2006年12月 7日
においたつとは、このことか
-ダニエラという女-
劇中のモニカ・ベルッチを見ながら、しばしばルノアールの裸婦像を思い浮かべた。個々人の好みの問題だが、スーパーモデルに象徴される今風のスリム美女より、このふくよかな感じがいい。誤解のないように付け加えておくならば、ルノアールの絵よりその曲線美は明らかにメリハリが効いている。
ヒロインのダニエラ(ベルッチ)は飾り窓の女だ。そこに宝くじを当てたという平凡な男(ベルナール・カンパン)が訪れる。ダニエラは、金が続く限り一緒に暮らしてほしいという男の願いを受け入れるが、心臓の悪い男にとって彼女は刺激が強すぎた。さらに、ダニエラの男を名乗るギャングの親分(ジュラール・ドバルデュー)も現れて…。
「マレーナ」(00年)以来、「マトリックス」の続編2作(03年)、「スパイ・バウンド」(04年)と出演作はバラエティに富み、ほとばしったり、抑え気味だったりした彼女のフェロモンが今回は文字通り全開である。
においたつとはこのことだろう。どんなに憂いの表情をしても、メラメラと生命力を宿しているような目、自然の美しさを強調した黒髪…。こんな女性が自分の部屋にやってきたら、ちょっと前の藤原紀香付のマンションのCMではないが、劇中の平凡な男の願望にごく自然にこちらの気持ちが重なっていく。
ダニエラはいつの間にかこの男にひかれていくのだが、“サービス”で尽くしていた彼女が彼にひかれるに従って逆によそよそしくなっていく。飾り窓の女に成り切った妖艶な演技から、少しずつ素のベルッチが顔をのぞかせるような印象だ。
監督はフランスのベルトラン・ブリエ。“イタリアの宝”である主演ベルッチに敬意を表する形でイタリアンオペラをふんだんに使っている。女性にとっては彼女が身につけるカルティエ、プラダなどのファッションが見どころになっている。
(このコラムは毎週木曜の更新です)
- 相原斎(あいはら・ひとし)
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1956年5月27日、東京生まれ。早大卒。1980年入社。
文化社会部では主に映画を担当。同部デスク、部長、編集局次長を経て現在総務局長。著書に「寅さんは生きている」(朝日ソノラマ)。