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2006年12月14日

スノボの奥深さ

-ファースト・ディセント(12月23日公開)-

 現代風のデザインにこだわる設計家(唐沢寿明)と職人かたぎの大工(田中邦衛)が衝突を繰り返し、その末に互いの「腕」を認め合う。三谷幸喜監督の「みんなのいえ」(01年)では、畏敬(いけい)の念がクロスするときの感動が最大のヤマ場になっていた。

 今作では、スノーボードという共通項にくくられながら、登場する6人が微妙に違うそれぞれの立ち位置を認め合う姿が何とも気持ちいい。

 舞台はボーダーの聖地といわれるアラスカ。年齢もキャリアも異なるが、それぞれのやり方でスノーボードを極めてきた6人が集結する。未踏の雪山をファースト・ディセント(初滑走)するためだ。急斜面は滑走不能に見え、雪崩の可能性は常にある。自然のスケールに6人の個性が重なり、このドキュメンタリーには密度の濃い数々のドラマが織り込まれている。

 6人のボーダーは3グループに分けられる。共に五輪金メダリストでアイドル的存在のジョーン・ホワイトとハンナ・テーター。ハンナは唯一の女性でもある。スノーボード先駆者として骨太に生きてきたショーン・ファーマーとニック・ぺラタ。そして最も高度な技術を持つテリエ・ハーコンセンとトラビス・ライス。ノルウェー出身のテリエは国別対抗がスノーボード精神に反するとして五輪出場を拒否、ワイオミングの山中で独自の技を磨いたトラビスは事実上の実力NO・1である。

 アイドル組は“山滑り”が初めてだが、ファーマーらの指導であっという間にコツを習得する。輝く才能があふれ出る感じだ。背景のパウダースノーまでまぶしい気がした。それでも、ハンナは難易度が増す課程で激しく転倒。隠さずに泣いてしまうところがかわらしい。「自尊心がズタズタ」といいながら次のステップを誓う。やがてファーマーも年齢的な限界を自覚していく。

 メンバーがそれぞれの限界点に至る中で、最大の見せ場はやはりテリエとトラビスが作る。トラビスは滑降中に雪崩に巻き込まれるのだが、これを斜滑降で潜るようにして脱出する。サーフィンのチューブのようにいったん姿が見えなくなった彼が雪崩の縁から姿を現したときには、こちらも思わず声がでる。

 テリエは他の5人があきらめた現地のシンボル的な峰からの滑降に挑戦する。絶壁のような急こう配でなおかつ、岩に囲まれ直角滑を余儀なくされる狭い斜面…。見守る他のメンバーは「すげぇ、なんて野郎だ」「歴史に残る滑降だ」と率直に反応する。高レベルの者同士だけが理解する本当の賛辞である。スポーツ映像で一線の仕事をしてきたケビン・ハリソン監督の腰の据わったアングルがそんな胸の高鳴りをじわじわ伝える。

 1時間50分はあっという間だ。

 (このコラムは毎週木曜の更新です)

相原斎(あいはら・ひとし)
 1956年5月27日、東京生まれ。早大卒。1980年入社。
 文化社会部では主に映画を担当。同部デスク、部長、編集局次長を経て現在総務局長。著書に「寅さんは生きている」(朝日ソノラマ)。


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