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2009年6月28日

鶴瓶と八千草のシーンがいい

「ディア・ドクター」(日)

 こんなに隅々までキャスト陣や映像がぴったりはまっている作品も珍しい。山あいの小さな村の診療所にいる医師を演じた笑福亭鶴瓶をはじめ、研修医の瑛太、看護師の余貴美子、製薬会社社員役の香川照之ら、巧者がそろった。

 特に、伊野医師役の鶴瓶と1人暮らしのかづ子役の八千草の2人のシーンがいい。食事を一緒に取る場面の、重苦しくはないが会話を探すような雰囲気はとてもリアルだし、具合が悪くなったかづ子が、背中をさする伊野に「ごめんなさい、服が、服が汚れちゃう」と、必死に顔を背けて言う場面に、泣けた。信頼できる医師に出会い、乙女心がよみがえっている、そんな恥じらいと切なさが胸苦しいほどだった。

 鶴瓶は目の動き、ため息1つ…見過ごしてしまいそうなくらい細かな演技をしている。気付いた場面ではこちらが感心のため息をついた。きっとまだ見逃してる場面もあるだろうから、また見たいと思わせる。
 キャストに負けず、風景が本当に美しい。ざあっと風になでられた田んぼ、高台から見る遠雷、夕景、子供たちの川遊びなど、田舎特有のさみしげな雰囲気と夏の明るさが心に残る。

 西川美和監督は、心や見かけがいかにあいまいで本質は見えないか、そもそも本質とは何だということを描いてきた。今作では医療問題を扱い(といっても難解でなく)仕上げた。この原稿を書いている今は、作品を見て2カ月以上たつが、まだ表情や風景、セリフが心に残っている、そんな作品だ。【小林千穂】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)


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