2009年7月05日
30年経ても新鮮手塚ストーリー
「MW-ムウ-」(日)
映画のタイトルを聞いた時、懐かしい響きがあった。78~79年放送のTBS系テレビドラマ「ムー一族」を連想した。伊東四朗と渡辺美佐子が夫婦役のコメディーで、郷ひろみと樹木希林がデュエットした挿入歌「林檎殺人事件」が大ヒットした。30年前の作品だから、劇中の詳細は思い出せない。奇遇だが、この映画の原作も78年には漫画雑誌での連載を終えており、やはり30年前の作品。それでも故手塚治虫氏が描いたストーリーには、現代の社会情勢に合わせたかのような新鮮味があった。
16年前にある島の島民全員が殺され、少年2人が生き残る。片方は神父になり、片方は報復のため、虐殺に関係した人々を殺していく。事件全体に絡んでいるのが、秘密兵器の存在。その隠し場所を知ったり、感づいた一般市民が抹殺される。軍隊の機密事項が人の命よりも優先されるのは、昔も今も変わらないのかもしれない。手塚氏は、大国同士が軍事力の均衡によって平和を保つ現状を見据え、当時タブーとされた描写を大胆に用いた。
タイの街中でのカーチェイス、大量の血しぶき、ビルの屋上からヒモ1本で人間がつるされるシーンなど、衝撃映像の連続。実写化不可能とされてきたが、編集技術の進歩により、手塚氏生誕80周年の今年に映画化が実現した。手に汗を握りつつ、「MW」が何を意味するのか、探ってほしい。上下を逆にしても同じ文字になる「MW」に、手塚氏はさまざまなメッセージを込めている。【柴田寛人】
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