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2006年12月21日

大統領より大きな仕事

-不都合な真実(07年1月20日公開) -

 「再チャレンジ制度」にはどうも実感がわかないが、この作品には究極の再チャレンジのお手本がある。00年の大統領選で敗れたアル・ゴア元副大統領のその後をつづったドキュメントだ。

 ゴアは劇中で、「打撃だった」と素直に大統領選敗北直後の脱力ぶりを明かす。強がりは言わない。時間を経て、かねてから心に留めていた地球温暖化問題に取り組んでいく。

 立ち直った後の行動力は半端ではない。ユーモアたっぷりの話術を武器にしたスライド講演は全世界で1000回以上を数える。北極はこの40年間に40%縮小し、休息を取る氷塊が無かったためにおぼれ死んだシロクマの話など、エピソードは分かりやすく、飽きさせない。デイビス・グッゲンハイム監督もゴアの講演を見て映画化を思い立ったという。

 確かに気候は少しずつおかしくなっている、気がする。年々四季の区切りが曖昧(あいまい)になっているように思うし、豪雨の集中の仕方も被害も尋常ではない。ニュースで見た竜巻被害も日本とは思えない光景だった。

 雪印、エンロン…。近年不祥事が頻発したこともあって、企業レベルでは、問題から目をそらさず速やかに事実関係を解明し、再発防止策と併せて発表することが好ましい、という認識はあると思う。が、規模が地球レベルとなると話は別だ。主導しなくてはならない政治家にとっては“票”につながらない超長期的な課題である。余分なコストという意識を捨てきれない企業も少なくない。目を背けたくなる不都合な真実なのだ。

 だからこそ、ゴアは決して高邁(こうまい)な考えを押し付けるのではなく、実利面も併せて説得を続ける。環境に配慮した車作りを進めたトヨタが結果的に高収益を上げており、京都議定書に調印していない米国のメーカーが逆に苦戦している事実も指摘する。

 環境問題に関心を抱いた一因が89年の子息の交通事故であったというエピソードも印象的に挿入される。当時6歳の子息が1カ月間生死をさまよった末、回復したときに「息子が将来生きる環境」に思いを巡らせたというのだ。ちょっと出来過ぎだが、環境への衰えない執念と重ね合わせると、納得できる。

 作品には地球環境に目を向けさせる力がある。大統領職への思いは断ち切ったそうだが、ゴアは地球規模で“再チャレンジ”の足跡を残している。

 (このコラムは毎週木曜の更新です)

相原斎(あいはら・ひとし)
 1956年5月27日、東京生まれ。早大卒。1980年入社。
 文化社会部では主に映画を担当。同部デスク、部長、編集局次長を経て現在総務局長。著書に「寅さんは生きている」(朝日ソノラマ)。


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