2008年4月07日
舞台に出るだけで自分色に染めたい/霧矢大夢
宝塚大劇場で上演中のミュージカル大作「ME AND MY GIRL」(5月5日まで)でヒゲのジョン卿にふんする月組準トップ、霧矢大夢。今や押しも押されもせぬ芝居巧者として自在に舞台を操る彼女の魅力と、苦悩を乗り越えた心の内に迫ります。
霧矢演じるヒゲのジョン卿が下町「ランベス・ウオーク」のリズムに乗って体を揺らし始めると、思わずニンマリ笑ってしまう。貴族階級ながら、下町育ちのビル(瀬奈じゅん)に理解を示す「かわいいおじさん」(霧矢)。どうしても最初はヒゲに目がいってしまうが“人の良さ”がにじみ出ている。本人も「何回かヒゲの役はやってますが、やっぱりしゃべりづらいですね。細心の注意を払いつつ、お芝居しつつ。万が一…なんてことがあったらただのギャグになってしまいますから」と笑わせた。
同作は1987年(昭62)、95年と月組で上演を重ね今回再々演となる名作中の名作。タカラヅカきっての芝居巧者も「再演モノって実はしんどいんです。作品としてできあがってるものなので、いきなりハードルが高い所にあるでしょ? 形としては成り立つんだけど、こっちの魂が行き着いていかない。役者としてはしんどいし、オリジナル作品より時間がかかりましたよ」と振り返った。
今公演は第94期生の初舞台でもあるため、出演者全員が舞台から客席に降りたって歌い踊る「ランベス・ウオーク」が2階席にも“進出”。「けいこ場から人口密度がすごくて『ランベス-』が終わったら“空気薄~!”って感じだった」と人懐っこい大阪弁が彼女らしい。実際、客席との一体感は格別で「演じる側も客席の期待や“楽しもう”っていう空気を感じますからね」とご機嫌だ。
今年で入団15年目。円熟期を迎え、ますます役の幅を広げている。「男役10年」と言われるこの世界。振り返れば、霧矢にとってはその前後が最もしんどい時期だったという。「研9ぐらいの時は『あと1年やのに、私はどうなんやろう?』と思い研11、12になると『10年超えてるのに大丈夫なんかな?』と変に思ったり。組の中でもいい環境を与えていただいてるのに、あやふやで微妙な期間」だったそうだ。病気療養で約2カ月舞台を休んだのもちょうどそのころだ。
しかし、苦境を乗り越えた人間は強い。今や舞台の空気さえも自在に操っているかのようだ。「これからは技術以上に、舞台に出るだけで人を引き付けるか、自分の色に染められるかを追求していきたい」。力強く前を見据えた霧矢。舞台でのジョン卿はすっかり霧矢色だ。【土谷美樹】
☆霧矢大夢(きりや・ひろむ)10月2日生まれ、大阪府岸和田市出身。久米田高を経て94年「火の鳥」で初舞台。花組に配属され96年「ハウ・トゥー・サクシード」(第1部)で新人公演初主役。97年月組へ異動。00年「更に狂はじ」でバウ初主役。入団当初からダンスと歌唱力に定評があったが、近年ではシリアスなものからコミカルな役までこなす演技力も備わり実力派スターとして活躍の場は広い。身長167センチ。愛称「きりやん」。
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