夢:詐欺未遂、有印私文書偽造・同行使
<ジャーナリストらによる詐欺事件> 07年9月、フリージャーナリスト二瓶絵夢容疑者(当時31)元衆院議員秘書で広告会社社長市川和久容疑者(当時45)らは東京・表参道の不動産に関して、架空の売却話を持ち掛け内金名目で11億円をだまし取ろうとしたとして、東京地検特捜部に逮捕された。二瓶は自民党の有力議員のインタビュー記事などを雑誌に執筆するなど活躍し、北朝鮮との交渉に同行するなどしていた。

5月16日(金)被告人・伊沢光二 小河喜信:著作権法違反
<ジャニーズ所属アイドルのDVDを無断販売した事件> 08年2月、小河喜信(当時53)と伊沢光二(当時40)は、ジャニーズ事務所の堂本光一氏主演ミュージカルを無断で録画したDVDをJR有楽町駅近くの路上で販売したとして、逮捕された。

5月16日(金)被告人・小林洋子(判決):詐欺
<手話を使っての詐欺事件> 07年2月、福祉機器販売会社のコニーワイズ(東京都港区)小林洋子社長(当時55)経理担当の町田栄子(56)長男の町田訓清(当時28)が警視庁と山梨県警の合同捜査本部に詐欺容疑で逮捕された。3人は05年に聴覚障害を持つ男性(53)に、手話を使って「私にお金を預ければいい。必ず返すから安心してほしい」と現金2300万円を預けさせ、だまし取った。被害者は約270人、被害総額は27億円にも上る。

5月16日(金)被告人・渡辺和三:公務員職権乱用(初公判)
<警察官が無料でマッサージをさせた事件> 08年3月、警視庁蔵前署刑事生活安全組織犯罪対策課の渡辺和三(当時57)は、交際目的でマッサージ店を経営する30代の女性に携帯電話の番号などを申告させ、無料でマッサージをさせ逮捕された。

阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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