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2006年11月 2日

コミックキャラにたえる女優

-虹の女神-

 10月の新ドラマの中で、一番楽しく見ているのが「のだめカンタービレ」(フジ)である。コミックが原作だから、随所に誇張した表現がある。極端にだらしないヒロインは、時に異臭まで放つ。上野樹里だから演じられるという気がする。ほかの女優だったら、演技が文字通りクサくなったり、「本当は美人なのよ」的な意識が透けて見えたりしてしまう、と思う。3年前のNHK朝のテレビ小説「てるてる家族」以来のひいきなのだが、この人は着実に存在感を増している。

 「のだめ―」を始め、オリジナリティーに優れる日本のコミックが映像化される機会が、加速度的に増えている。が、多くが“三”の線を行くヒロインを、実写の世界に映し出せる女優がいるか、といえば多くは浮かばない。

 コミック原作ではないが、新作「虹の女神」はそんな彼女の持ち味を生かしている。大学の映研を主舞台に、ほろ苦い純愛が描かれるのだが、上野演じるヒロインは思いを寄せる青年(市原隼人)に一向に“女”を感じてもらえない。彼の恋愛相談にのるはめにもなる。

 「女」をのぞかせすぎれば、ただ青年が鈍いだけになってしまう。なさすぎれば、見る側にハラハラ感を覚えさせない。その辺のさじ加減に秀でているのだ。男っぽい言い回しを早口に混ぜた今風のセリフも自然に出る。作品に根付いている、というか人物像をきっちりとまとめあげているのだ。

 原案・脚本は桜井亜美、監督は熊沢尚人、岩井俊二がプロデュースにまわっている。純愛ものといえば、「ある愛の詩」(70年)の昔から、ほとんどが「片方の死」を物語のしんにすえている。このジャンル特有の永遠に満たされない“寸止め感”という点で、近作「涙そうそう」より、この作品の方がむずがゆかった。気持ちが伝わってきた、という意味である。

 (このコラムは毎週木曜の更新です)

相原斎(あいはら・ひとし)
 1956年5月27日、東京生まれ。早大卒。1980年入社。
 文化社会部では主に映画を担当。同部デスク、部長、編集局次長を経て現在総務局長。著書に「寅さんは生きている」(朝日ソノラマ)。


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