2008年2月25日
放火はイライラの無限ループから
3回前に裁判員裁判用の法廷にもモニターが設置されたことを書いたんだけど、写真も公開されてたんですね。ついでに、その法廷に関するお金のことも公表ですよ。新しい機材はすべてリースで、月に9万円くらいらしい。全国170カ所の法廷で同じような設備にするって話だから、すべてが完成する頃には月々1530万円のリース代がかかるんですね。年間で約1億8000万円。裁判員制度を導入することでいろいろと費用はかかるだろうけど、リース代だけでこんな金額が必要になるなんて。
今回は2月12日に行われた明石淳也被告人(23)の初公判の話。罪名は現在建造物等放火・建造物侵入・窃盗・占有離脱物横領。
新聞報道によると、07年3月に東京都練馬区の民家近くの枯れ草などにライターと伝票を使って火をつけ、木造2階建て民家の外壁など約5平方メートルを燃やした事件ですね。焼け跡から、着火の際に使った宅配伝票がみつかり、住所や名前などが記載されていたことから明石が捜査線上に浮上。逮捕後に「借金などでストレスがたまり、火をつけたがすっきりしなかった。後悔している」と供述したと伝えられています。
本人も燃やしたはずの伝票から足がつくと思っていなかっただろうけど、ちょっと変わった犯人の特定の仕方ですね。
報じられてたのは放火の事件なんだけど、裁判では、新聞販売店に侵入してバイクを盗んだ件(建造物侵入・窃盗)、路上に駐輪されていた自転車を持ち去った件(占有離脱物横領)でも起訴されていました。犯罪のデパートですね。
検察官によると、被告人は銀座のお店で板前修業をしていた、と。03年9月に先輩がお店をやめることになり、仕事を任せられることからプレッシャーを感じ始める。そのストレスを発散するため、キャバクラ通いをはじめ、平成17年夏ごろには、借金が180万円になる。06年8月には債務整理をしたが、その一方で路上に落ちているゴミに火をつけて、憂さ晴らしをするようになる。
そして、07年3月29日午前3時過ぎ、落ちていた段ボールを燃やしたが、もっと燃やしたいと考え、目に付いた竹を燃やすため、持っていた宅配伝票に火をつけて、竹の下に火を投げ入れたというのが事件の詳細のようです。
バイクと自転車の盗みについては、駅から自宅まで距離があり、歩くのが面倒で盗んだとのこと。すべての事件が非常に自己中心的な動機なんですね。他人のことをまったく考えてないというか。被告人の父親が証人として出廷して、実家に戻して監督すると約束していました。
そして、被告人質問。まずは弁護人から。
弁護人 「放火について聞きますが、銀座で板前の仕事が終わったのは何時ですか?」
被告人 「午後11時30分ころ…」
弁護人 「(自宅の最寄の)成増に着いたのは?」
被告人 「0時30分頃です」
弁護人 「駅に着いてからの行動を教えて下さい」
被告人 「(行きつけだった)キャバクラの店員とちょっとしゃべったあとに、コンビニで立ち読みをしました。そして、店を出て徒歩で移動しまして、デイリーヤマザキの前にゴミ袋が落ちているのを見つけました。それに火をつけてすっきりしようと思い、焼きトン屋の方へ(行きま…)」
弁護人 「ちょっと待って下さいね。以前から、ゴミに火をつけていたようですが、デイリーヤマザキの前で火をつけないで、焼きトン屋の方に移動したのは何故ですか?」
被告人 「そのゴミだけではすっきりしないのではないかと思い、焼きトン屋さんの前に段ボールがあったので、一緒に燃やしました」
火をつけてストレス解消というのが理解できないんで、より大きなものに火をつけたほうがと言う考えは全く意味が分からないですね。
弁護人 「伝票は最初から燃やすつもりで持っていたんですか?」
被告人 「いえ、実家から届いた米をケータイの(出会い系?)サイトで知り合った女性に送ったのですが、それが一緒に住んでる兄に見つかると困るので、持っていました。それで伝票を燃やそうと思ったときに、竹やぶが見えてきました」
弁護人 「その竹を見て、どうしましたか?」
被告人 「伝票をねじり、火をつけて竹やぶの下に入れました。バレーボールくらいの火になり、それが一気に燃え移って、怖くなって逃げ出してしまいました」
小さなゴミより段ボールを燃やす方がすっきりするという被告人が、民家に隣接する竹が燃えるのを見て、逃げ出す始末。迷惑この上ない話です。
弁護人 「そもそも、なぜ火をつけたんですか?」
被告人 「借金のことや仕事のイライラが募り、火をつけてしまいました」
弁護人 「仕事のイライラとは?」
被告人 「(働いていた店は)仕事のミスをした人よりも、それを依頼した人のほうが悪いという考えがある店で、私はよく失敗をするのですが、なかなか改善できず、迷惑をかけていました。さらに、兄弟子が辞めると聞いて、プレッシャーを感じ、イライラとなっていました」
弁護人 「借金のほうは?」
被告人 「それでキャバクラに行くようになって、多い時で180万円くらいになりました。兄が弁護士に話をしてくれて、債務整理をしたのですが、それでもキャバクラに通って。私は兄を裏切ってまでも、キャバクラに行ってしまって。それが、またイライラになっていました」
最初のうちはストレス解消になってたんだろうけど、キャバクラに行くことがイライラになるとは、まさにストレスの無限ループと言ってもいいかもしれません。
弁護人 「ゴミに火をつけたのは、初めてではないですよね? 以前はどんなものを燃やしてました?」
被告人 「落ちているゴミやマンション前のごみ置き場のゴミなどに火をつけていました」
弁護人 「放火とあなたのイライラに、どんな関係があるんですか?」
被告人 「火をつければストレスがなくなるのではないかと思って」
弁護人 「実際ストレスはなくなりました?」
被告人 「一時的には解消されました。でも、不安感や恐怖感が残りました」
キャバクラ通い同様、ゴミ燃やしもストレスの無限ループです。まさしく、負のスパイラル。この後、「身勝手な自分の性格に問題がある」「2度としません」と反省の弁を述べて質問終了。
次は、検察官からの質問です。その前に裁判長が時計をちらちら見ながら、
裁判長 「検察官は何分くらい質問します?もう5時回ってるんで」
検察官 「あ、10分ほどで」
午後5時で仕事終わりなので、長引かないように裁判長が釘をさしました。
検察官 「どのくらい前から、ゴミに火をつけてたんですか?」
被告人 「3年ほど前からです」
検察官 「平成17年(2005年)から何回くらいやったんです?」
被告人 「10回以上はやっておりました」
検察官 「火をつけて、本当に仕事のストレスとか解消したんですか?」
被告人 「一時的にはすっきりするんですが、不安感が残りました」
検察官 「終わった後は、余計に不安が強くなる?」
被告人 「はい」
ここで検察官が仕事のことを聞きだします。
検察官 「板前は自分で望んでやってました?」
被告人 「はい!」
検察官 「修業は厳しいのかもしれませんけど、頑張ろうとは考えませんでした?」
被告人 「はじめは思ってたんですが、続けていくうちに、仕事の厳しさがわかっていき、追い込まれていきました」
検察官 「火をつけるほど追い込まれたなら、他の仕事を探そうと思いませんでした?」
被告人 「(家族の知人の紹介で働いていたので)家族のことを考えると踏ん切りがつかずにだらだらと」
検察官 「犯罪をするくらいなら、紹介した人も家族も仕事変えてもらった方がよかったんじゃないですか?」
被告人 「…どうしても、…それは考えませんでした…」
ストレスや借金の原因はすべて仕事にあるんだから、仕事をかえればよかったんですよね。誰も被告人に板前を続けるように無理強いはしてないんだし。この後は、被告人に心情などを聞き質問終了。
最後は裁判官からの質問です。と、思ったら、
裁判長 「えー、もう5時回ってますんでね、次回に続行しましょう」
というわけで閉廷。ものすごい長時間質問するつもりだったんでしょうか。ちょっとくらい延長して、被告人質問くらい一気に終わらせてもいいと思うんだけどねぇ。
被告人の犯行は、身勝手、自己中心的であるのは間違いないんだけど、本人の弁を聞いてみると結構他人のことを考えてるんだよね。職場のこと、兄のこと、家族のこと、店を紹介してくれた人のこと。いろいろ気をつかって生活してたはずなのに、放火した後や盗んだ後の被害者のことは考えてないんだよな。
でも、真面目なんだろうな。仕事に対して真面目だったからこそ、悩んだわけでしょ。時間過ぎたから閉廷するくらいのスタンスで働いてても十分だと思うんだけどね。検察官の言うように犯罪の道に走るよりはマシでしょうよ。別に、この裁判長が真面目じゃないって意味じゃないんだけどさ。
注目の裁判
5月12日(月)被告人・武藤勇貴:殺人等
<実妹を殺害した事件> 06年12月、予備校生の武藤勇貴(当時21)は、実妹の亜澄さん(20歳)を殺害、死体をバラバラにした。亜澄さんから「勉強しないので成績が悪い」「夢がない」などとなじられ殺害を決意したと逮捕後に供述した。
5月12日(月)被告人・矢飼清正 上崎史登:準強制わいせつ(初公判)
<大手広告代理店社員によるわいせつ事件> 08年3月、大手広告代理店博報堂の社員矢飼清正(当時41)と、上崎史登(当時24)は、前年12月に港区の高級ホテル客室内で女性に睡眠薬を混入したワインを飲ませ、わいせつな行為に及んだとして逮捕された。
5月12日(月)被告人・後藤祐樹:窃盗、強盗傷害
<元人気歌手による窃盗事件> 07年10月、人気歌手ユニット「EE JUMP」元メンバーの後藤祐樹(当時21)は7月、江戸川区江戸川2丁目の都営住宅建築工事現場から、電気工事用ケーブル数十巻(約100万円相当)を盗んだとして逮捕された。その後、強盗傷害容疑でも逮捕された。後藤は「モーニング娘。」元メンバーの後藤真希さんの弟。00年、ユウキの芸名でソニンとのユニット「EE JUMP」でデビューした。
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<池内ひろ美さんを脅迫した事件> 07年2月、会社員の小林一美(当時45)が、家族問題などに詳しい評論家の池内ひろ美さんを脅迫し、講演を中止させたなどして逮捕、起訴された。小林は06年12月、名古屋市内の文化センターで池内さんが講演することを把握し、同日午前2時頃、自宅のパソコンからインターネット掲示板2ちゃんねるに「一気にかたをつけるには文化センターを血で染めあげることです」などと書き込んで脅迫、講演を中止させた。
5月13日(火)被告人・小嶋重綱:婦女暴行未遂
<偽の警察手帳を使った婦女暴行未遂事件> 08年1月、無職小嶋重綱(当時71)は、友人と話をしていた都内の女子短大生(18)に「たばこを吸っていただろ」などと脅して河川敷に連れ出し「騒いだら殺す」と短大生を乱暴しようとした疑い。
5月13日(火)被告人・友部博文、新井拓:暴行
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5月13日(火)被告人・阿多真也、鷺谷輝行、伊藤玲雄:殺人、傷害致死、死体遺棄など
<架空請求詐欺グループの仲間割れによる殺害事件> 05年6月、架空請求詐欺グループの伊藤玲雄、阿多真也らは、グループを抜けようとした千葉県船橋市の男性ら4人を監禁した上で殺害した。1審判決で伊藤が死刑、残る2人は無期懲役の判決を受けた。
5月14日(水)被告人・宮田克彦、新田こと禹時允(判決):覚せい剤取締法違反
<北朝鮮からの覚せい剤密輸事件> 06年5月、指定暴力団極東会系組長宮田克彦(当時58)と韓国籍の禹時允(当時59)らは、北朝鮮から覚せい剤を密輸したとして、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)容疑で警視庁組織犯罪対策5課に逮捕された。逮捕当時、禹は01年の不審船事件で、北朝鮮工作船から回収された携帯電話の持ち主と報じられた。
5月15日(木)被告人・斎藤隆文 押味利明:贈賄、収賄(初公判)
<国土交通省関東地方整備局東京港湾事務所の贈収賄事件> 08年3月、国土交通省関東地方整備局の東京港湾事務所の元企画調整課長押味利明(当時49)は収賄で、印刷会社「ニッセイエブロ」社員斎藤隆文(当時32)が贈賄で、それぞれ逮捕された。07年4月、押味は広報資料作成などに関してニッセイエブロから随意契約を結べたことの謝礼などの目的で、斎藤から50万円相当のギフトカードを受け取った。
5月15日(木)被告人・栗山龍:強姦致傷、傷害
<AV撮影と称した強制わいせつ傷害> アダルトビデオの撮影と称して、出演女優に薬物を吸わせたうえ、わいせつな行為に及び、全治4カ月の重傷を負わせたとして、ビデオ制作会社バッキービジュアルプランニングの代表・栗山龍ら8人が、強制わいせつ傷害の疑いで04年12月までに逮捕された。それを発端として、次々に明るみに出る“ビデオ撮影”と称した暴行内容。女優の多くは騙されて連れてこられて監禁され、死の一歩手前まで激しい拷問を受けていた。長期入院して車椅子や人工肛門などの重い後遺症を受けた女優も数名。
5月15日(木)被告人・渡辺ノリ子(控訴審判決):放火など
<ドン・キホーテに放火した事件> 04年12月、無職渡辺ノリ子(当時47)はさいたま市のドン・キホーテなどの量販店に連続して放火、男女3人を死亡させた。1審では無期懲役の判決を受けた。
5月15日(木)被告人・秋山勝彦:監禁等
<テレビ番組の取材を装った監禁、強盗事件> 04年8月、香川県の観光牧場の支配人を、テレビ局の取材と称して呼び出し、監禁して現金を奪ったとして、秋山勝彦ら4人が逮捕された。支配人は7月上旬に在京テレビ局の番組に出演していた。4人は支配人をワゴン車に閉じ込め監禁。車内で殴るなどして「500万円用意しろ」と脅しキャッシュカードなどを奪った。
5月16日(金)被告人・黒岩勇:旅券法違反
<エビ養殖投資をめぐる詐欺容疑とパスポート偽造事件> 08年1月、投資会社「ワールドオーシャンファーム」会長の黒岩勇(当時58)は他人名義の偽造パスポートを使用したとして、旅券法違反などの疑いで警視庁生活経済課に逮捕された。
同社は「フィリピンでのエビ養殖に投資すれば1年で倍になる」と宣伝し、約4万人から約600億円を集めたとされ、詐欺容疑で家宅捜索を受けた。黒岩がパスポートを申請したのは07年春で、事業の破綻を見越して計画的に海外逃亡したとみられている。
5月16日(金)被告人・二瓶絵夢:詐欺未遂、有印私文書偽造・同行使
<ジャーナリストらによる詐欺事件> 07年9月、フリージャーナリスト二瓶絵夢容疑者(当時31)元衆院議員秘書で広告会社社長市川和久容疑者(当時45)らは東京・表参道の不動産に関して、架空の売却話を持ち掛け内金名目で11億円をだまし取ろうとしたとして、東京地検特捜部に逮捕された。二瓶は自民党の有力議員のインタビュー記事などを雑誌に執筆するなど活躍し、北朝鮮との交渉に同行するなどしていた。
5月16日(金)被告人・伊沢光二 小河喜信:著作権法違反
<ジャニーズ所属アイドルのDVDを無断販売した事件> 08年2月、小河喜信(当時53)と伊沢光二(当時40)は、ジャニーズ事務所の堂本光一氏主演ミュージカルを無断で録画したDVDをJR有楽町駅近くの路上で販売したとして、逮捕された。
5月16日(金)被告人・小林洋子(判決):詐欺
<手話を使っての詐欺事件> 07年2月、福祉機器販売会社のコニーワイズ(東京都港区)小林洋子社長(当時55)経理担当の町田栄子(56)長男の町田訓清(当時28)が警視庁と山梨県警の合同捜査本部に詐欺容疑で逮捕された。3人は05年に聴覚障害を持つ男性(53)に、手話を使って「私にお金を預ければいい。必ず返すから安心してほしい」と現金2300万円を預けさせ、だまし取った。被害者は約270人、被害総額は27億円にも上る。
5月16日(金)被告人・渡辺和三:公務員職権乱用(初公判)
<警察官が無料でマッサージをさせた事件> 08年3月、警視庁蔵前署刑事生活安全組織犯罪対策課の渡辺和三(当時57)は、交際目的でマッサージ店を経営する30代の女性に携帯電話の番号などを申告させ、無料でマッサージをさせ逮捕された。
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