2006年11月 9日
先の読めてしまう人に
-アンノウン、カオス-
長年サスペンスドラマを見続けていると、無意識のうちにパターンが頭の中に刻まれ、たいていの2時間ドラマは展開が読めてしまう。「くりぃむしちゅーのたりらりラーン」(日本テレビ)でおなじみの、次の場面を予測するクイズ「ベタなドラマ」が成立するゆえんである。
予測力にたけてくると、つい次の展開を口にして一緒に観ている人間をしらけさせる。想定外の真犯人に行き着く強引な筋書きには「ルール違反だ」と腹を立てる。ようするにだんだん“嫌な人”になってしまうのだ。
そんな状況に陥っている人にお薦めするのが、「アンノウン」と「カオス」の2本だ。宣伝文句ではないが、どちらも結末は予測不能であり、裏をかかれても腹は立たないくらい仕掛けは巧妙だ。
「アンノウン」は近年の秀作「ソウ」シリーズに似た幕開けだ。廃棄工場で意識を取り戻した5人の男は全員、一時的な記憶喪失に陥っている。どうやら2人が人質、3人が誘拐犯ということらしい。主犯格が戻ってくるタイムリミットまでわずか。自分は“どちら側”なのか、手探りのサバイバルゲームが始まる…。設定が図抜けている。できすぎているがゆえに、記憶喪失の理由に納得しないと、正直入りにくい。が、そこにさえ目をつぶれば、ラストの究極のどんでん返しまで一気に楽しめる。
「カオス」は不可解な銀行強盗事件を皮切りに、頭脳明晰(めいせき)なベテランとルーキーの刑事コンビ、その裏をかき続ける犯人の張り詰めた戦いが描かれる。実は随所にヒントがまぶされているのだが、僕の場合は後から気づいた。こちらも思わず「お見事」と言いたくなる、どんでん返しだ。
前者は「パッション」のキリスト役ジム・カヴィーセル、「恋愛小説家」でオスカー候補になったグレッグ・キニアら個性派キャストにくすぐられる。監督はCM出身のサイモン・ブラントだが、むしろオーソドックスな手法できっちりとサスペンスを盛り上げる。
後者はジェイスン・ステイサム、ウェズリー・スナイプス、ライアン・フィリップと一線級のキャストをそろえ、監督は「Uボート 最後の決断」で、技巧派の印象が強いトニー・ギグリオと、手堅い陣容だ。
どちらも拡大公開されているわけではないが、そろって良質な作品である。
(このコラムは毎週木曜の更新です)
- 相原斎(あいはら・ひとし)
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1956年5月27日、東京生まれ。早大卒。1980年入社。
文化社会部では主に映画を担当。同部デスク、部長、編集局次長を経て現在総務局長。著書に「寅さんは生きている」(朝日ソノラマ)。