2009年5月25日
ロックにキメる!/瀬奈じゅん
ミュージカル大作「エリザベート」が開幕した(6月22日まで)。タカラヅカで7度目の上演となる今回は、月組トップスター瀬奈じゅんが黄泉(よみ)の帝王トートにふんし、宙組からヒロイン凪七瑠海を迎え、ルドルフには3番手男役・遼河はるひら3人の男役スターが日替わりでふんする豪華版。過去に暗殺者ルキーニ、エリザベートで出演してきた瀬奈にとっては3度目で満を持してのトート役で歌はもちろん、キレあるダンスでも魅せファンのため息を誘う。

- トート役の瀬奈じゅんはロック調の激しいダンスも披露(撮影・築山幸雄)
ウエーブがかった腰まであるシルバーのロングヘアに赤いメッシュ、左側は編み込みでアクセントを付けた。これまでの誰とも違う新たなトート。妖(あや)しくセクシーな瀬奈トートが舞台で一際輝いていた。
瀬奈にとっては今回が3度目の「エリザベート」だ。花組時代の02年には暗殺者ルキーニの熱演が話題になった。月組に組替えになった直後の05年、当時のトップスター彩輝直のトートを相手にエリザベートを演じきった。今回は満を持しての主役。だが本人は「満を持して…などとおこがましさは全然なくて、私はこの作品にホントに育てていただいたという思いが強いので、今回もトートという役を通して成長できれば、成長した姿を見ていただければありがたい」。舞台を降りればそこには謙虚な瀬奈の姿があった。
演出家小池修一郎氏たっての願いでカツラに赤色を入れた。「ロックテイストにしたいな、と思ったので編み上げを入れたりいろいろ考えました」。その言葉通り迫力ある歌声と、得意のダンスでキレのあるトートに仕上がった。ルックスはあくまで人間離れして、しかし、「体の中には青い血が流れている(黄泉の帝王の)はずなのに人間的な感情を抱いたトートの姿を出したい」と、エリザベートに恋心を抱き人間のような感情をむき出しにする姿が共感を誘う。
そのエリザベートには宙組から若手男役・凪七瑠海を迎えた。男役、しかも違う組からヒロインを迎えての上演は異例だが、瀬奈はかつての自分にその姿を重ねていた。「けいこ場で彼女を見ていると自分のことを思い出して私まで泣いちゃったこともあったんです。あの時、(トート役だった)彩輝(直)さんが大きな心で見守ってくださったから私も乗り越えられた。私もそうありたい」と若いスターの奮闘に目を細める。
実はけいこに入る直前、物語の舞台、ウィーンを訪れた。約1週間の滞在で同作の作曲家シルベスター・リーバイ宅も訪問。その日は偶然にも瀬奈の誕生日だった。「彼の家ってシェーンブルン宮殿の中にあるんです。そこでフランツとエリザベートも見たであろう中庭を見ながら、私だけにピアノを引いてくれて…。一生忘れられない誕生日になりました」と、まだまだ感動の余韻の中にいるようだ。
思い出深いウィーン滞在を胸にしながら「今回のエリザベートは自分にとっては3度目ですが、私にとっては新たな挑戦。この作品はお客さまの方がよくご存じだし、大いに評論していただきたい」と気を引き締めていた。【土谷美樹】
☆「エリザベート」 1898年、ヨーロッパ随一の美ぼうをうたわれたオーストリア=ハンガリー皇妃・エリザベート(凪七)が暗殺された。舞台はその暗殺犯・ルキーニ(龍真咲)が独房で自殺を図ったところから始まる。死後の世界では犯罪から100年以上たった今もルキーニへの尋問が続いていた。「なぜ彼女を殺したのか」と。ルキーニは「エリザベートが黄泉(よみ)の帝王トートと恋に落ち、彼女自身が死を望んだ」と主張する。
この証言を元にエリザベートと同じ時代を生きた人々が霊廟(れいびょう)からよみがえり、彼女の少女時代から皇帝フランツ(霧矢大夢)との結婚、皇太后ゾフィー(城咲あい)との摩擦、息子ルドルフ(遼河はるひら3人の役替え)の自殺など数奇な運命をつづっていく。
☆瀬奈(せな)じゅん 4月1日生まれ、東京都杉並区出身。東京文化高を経て92年「この恋は雲の涯まで」で初舞台。花組に配属され98年「SPEAKEASY」で新人公演初主役。01年「マノン」でバウホール初主役。04年12月、月組に組替え。前トップ彩輝直の退団を受け05年7月、月組トップスターに。05年「エリザベート」でのタイトルロールに加え02年には「風と共に去りぬ」でスカーレットを好演するなど、女役の大役もこなせるマルチさも魅力。身長168センチ。愛称「あさこ」。
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