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2008年2月04日

金がそろうまで謝らない男

 10日(日)と11日(月)に「大川興業のお笑い裁判の歩き方」というライブがあるので、ちょこっと宣伝です。

 2月10日(日)は名古屋の今池ガスホールで18時開演となってます。11日(月)は京都の磔磔で18時開演です。両日共に総裁と阿曽山大噴火が出演します。お暇な方はどうぞ。

 それはさておき、先週は東京地裁に大きな変化が2つもあったんですよ。

 1つ目は裁判員用の法廷にモニターが設置された事。裁判官と裁判員が座るとこに5台。弁護人の席、検察官の席、証言台に1つずつ。証言台に置いてあるモニターには、タッチペンみたいなのがついていたような。さらに弁護人の後ろと、検察官の後ろには大型のワイドテレビが1台ずつ。他にもいろんな機材が用意されてて、電器屋さんのようです。あんな場所で審理されたら、被告人も萎縮するだろうなぁ。

 2つ目は公判開廷予定表が両面印刷になったこと。今までは片面コピーだったんだけど、2月1日から両面ですよ。これが結構見づらい。例の再生紙偽装のせいだと想うんだけど、裁判所にまで影響を及ぼすとはね。世の中はすべてつながってるんですね。

 今回は2月1日に行われた河井敏章被告人(26)の裁判の話。罪名は、窃盗、不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反、電子計算機使用詐欺。事件の内容は、新聞によって記事に違いがあったんだけど、時事通信の記事から事実関係を引用します。

 派遣社員の河井は、インターネットバンキングに不正アクセスし、同僚の口座から23万円をだまし取ったとして、警視庁ハイテク犯罪対策総合センターに再逮捕された。職場で同僚のネットバンキング用カードを盗み、振込捜査をしたもので、逮捕時に「借金で生活に困ってやった」と供述した。

 調べによると、河井は、秋葉原の電器店などで、男性派遣社員(27)が使用する銀行のネットバンキングに不正アクセス。男性の口座から23万円を自分の口座に振り込んだ疑いがもたれている。

 職場にあった同僚のバッグから、カードを盗み、展示用パソコンでカードの裏面に書き込まれていたパスワードを入力してアクセス。自宅の近所の家に無断侵入して、パソコンを操作し、再び振込をしていたという。

 これはありそうでなかなかない事件ですね。盗んだカードでお金をおろすと言うのは事件としてはよくあるんだけど、送金とはねぇ。自分の口座に送金した記録が残っちゃいますからね。さらに、他人の家に侵入して盗みをする事件はあっても、パソコンいじっただけとは珍しい。被害者の方もカードの裏に暗証番号を書いておくなんて。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は去年の8月に被害者が働く電器店に派遣される。9月18日、被告人は被害者が携帯のロックを解除しているを見て「今の4ケタの数字が他のカードの暗証番号と同じかもしれない」と思い、スキを見て、被害者のバッグからカードを盗む。その日のうちに、勤務店1階に置いてあるパソコンを使って、ネットバンキングにアクセス。暗証番号は被告人の予想通りで12万9000円を自分の口座に送金した。

 さらに、翌日。隣人宅に忍び込み、パソコンを使って、またもや不正アクセス。前日と同様の手口で10万円を送金した。これが事件の詳細のようです。

 暗証番号はカードの裏に書いてたんじゃなくて、被害者が4ケタの数字を打って、携帯のロックを解除したのを見たってことですね。被害者もまさかそんなところからばれるとは思っていなかっただろうけど。

 で、なぜお金が必要だったのか。被告人は7月に結婚した妊娠中の妻がいたんです。生活費を妻に渡さなきゃいけないし、借金の返済もあるけど、仕事を始めたばかりで給料が少ない、と。それで犯行に及んだというのが動機のようです。

 そして、被告人質問。まずは、弁護人から。

 弁護人 「被害者が働いている電器店で勤務する前は、おじさんがやっていた金融業の仕事をしてたんですよね」
 被告人 「おじさんの友人がやっていた会社です」
 弁護人 「そこを辞めたのは、奥さんのお父さんが(結婚するなら)“金融業は許さない”と?」
 被告人 「はい、それで辞めました」

 結婚のために仕事を辞め、派遣会社に登録し、新たな1歩を踏み出そうとした矢先の事件だったようです。

 弁護人 「被害者に対して、23万円の弁償はどうするつもりなんですか?」
 被告人 「働いたお金で返そうと考えています」
 弁護人 「今は借金もあって、経済的に無理なんだよね。じゃあ、社会復帰後は仕事はどうするんですか?」
 被告人 「おじさんのところ(金融の会社)へ働きに行きたいと思っています」

 勤労意欲があるのはいいんだけど、金融業に戻ったら、奥さんのお父さんが許さないのでは。

 次は検察官からの質問です。

 検察官 「調書見るとね、おじさんがいろいろと面倒見てくれているようなんだけど、面会には来てくれました?」
 被告人 「2回ほど」
 検察官 「おじさんのとこで働きたいって言ってたけど、おじさんはなんて言ってました?」
 被告人 「自分でやれるところまでやれ、と。それで困ったら来い、と。1から叩きなおしてやるって言ってました」

 おじさんお言うとおり、やれるだけやってからお世話になった方がいい気もするんだけど、いつでもバックアップしてくれるようです。

 そして、動機にも関係してくる奥さんについて。

 検察官 「奥さんと連絡は?」
 被告人 「取ってないです」
 検察官 「お子さんは?」
 被告人 「先週生まれたそうです」
 検察官 「今後奥さんとは?」
 被告人 「離婚しましたので」

 結婚のために仕事を変えて、生活費を入れるための犯行なのに。

 検察官 「でも、犯行時は家族がいるんだからというブレーキはかからなかった?」
 被告人 「そこまで考えられませんでした」
 検察官 「犯行日の前に給料はもらったんでしょ? 給料日はいつだったんですか?」
 被告人 「9月15日です」
 検察官 「いくらでした?」
 被告人 「ほとんど出てないです」
 検察官 「奥さんに今月の給料が少ない事は?」
 被告人 「言えませんでした」

 何日締めの15日払いなのかはわからなけど、働き始めて1カ月くらいで給料が少なく、妻にも言えずに今回の犯行というのが理由のようです。

 検察官 「被害者は勤務先であなたを指導する立場ですよね。そんな人を裏切る形になってどう思ってます?」
 被告人 「申し訳ないです」
 検察官 「詫び状とか出してます?」
 被告人 「出してないです。(謝罪の)言葉だけじゃ伝わらないと思ったんで、ちゃんとお金をそろえてから、と」

 すると、検察官が声を荒らげて、

 検察官 「まず、謝るのが先なんじゃないの?」
 被告人 「はい」

 これに関しては裁判官も気になったようで質問が出ました。

 裁判官 「おじさんは被害弁償を出してはくれないの?」
 被告人 「わからないです」
 裁判官 「言ってないの? 相談しないのは?」
 被告人 「人から借りたお金ではなく、自分で稼いで返そうと思って」

 と、被告人なりの考えを述べていました。

 このあと、検察官が懲役2年を求刑して、閉廷。被告人は働いてお金を返すとは言ってたけど、被害者にとっては借りたお金でも関係ないんだよね。大体、おじさんは金融の仕事をしてるんだから、それこそお金を貸して被害弁償するべきだよなぁ。

 しかも、お金がそろうまで謝罪文を書かないなんて。被害者を第1に考えたら、こんな行動にはならないと思うんだけど。犯行は緻密だけど、社会常識に関しては緻密さのカケラもないような。…それが犯罪に走る原因と言えば原因なのかもしれないね。

注目の裁判

12月1日(月)被告人・坂上好治、熊本徳夫:詐欺
<平成電電事件> 07年3月、経営が破綻したベンチャー系通信会社「平成電電」が集めた資金を詐取した疑いで、元社長、佐藤賢治(当時55)、「平成電電設備」と「平成電電システム」元社長、熊本徳夫(当時54)が詐欺容疑で逮捕された。03年9月から2万人から約490億円を集め、このうち約1万3000人、総額約300億円を運転資金などに流用したとみられる。

12月1日(月)被告人・板垣宏 十亀弘史 須賀武敏:爆発物取締罰則違反
<迎賓館などにロケット弾が発射された事件> 1986年に迎賓館などにロケット弾が発射したとして、中核派の須賀武敏、十亀弘史、板垣宏が逮捕された。1審では証拠不十分で全員が無罪とされたが、2審では無罪判決を破棄して審理を地裁に差し戻した。上告審も2審判決を支持し、1審に差し戻された。

12月2日(火)被告人・岩瀬昭子:殺人(判決)
<アルコール依存症の息子を殺害した事件> 08年7月、東京都葛飾区の無職、岩瀬昭子(当時61)は、うたた寝していた長男の修一さん(当時34)の首にネクタイを巻き付け、絞殺したとして逮捕された。修一さんはアルコール依存症で入退院を繰り返していたが、退院直後に再び酒を飲んでいるのを見て殺害したという。

12月2日(火)被告人・江口義光:銃刀法違反など(判決)
<ボクシング元日本王者による殺人未遂事件> 08年8月、ボクシングの元日本ミドル級王者で俳優の江口義光(当時42)は、飲食店で、同店経営者の男性(当時41)と口論になり、「殺してやる。刺してやる」などと言いながら包丁を突きつけ、顔を手で殴ったりしてけがをさせたとして逮捕された。江口は大和武士の芸名で、映画などにも出演していた。(「ボクサー公判は美人検事が抱きつく迫真の演技」参照)

12月2日(火)被告人・高須邦雄 多賀正義 坂下治男 坂野恒夫:不正競争防止法違反
<ベトナム高官への贈賄事件> 08年8月、大手建設コンサルタント会社「パシフィックコンサルタンツインターナショナル(PCI)」の多賀正義前社長(当時62)、高須邦雄元常務(当時65)などを不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)で逮捕した。多賀らはサイゴン東西ハイウエー建設事業のコンサルタント業務を約31億円で受注し、その際にホーチミン市政府の内部部局で道路建設などを担当する機関幹部らにわいろを渡した。

12月3日(水)被告人・百武拓也:銃刀法違反(所持)、公務執行妨害
<警察官相手に包丁を振り上げた事件> 08年9月、東京新聞上目黒専売店員、百武拓也(当時34)は、自ら勤務する専売店の横の駐輪場で、自転車の前かごに包丁を入れていたところを警察官に職務質問されると、包丁を振り上げて抵抗し逮捕された。調べに対して店長を殺害するつもりだったなどと供述した。

12月3日(水)被告人・大場崇史:準強姦(初公判)
<女性に酒を飲ませ暴行した事件> 08年10月、映画配給会社「ギャガ・コミュニケーションズ」社員、大場崇史(当時28)は、気功サロン経営の杉岡勝人(当時47)とともに準強姦(ごうかん)と同未遂容疑で逮捕された。杉岡の会社事務所内で5人で飲酒した際、大場は都内の20代の女性会社員を酒でめいてい状態にさせた上で暴行した。

12月3日(水)被告人・猿田春代:強盗未遂(初公判)
<65歳女による強盗事件> 08年10月、東京都足立区の無職猿田春代(当時65)は滝野川信用金庫足立支店のたきしんキャッシュコーナー内で団体職員の女性(当時62)に後ろから包丁を突きつけて「金を出せ」と脅迫した。女性の反撃にあい未遂に終わった。猿田は逮捕後に「生活が苦しかった」と犯行に至った理由を供述した。

12月3日(水)被告人・菊地有紗:大麻取締法違反、覚せい剤取締法違反
<元AV女優による大麻所持事件> 08年10月、元AV女優の倖田梨紗(本名・菊地有紗=当時23)は、自宅に大麻を所持していたとして、プロテニス選手の宮尾祥慈(当時27)とともに逮捕された。

12月3、5日(水、金)被告人・古谷弘毅:殺人未遂(初公判)
<兄が弟を刺した事件> 08年5月、東京都渋谷区の無職、古谷弘毅(当時34)は、自宅で弟(当時31)の脇腹と背中を刺し、殺人未遂容疑の現行犯で逮捕された。調べに対して長男は次男から「生活が苦しいので出ていってほしい」と言われて激高して襲い掛かったという。

12月4日(木)被告人・板橋仁:医師法違反(無資格医業教唆)
<リタリン不正処方事件> 07年12月、東京都江戸川区の京成江戸川クリニックによる向精神薬「リタリン」不正処方事件で医師の板橋仁(当時55)は医師法違反(無資格医業教唆)の疑いで逮捕された。院長不在中に従業員に問診などをさせ、事務員らに患者6人の問診やリタリンの処方をさせるなどした。

12月4日(木)被告人・杉岡勝人:準強姦未遂(初公判)
<女性に酒を飲ませ暴行した事件> 08年10月、映画配給会社「ギャガ・コミュニケーションズ」社員、大場崇史(当時28)は、気功サロン経営の杉岡勝人(当時47)とともに準強姦(ごうかん)と同未遂容疑で逮捕された。杉岡の会社事務所内で5人で飲酒した際、大場は都内の20代の女性会社員を酒でめいてい状態にさせた上で暴行した。杉岡は強姦しようとしたが、未遂に終わった。

12月4日(木)被告人・佐藤賢治:詐欺
<平成電電事件> 07年3月、経営が破綻したベンチャー系通信会社「平成電電」が集めた資金を詐取した疑いで、元社長、佐藤賢治(当時55)、「平成電電設備」と「平成電電システム」元社長、熊本徳夫(当時54)が詐欺容疑で逮捕された。03年9月から2万人から約490億円を集め、このうち約1万3000人、総額約300億円を運転資金などに流用したとみられる。

12月4日(木)被告人・北川初子:殺人未遂(判決)
<渋谷の通り魔事件> 08年月、住所不定、無職、北川初子(当時79)は、渋谷駅近くで通行人2人を刺した。調べに対して「所持金もなく、事件を起こせば生活は警察が何とかしてくれると思った」と供述した。(「弁護人困った『刑を軽く』と言えない事情」参照)

12月4日(木)被告人・朝治博:弁護士法違反
<弁護士資格がないのに報酬を得て立ち退き交渉をした事件> 08年3月、大阪市東住吉区の不動産会社「光誉実業」の社長、朝治博(当時59)、共同都心住宅販売の元社長の風間勇二ら10人は、都内のオフィスビルをめぐり、弁護士資格がないのに報酬を得て立ち退き交渉などをしていたために逮捕された。

12月4日(木)被告人・緒方重威 満井忠男:詐欺
<朝鮮総連中央本部に対する詐欺事件> 07年6月、元公安調査庁長官、緒方重威(しげたけ)(当時73)らは、朝鮮総連に架空の売却話を持ちかけ、中央本部の土地・建物をだまし取った。元銀行員の河江浩司(当時42)は資金調達役とされた。

12月4日(木)被告人・渡辺義男:傷害(控訴審判決)
<路上で外国人に刃物で切りつけた事件> 08年3月、東京都豊島区池袋の無職渡辺義男(当時51)は、JR東京駅日本橋口近くのバスターミナル近くの路上で、外国人の男性(当時30)に刃物で切り付け逮捕された。2人は面識がなく、肩が触れたことで口論になった。

12月4日(木)被告人・竹内清実:偽計業務妨害(判決)
<掲示板に殺害予告を書き込んだ事件> 08年9月、東京都中野区のアルバイト事務員、竹内清実(当時36)は、インターネットの掲示板に「池袋でナンパしている男を刺し殺す」と殺害予告を書き込んだとして逮捕された。調べに対して竹内は勤務先が池袋で、「毎日駅で若い女性をナンパしている男を見掛け、イライラしていた」と供述した。

12月4日(木)被告人・中田健:逮捕監禁(初公判)
<女性宅に押し入り監禁した事件> 08年11月、住所、職業不詳の中田健(当時36)は、東京都豊島区のマンションに住む会社員女性(26)の部屋に突然押し入り閉じ込めた容疑で逮捕された。中田はチャイムを鳴らして押し入り、駆けつけた警察官はドアを開けるように説得されたが、応じず、業者を呼んで鍵を開けて入ってきた、警察官に取り押さえられた。


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阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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