2009年9月21日
「十分やりきった」/遼河はるひ
月組の3番手男役スター遼河はるひが次回公演「ラスト プレイ」で退団を決めた。173センチの長身を生かしたダンス、都会的な雰囲気と深い低音で下級生のころから根強い人気を誇っていたが、あこがれの「グレート・ギャツビー」「エリザベート」での熱演で「十分、やりたいことをやり切った」と卒業を決めた。今回はトップスター瀬奈じゅんとの同時退団。注目度の高い公演で遼河も完全燃焼を誓った。

- 月組男役の遼河はるひ(撮影・宮崎幸一)
現在は、退団公演のけいこ真っ最中。卒業の日までのカウントダウンが始まり感傷的な部分もあるかと思ったが、当の本人は意外にあっけらかんとしていた。「自分でも不思議なんですけど“さほど…”なんですよね。逆に普段より平常心でいられるぐらい」。ゆったりとした口調には余裕さえ感じられる。
「ラスト プレイ」はトップスター瀬奈じゅんのサヨナラ公演でもあり、娘役スター城咲あい、羽桜しずくと多くのスターが退団する公演とあって注目度も高い。遼河の役どころは裏社会の一味・ジークムント。「これが最後だから、なんて思わず地にしっかり足を付けて役を作っていきたい」と強調した。
遼河の頭に「退団」の2文字がよぎったのは昨年9月。東京・日生劇場での「グレート・ギャツビー」に出演した直後だったという。同作は91年(平3)、杜けあき、一路真輝らの雪組で上演した「華麗なるギャツビー」を17年ぶりに再演したもので、遼河にとっては学生時代、これを見てタカラヅカを受験しようと決めたあこがれの作品。
この作品で、遼河は一路が演じたヒロインの親せきで、物語のキーマンでもあるニックを好演した。「自分のやりたい芝居ができたって思えたんです。やってる途中からホントに楽しくて楽しくて、もう満足かな」と退団を考えるようになったという。
その後今年5月、ミュージカル大作「エリザベート」で悲劇の皇太子・ルドルフを好演したことで決断した。ルドルフは下級生の青樹泉、明日海りおとのトリプルキャスト。全体練習でルドルフとして参加できるのは3回に1回しかない計算だ。下級生と比べられるプレッシャーもあった。
しかし「それが逆に私にはよかったかも知れません。(けいこ数が)少ないから1回1回を大事にできたし、あそこまで演じられなかったと思う」と胸を張った。トートを演じた瀬奈からは「神懸かり的」と絶賛されるほどのデキで「あの舞台はプレッシャーも緊張も全然なくて。あんなに周囲からの反応が良かったのも初めて。もう十分」。みじんの後悔もなく、潔くタカラヅカを去る決心をしたという。
彼女は以前から自分のことを「相当な負けず嫌い」と分析する。だからなのか厳しいタカラヅカでも辛い思い出はほとんどない。
「私、負けず嫌いの超プラス思考なんです。人に負けるのが嫌いというよりも自分に負けるのが嫌い。だから落ち込むことや、くよくよする自分が悔しいので常に前向き。これからもそうやって生きていくと思う」。
気は早いが退団後のプランを聞いた。自分でも「どうなるんだろう?」と楽しみにしているそう。やりたい事はヤマのようにあるそうで「英語も習いたいし、お芝居も続けたい。いろんな世界を見てみたいから」と芸能界に進むことも示した。
「多分、このままだと脱力感もあんまりないと思う。旅行ぐらいはしたいけど、ほっとするというより、この勢いに乗ってダダダっといきたいですよね」。最後まで笑顔だった遼河。まずはタカラヅカでの“ラスト プレイ”をビシっと決め、次のステージへと突き進む。
◆「ラスト プレイ」 孤児院で育った青年アリステア(瀬奈じゅん)はピアノの英才教育を受け世界的コンテストに参加するまでになったが、重圧から最終選考で演奏中に失神。これがトラウマとなり、以降ピアノに近づくことさえできなくなっていた。ある日、彼が公園で行き倒れたところ、1人の男が青年を救う。
年月が流れ、2人は裏社会で一目置かれる存在になっていた。そんな時、アリステアが車にはねられ記憶を失う…。
☆遼河(りょうが)はるひ 2月2日生まれ、名古屋市出身。椙山女学園高を経て96年「CAN-CAN」で初舞台。月組に配属され01年9月宙組に異動となった。翌年「鳳凰伝」で新人公演初主役。03年「春ふたたび」05年「ル・プティ・ジャルダン」でバウホール公演主役を果たす。06年7月、再び月組に組替えとなり3番手スターとして活躍。4歳から習っていた日舞では「西川栄綾」という名取名を持つ。身長173センチ。愛称「あひ」。
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