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2009年6月16日

(番外編)記者たちと赤ちょうちん

1971年夏、熱海の温泉で裕次郎の快気祝いも兼ねて行われたナイロビ会
1971年夏、熱海の温泉で裕次郎の快気祝いも兼ねて行われたナイロビ会

 この夏、1987年(昭62)7月に亡くなった石原裕次郎さんの二十三回忌を迎える。6月1日からスタートした連載「裕次郎とともに」では、裕次郎さんが縁の深い人たちとともに残したエピソードや思い出を紹介しています。番外編となる今回は、海外ロケの同行取材をきっかけに立ち上がった新聞記者との親ぼく会「ナイロビ会」で見せた裕次郎さんの素顔を、元日刊スポーツ文化部記者の吉田一郎さん(76)が語ります。

 裕次郎率いる石原プロは大作「黒部の太陽」の大ヒットで勢いづき、長期間のアフリカロケを敢行する「栄光への5000キロ」の製作に乗り出した。1969年(昭44)4月、同行取材を終えた新聞記者たちは帰路の機内で「石原さんと仕事抜きの飲み会を開こう」と盛り上がった。自由化されたとはいえ、海外渡航だけでも貴重といわれた時代。破格のスケールで行われた撮影の熱気と興奮が冷めなかったのだった。「そんな気持ちをさらっと置き去りにするのは惜しかったんです」(吉田)。帰国後に提案を聞いた裕次郎は「うれしいことを言うね」と喜んだ。こうしてスポーツ紙5社、一般紙3社、芸能ニュース社1社の記者計9人に裕次郎が加わった親ぼく会「ナイロビ会」が誕生した。

 第1回会合は翌70年、吉田の行きつけだった東京・築地の天ぷら店「天六」で開いた。庶民的な店だったが、裕次郎は「こういうところが僕は一番好きなんだ」と喜んだ。ナイロビ会には2つだけ約束事があった。①会費は1人5000円②仕事の話はしない。もちろん裕次郎も例外ではない。当時から財布を持ち歩かなかった裕次郎は、出がけに妻まき子から“お小遣い”として1万円札を渡された。店に着くと、ポケットから折りたたまれた1万円札を取り出し「会費 ! 」と差し出した。おつりの5000円札を受け取ると、その手触りを楽しみながらポケットに収めた。吉田は「そのとき見せた何とも言えないうれしそうな顔が忘れられません」という。

 その後も会場を浅草や銀座、新宿の赤ちょうちんなど毎回変えながらナイロビ会は毎年開かれた。多いときには年3回も行われた。吉田は「バカ話をして歌って飲んで。まるで同窓会のようでした」と振り返る。会の発足から7、8年が過ぎたころだった。「今度はおれの別荘でやろうよ」と裕次郎が言い出した。こうして毎年秋、山中湖畔の別荘で2泊3日を過ごすことが定例となった。全員で米を炊きみそ汁も作る。裕次郎も野菜や漬物を刻み、バーベキューの薪(まき)も一緒に割った。「スターも記者も立場は関係なし。記者が芸能担当を離れて異動しても会社を辞めても、石原さんはお構いなしで楽しんでました。元来友情など成立しない間柄のはずなのに。今思えば不思議な関係でした」。

 大動脈瘤(りゅう)手術後の82年も、裕次郎の呼び掛けで会は東京・赤坂東急ホテルで開かれた。裕次郎は「年を取ったらつえをついて、みんなでナイロビにもう1度行こうよ」と言った。病後で心配しながら集まったメンバーも笑顔につられて「いいね」と笑った。裕次郎が2年後に再び体調を崩したため、これが最後の会となった。

 裕次郎の親友、勝新太郎はナイロビ会について「記者たちとの集まりが、そんなに長続きするなんて、奇跡としか言いようがない」とあきれていたという。裕次郎は記者との交流も型破りだった。(敬称略)【特別取材班】

 ◆吉田一郎(よしだ・いちろう)1932年(昭7)8月4日、神戸市生まれ。55年に日刊スポーツ入社。運動部記者としてバレーボール、卓球などアマチュアスポーツを担当。61年に文化部に異動。映画や放送を担当し、石原裕次郎の番記者も務める。正月紙面として裕次郎と三船敏郎の対談も実現させた。73年に依願退社し、大阪市内で飲食店を開業。店名は裕次郎が名付けた「美酒都牢(ビストロ)」。

 ◆裕次郎と日刊スポーツ 裕次郎は、日刊スポーツが日本初のスポーツ紙として46年(昭21)3月に創刊されると「珍しくてむさぼり読んだ」という。戦後は物資も乏しく、一般紙もページ数は少なかった。創刊当時の日刊スポーツについては「たった1枚だったはず」とのちに振り返っている。学生時代から新聞好きで、スターになっても一般紙もよく読み、スポーツ好きなこともあってスポーツ紙にも目を通した。毎朝起きたら新聞を読むことが「習慣だった」という。


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