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2006年10月26日

究極の3色弁当

-ホステル-

 「あの女、タバコ吸ってるぜ」。青年の1人がおぇっという表情をする。もう1人が「ヨーロッパの女は皆、タバコを吸うのさ」と鼻で笑う。序盤、欧州を気ままに旅するバックパッカーの3人組がアムステルダムのディスコでナンパを試みるシーンである。

 “嫌煙先進国”米国の青年ならではの会話だが、異文化の中にあっても自分たちの価値観だけでしかものを見ない、嫌な感じである。ひたすら“女”を求めて移動した東欧の地で、彼らはとんでもないしっぺ返しを食うことになる。これが、監禁と流血の中盤。そして脱出と復讐の終盤へと三転する。

 エロい序盤、スプラッターな中盤、そしてスリリングな終盤と色分けされ、いずれも味付けはきっちりしている。マイペースで周囲を見ない若者が、理不尽な(度を越えているが)仕打ちを受けて成長し、最後は主体的に“帳尻”を合わせるというしっかりとした縦糸も通っていて、見終わった後には不思議な爽快(そうかい)感もある。

 メガホンのイーライ・ロス監督は、インディーズ映画「キャビン・フィーバー」(03年)で、今回製作総指揮を取ったクエンティン・タランティーノらの目をクギ付けにしたといわれる。「ホラーの未来」と賞賛されたその“技”は、今回も全開である。

 被害者の“視界”を有効に使い、フレームの外側に恐怖をにじませるところがうまい。多種多様な刃物が登場する中盤は、しばしば目を閉じたくなり、薄目状態での観賞である。が、その恐怖感が嫌な後味として残らないのはなぜだろう。過ぎたるは…のたとえではないが、突き抜けた描写に思わず笑ってしまうようなところがあるからだろう。

 ジョン・ヘルナンデス、デレク・リチャードソン、エイゾール・グジョンソンの3人組のうち、誰が犠牲になり、生き残るかも終盤まで分からない。特別出演の三池崇史監督がいいところに登場して、いい味を出している。

 (このコラムは毎週木曜の更新です)

相原斎(あいはら・ひとし)
 1956年5月27日、東京生まれ。早大卒。1980年入社。
 文化社会部では主に映画を担当。同部デスク、部長、編集局次長を経て現在総務局長。著書に「寅さんは生きている」(朝日ソノラマ)。


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