2008年2月18日
死刑確定の現場、最高裁の判決公判に行きました
先週は、韓国で「国民参与裁判制度」がスタートしました。来年、日本で始まる裁判員制度とは違う(というか日本が独特すぎ)陪審員制度なんだけど、一般の人が参加するという意味では同じ。興味津々です。
で、ニュースによると、陪審員12人を選ぶために230人を呼び出したらしい。実際集まったのは、裁判所の予想を大きく上回る87人だったとのこと。“予想を大きく上回る”にも関わらず、4割程度しか集まってないのよね。
気になったのは、このあとの記述。“理由なく欠席したとして、90人が罰金の対象”になったらしい。事前に53人は欠席が認められたけど、90人はドタキャンだったってことですね。それなのに“予想を大きく上回る”ですよ。何人が集まると予想していたんだろう。
日本の裁判員制度の場合は、正当な理由なく面接の呼び出しに出頭しなかった場合は、10万円以下の過料。裁判員に選ばれたあとの時間的拘束、判決を下す重責、守秘義務を破った際の6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金といった規則を考えると、韓国同様、ドタキャンする人は多いだろうなぁ。先に過料を払って、裁判員になりたくないってのも選択肢のひとつではあるんだろうけどね。でも、みんながそんなことしていたら制度が成り立たないし。ま、難しいとこですね。
さて、今回は2月15日(金)に最高裁判所で行われた林泰男被告人の判決公判の話。個人的には、最高裁の庁舎見学を除くと初の傍聴なので、傍聴記というより最高裁潜入ルポですね。ちょっと特別編。
罪名は、殺人・殺人未遂・殺人幇助・殺人未遂幇助。起訴されているのは、俗に言う松本サリン事件、新宿駅青酸ガス事件、地下鉄サリン事件の3つ。被告人は犯行時、オウム真理教の科学技術省次官で、地下鉄サリン事件では、被告人が他の実行犯より多く、サリン入りの袋を散布した事もあり、マスコミでは“殺人マシーン”と呼ばれた。
オウム関連の事件は他にもたくさんあるんだけど、林泰男被告人に関しては、この3つです。特に地下鉄サリン事件は、戦後の事件史で最大級にして最悪の無差別殺人とも言われています。
個人的には事件が起きた95年3月20日は専門学校の卒業式が虎ノ門で行われるため、午前9時過ぎには営団地下鉄(現東京メトロ)に乗車してたんです。ダイヤは大幅に乱れ、ほとんどの人が大遅刻した記憶があります。今から考えると、そんな大事件があったのに、地下鉄が走っていたというのもすごい話だけど。当時はケータイ持ってないし、ワンセグもないし、駅員に聞いても「爆発事件があったらしい」という未確認情報しか入ってこなかったので、家に帰ってからことの重大さを知ったわけです。そういう個人的な経験からも印象深い事件なのです。
で、08年2月15日の話。12時55分に先着で傍聴券が配布されるとのことなので、東京地裁での傍聴が終わって、すぐに最高裁へ。
11:50 傍聴券が配られる最高裁の南口に到着。どれくらいの人が並んでいるのか心配していたら1番乗り。
12:55 配布開始。傍聴券43枚に対して並んだのは23人。全員に傍聴券が手渡されました。ちなみに、オレの番号は「い-1」番。
12:56 職員の誘導で階段を上がり3階へ。
12:57 筆記用具以外は法廷に持ち込めないので、所持品をロッカーに入れて、金属探知機のゲートをくぐりました。東京地裁の場合、入り口で持ち物の検査はあるものの、こっちの方が厳重に行っている印象です。
13:01 ほとんどの人が金属探知機をくぐったのを確認すると、傍聴人を引き連れて、大理石の階段を上がり、ロビーに到着。
13:02 年に数回しか使わないのがもったいなく思えるほど立派なロビーを後にして、更に階段で上に行きました。(現在何階にいるのかもわからず)
13:03 じゅうたん式の廊下を歩いて、やっと最高裁の第2小法廷に到着です。
13:05 法廷内はふかふかのじゅうたんが敷かれていて、傍聴席のクッションも厚く豪華なつくりになっています。一番奥には高さ4メートルほどの扉があり、その手前に裁判官の席が5つ。その前に1段低くなった書記官の席。裁判長の席を中心に弧を描くように、左側に弁護人席が5つ、右側に検察官席が5つ、傍聴席に背を向けるかたちで並んでいます。
13:06 書記官が2人入廷して、資料などを机に置いたりし始めました。その間、傍聴人はイスに座って待たされるだけ。空調のブワァーという音しか子消えない静かな法廷。ただただまんじりともせず待つだけ…。
13:14 検察官が1人やってきて、着席です。なんと机の上に六法全書を2つ重ねて置いていました。
13:15 弁護人が1人入ってきて着席。
13:18 廷吏が2人、職員が2人、書類を裁判官の席に置いたり、色々準備をしています。ふと、後ろを振り返ると、TVカメラが6台も並んでました。地裁・高裁の場合は代表で1台のカメラが撮影するんだけど、最高裁はNHKからテレビ東京まで(東京地域のチャンネル番号順)すべてのテレビ局が来ているようです。
13:20 職員が傍聴人の前にやってきて一礼。これからの説明が始まりました。
職員 「傍聴の方になんですが、正面の扉が開き、裁判官が入廷した時、そして退廷する時は起立と礼をするようお願いします。えー、撮影する方にお願いします。正面の扉が開いたら撮影を開始してください。2分後に撮影終了の合図を出しますので、撮影を止めてください」
とのこと。最高裁独自のルールがあるようです。とにもかくにも、正面の大きな扉が法廷内にいる人の動きのカギを握っているわけです。
13:26 空調のブワァー以外、何のお供しない静寂の中、廷吏が大きな声で
廷吏 「まもなく開廷します!」
と言って退廷。
13:28 ついに扉が開き案下。その奥から裁判官が4人(席は5つあるのだが…)入廷。傍聴人は起立して、一礼。
13:30 「撮影を終了してください」という職員の一声でTVカメラ撤収。全員片付けが終わり、法廷を出ていくのを確認すると、
職員 「カメラマンは全員退廷しました」
と裁判長に報告。
13:31 あらためて静かになったところで
裁判長 「それでは開廷します」
という一言でやっと始まりました。裁判長は「法治国家に対する挑戦し、組織的計画的に行われた無差別殺人」「教団に対する強制捜査を阻止するため、不特定多数を無差別に殺害するテロ行為を企てた」「被告人がサリンを散布した路線だけで死者8人という惨劇を招いており、死刑はやむを得ない」など、最高裁としての判断を淡々と読み上げて、最後に
裁判長 「本件、上告を棄却する。…それでは閉廷します」
と言って終了。
13:33 大きな扉が開き、4人の裁判官が吸い込まれるように退廷すると、また扉が閉じました。
公判自体は、たったの3分弱で終わり。法廷で待たされた時間の方が長いなんて…。
林泰男被告の1審初公判は97年だから、最高裁の判決まで10年かかったわけだ。時間かかりすぎだよなぁ。死刑という原状回復が不能な究極の刑罰を決定するのだから仕方がない部分もあるのかもしれないけど、突然の悲劇に見舞われた被害者やそのご家族、遺族の方々にとっての10年はあまりに長く、重すぎるように感じるよ。10年かけて最後は3分弱だと思うと、なおさらだよね。
注目の裁判
6月30日(月)被告人・緒形直子:放火、住居侵入
<エホバの証人の施設に対する放火事件> 07年6月、無職緒形直子(当時46)は東京都杉並区にある宗教団体「エホバの証人」の施設に放火したため逮捕された。緒形は信者だったが、同じ信者だった夫が除名されたことに憤慨し犯行に及んだと供述した。
6月30日(月)被告人・佐藤義孝:殺人(判決)
<81歳の妻を殺害した事件> 07年11月、無職佐藤義孝(当時78)は、妻の小夜子さん(81)を自宅で首を絞めて殺害した。調べに対して、妻が老人ホームに1人だけで入る手続きをしていたのに腹を立て殺害したと供述した。
6月30日(月)被告人・山本俊孝(控訴審判決):殺人
<フィリピンでの不動産会社社員殺害事件> 05年7月、不動産会社社長の吉井誠(当時49)山本俊孝(当時53)らは保険金目的で、フィリピンで男性社員(当時41)を射殺した。共犯の元社員は1審で懲役23年、22年を言い渡されている。
7月1日(火)被告人・矢飼清正(判決):準強制わいせつ
<大手広告代理店社員によるわいせつ事件> 08年3月、大手広告代理店博報堂の社員矢飼清正(当時41)と、上崎史登(当時24)は、前年12月に港区の高級ホテル客室内で女性に睡眠薬を混入したワインを飲ませ、わいせつな行為に及んだとして逮捕された。
7月1日(火)被告人・滝井啓有:脅迫(初公判)
<サイバーエージェント社長脅迫事件> 08年1月、無職、滝井啓有(当時32)はインターネット広告大手「サイバーエージェント」の株価下落で損をしたことに腹を立て、自宅パソコンで藤田晋社長(当時34)のブログに「お前、殺していいですか」「藤田社長を射殺します」「本気です」などと書き込みし脅迫した。した疑い藤田晋社長(当時34)を脅迫し、逮捕された。
7月1日(火)被告人・板垣宏、十亀弘史、須賀武敏:爆発物取締罰則違反
<迎賓館などにロケット弾が発射された事件> 1986年に迎賓館などにロケット弾が発射したとして、中核派の須賀武敏、十亀弘史、板垣宏が逮捕された。1審では証拠不十分で全員が無罪とされたが、2審では無罪判決を破棄して審理を地裁に差し戻した。上告審も2審判決を支持し、1審に差し戻された。
7月1日(火)被告人・寺沢善博(控訴審初公判):爆発物取締罰則違反
<自爆テロ未遂事件> 07年6月、元会社員寺沢善博(当時38)は、2005年のロンドン同時自爆テロ事件をヒントに、西武新宿線の朝の通勤ラッシュ時に準急か急行列車内に爆発物を車内に持ち込み、鷺ノ宮-高田馬場間で爆発させて通勤客を巻き添えに自分も死のうと画策して爆発物を準備、爆発物取締罰則違反罪逮捕された。
7月1日(火)被告人・岡本千鶴子:殺人
<平塚市の5遺体事件> 06年5月、神奈川県平塚市のアパートで、岡本利加香さん(当時19)と異母兄弟の山内峰宏さん、ダンボールの中から3人の幼児の遺体が発見された。母親の岡本千鶴子(当時54)は殺人容疑で逮捕された。発見された幼児の遺体は85年に「息子を誘拐された」などと岡本がテレビなどで訴えていたの息子・利英ちゃんと判明した。岡本は1審で懲役12年の判決を受けた。
7月2日(水)被告人・瀬川重雄(判決):業務上過失致死傷
<歌舞伎町雑居ビル火災事件> 01年9月、東京都新宿区歌舞伎町の雑居ビル「明星56ビル」で火災が発生し44人が死亡した。唯一の避難路である屋内階段に大量の荷物を置いたり、店舗の防火戸を閉まらない状態に放置したことなどが被害拡大につながったとして、警視庁新宿署はビル所有会社「久留米興産」の実質的経営者の瀬川重雄らを業務上過失致死傷容疑で逮捕した。
7月2日(水)被告人・坂上好治、熊本徳夫:詐欺
<平成電電事件> 07年3月、経営が破綻したベンチャー系通信会社「平成電電」が集めた資金を詐取した疑いで、元社長、佐藤賢治(当時55)、「平成電電設備」と「平成電電システム」元社長、熊本徳夫(当時54)が詐欺容疑で逮捕された。03年9月から2万人から約490億円を集め、このうち約1万3000人、総額約300億円を運転資金などに流用したとみられる。
7月2日(水)被告人・村田騎士郎:強制わいせつ、住居侵入など
<連続婦女暴行事件> 07年12月、無職、村田騎士郎(当時28)は、女性のあとをつけてマンションに入り住居侵入の現行犯で逮捕、起訴された。その後、コンビニエンスストア前で目をつけた女性のあとをつけ、胸を触った事件で再逮捕されるなど、一連の連続わいせつ事件への関与などが明らかになった。
7月2日(水)被告人・上鈴木広行:昏睡(こんすい)強盗
<昏睡強盗事件> 07年7月、無職上鈴木広行(当時41)らは、東京・歌舞伎町のスナックで男性を酔わせて現金を奪ったとして、逮捕された。上鈴木が女装して客を呼び込み、ほかの者が酒をつくったり、客を装って酒を勧めたりして昏睡状態にさせていた。
7月2日(水)被告人・鎌田雄気(初公判)
<青森に帰郷したくて強盗に及んだ事件> 08年5月、無職鎌田雄気(当時21)は、07年12月に青森に帰郷するために東京品川区のコンビニエンスストアから金を奪ったとして再逮捕された。鎌田は犯行の前日にも別の強盗事件を起こし起訴されていた。
7月3日(木)被告人・板垣宏、十亀弘史、須賀武敏:爆発物取締罰則違反
<迎賓館などにロケット弾が発射された事件> 1986年に迎賓館などにロケット弾が発射したとして、中核派の須賀武敏、十亀弘史、板垣宏が逮捕された。1審では証拠不十分で全員が無罪とされたが、2審では無罪判決を破棄して審理を地裁に差し戻した。上告審も2審判決を支持し、1審に差し戻された。
7月3日(木)被告人・池内楯雄:強盗殺人等
<連続強盗殺人事件> 01年6月、運転手の池内楯雄(当時57)は、たばこ店の経営者(当時77)や、雇い主夫婦を殺害した。
7月3日(木)被告人・高玉皓司(控訴審初公判):偽計業務妨害
<不動産業者に嫌がらせメールを送った事件> 07年11月、自称著述業高玉皓司(当時60)は、不動産管理に関するトラブルから、複数の不動産業者に約320通の嫌がらせのメールを送り付けていたとして偽計業務妨害で逮捕された。
7月4日(金)被告人・秋山収、宮崎元伸、今治友成:業務上横領、有印私文書偽造・同行使
<山田洋行の元専務らの着服事件> 07年11月、航空・防衛分野の専門商社「山田洋行」の元専務の宮崎元伸(当時69)は、同社を退社後に1億円以上を横領、独立後に設立した新会社「日本ミライズ」(東京)の設立・運転資金に流用していたとして逮捕された。
7月4日(金)被告人・岡田康宏:強盗
<ビデオ店を襲って現金を奪った事件> 08年2月、職業不詳の岡田康宏(当時29)は、強盗容疑で逮捕された。07年11月に町田市のビデオ店に侵入し刃物で店員を脅し14万円を奪ったもので、岡田は全身黒ずくめで「右手は素手で包丁を持ち、左手が手袋」という不自然な姿であったため、逮捕につながったという。
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