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2006年10月12日

2人の女優が見ものだ

-ブラック・ダリア(米=10月14日公開)-

 スカーレット・ヨハンソン(21)とヒラリー・スワンク(32)が競うように好演している。前者は楚々としたイメージに“ギャングの元情婦”という重みを抱えて、艶っぽい。厚く、絵に描いたように形のいい唇に真紅のルージュが映える。「ミリオンダラー・ベイビー」(04年)とは打って変わったスワンクの謎めいた演技は何なのだろう。微妙な目線に虚実の境界線をにじませる。ひき込まれる。

 この2人の女優としての歩みは対照的だ。初舞台はそれぞれ8歳、9歳とほぼ同時期なのだが、その後のキャリアは対極にあると言っていい。初舞台から間もなく映画デビューを果たし、名匠と呼ばれる人たちの手に掛かってすんなりとトップ女優の仲間入りを果たしたヨハンソンに対し、スワンクは回り道を繰り返し、デビューから14年、米国では映画より下のランクと見られるTVシリーズの「ビバリーヒルズ青春白書」でようやく認知される。

 英才型とたたき上げ型なのである。だからだろうか、劇中には10歳以上の年齢差を感じさせない、張り合うような空気がある。年の差関係は逆になるが、宝塚からとんとん拍子でトップに上った黒木瞳とホコ天路上ライブの司会や脇役生活の長かった常盤貴子が向き合った感じ、といったらかえって分かりにくいか。

 映画は40年代のロサンゼルスを舞台に2人の個性派刑事(ジョシュ・ハートネット、アーロン・エッカート)が、惨殺事件の背後にひそむ富豪一族の深い闇に挑む。原作は「L.A.コンフィデンシャル」のジェイムズ・エルロイ、監督ブライアン・デ・パルマの組み合わせはそれだけでワクワクさせ、男のドラマを期待させる。が、今回は女優2人に目を奪われる結果となった。最近では「ファム・ファタール」(02年)が印象的だったが、僕はデ・パルマ作品に登場する“女”にかなり弱い。

 (このコラムは毎週木曜の更新です)

相原斎(あいはら・ひとし)
 1956年5月27日、東京生まれ。早大卒。1980年入社。
 文化社会部では主に映画を担当。同部デスク、部長、編集局次長を経て現在総務局長。著書に「寅さんは生きている」(朝日ソノラマ)。


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