2009年6月14日
ミッキー・ロークの人生と重なり合う
「レスラー」(米)
若い世代の方は、ミッキー・ローク(56)をご存じだろうか。80年代には「世界一のセクシー俳優」と呼ばれ、女性ファンを魅了。でも代表作が続かず、アマチュアの経験を生かして91年にプロボクサー転向。92年6月23日には東京・両国国技館で、ユーリ海老原の世界戦に続くメーンイベントを張った。米国人を相手に1回KO勝ちも「茶番劇」と酷評され、迫力に欠けるストレートは「猫なでパンチ」と呼ばれた。
「ボクサーでは稼げない」と94年から俳優業に復帰。だが、パンチと整形で顔面が崩れ、自殺未遂、妻への暴力、離婚…。スキャンダルにまみれ、仕事場を失った。そんな波瀾(はらん)万丈の人生の後に、当たり役が待っていた。人気レスラーとして頂点を極めたが、その後は転落し、金も家族も名声も失った50代の主人公。心臓発作で倒れ、人生の再出発を目指すストーリーは、ロークの人生と重なり合っていた。
目を覆うほどの流血シーンの連続。隠し持っていたカミソリで自らの額を切り、大型ホチキスや針金で生々しい傷あとを残した。もちろん特殊メークだが、作り手の本気度が伝わってくる。ロークも約3カ月の特訓を重ね、荒技を連発。リングのコーナーから何度も飛び降りた。俳優人生をかけた体当たり演技が評価され、今年2月の米アカデミー賞では、主演男優賞にノミネート。各地の映画祭で主演男優賞として22回も表彰された。作品全体としては54冠。ロークの“労苦”が報われた。【柴田寛人】
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