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2007年3月 8日

博物館は楽しい

-ナイトミュージアム(3月17日公開=米)-

 博物館が騒々しいテーマパークの様相となる映画を見ながら、最近本物の博物館からは足が遠のいていることを思い出した。小中学生の頃、だいぶ間をあけて自分の子供がそのくらいの年齢に差し掛かった頃にはけっこう頻繁に訪れたのが、そこを外れると途端に縁遠くなる。動物園、水族館と同様である。

 だからだろうか。博物館のイメージは子供の頃に抱いた、あるいは子供の気持ちになって訪れたときそのままである。高い天井、薄暗い廊下、響く足音、埃の匂い…現実離れしたような、好奇心と恐怖心が入り混じったような、動物の剥製は今にも動き出しそうな―。最近読んだ「八月の博物館」(瀬名秀明著)もそんな心象風景を縦横無尽に広げたものだった。奇想天外な展開を無理なく読みすすめられたのは、作者の筆力はもちろんだが、“博物館”というタイトルが与える印象も大きかったと思う。

 映画はタイトル通り、夜の博物館が舞台である。見学者が帰り、錠が下ろされた後“展示物たち”は活動を開始する。恐竜の骨格が地響きをたて、馬にまたがったセオドア・ルーズベルト大統領の蝋人形が闊歩する。そう、春休みにぴったりのファミリー映画なのである。

 新米の夜警ラリーがこの秘密を知ってしまう。彼は気弱な性格が災いして職を転々としている。離婚した妻の新しい夫はやり手のビジネスマンで、息子も新しいパパになつき始めている。ラリーは息子の気持ちをもう一度自分に向けさせるため夜の博物館に招待するのだが…。

 いまさら近年のSFXの効用は説く必要もないだろうが、恐竜の骨格が生き物のように追いかけてきたり、主人公がジオラマのミニチュア人形に囲まれて“ガリバー旅行記”の図となるシーンには、やはりちょっとした驚きがある。

 ロビン・ウィリアムズ演じるルーズベルト大統領はさすがの貫禄を見せる。が、終盤「私はもともと蝋人形だから」と“一介の存在”であることを明かす。動き出すという意味では同じでも、ミイラから蘇える“本物”のエジプト王子とはパワーが違うのである。この辺の「なるほど」的なルール付けは、ファミリー映画に同行する年配者の楽しみどころにもなる。彼らを動かす“原動力”のナゾも物語の鍵となっている。

 ラリーがわがまま放題の“展示物たち”をしだいにコントロールしていき、息子を招いた夜に起きた大事件を解決することで一人前の男になる成長譚というヒューマンな柱もしっかり建っている。主人公のベン・スティラーはユースケ・サンタマリアにキャラがかぶる。監督は「ピンク・パンサー」(06年)のショーン・レヴィ。

 (このコラムは毎週木曜の更新です)

相原斎(あいはら・ひとし)
 1956年5月27日、東京生まれ。早大卒。1980年入社。
 文化社会部では主に映画を担当。同部デスク、部長、編集局次長を経て現在総務局長。著書に「寅さんは生きている」(朝日ソノラマ)。


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