2009年4月12日
世界的不況の今だからこそ共感
「ニセ札」(日)
ニセ札といえば先月、某体育大陸上部合宿所で偽札が見つかった騒動が記憶に新しい。所持していた部員は「軽い気持ちだった」とのことだが、出来心や好奇心とは次元の違う「ニセ札造り」が描かれている。
お笑い芸人、作家、料理人など多才ぶりを見せる木村祐一の長編初監督作品。07年11月に山上徹二郎プロデューサーに監督就任を依頼され、同プロデューサーが長年温めていた題材が、戦後最大の偽札事件だった。1951年1月、戦後初の新1000円札発行を機に、山梨県内の村で教師や元軍人らが中心になって、1200万円分の偽札を印刷。総勢21人が逮捕された。翌52年5月の判決で主犯に最長15年の懲役刑が言い渡され、事件は終わった。
偽札を造るのは犯罪。当たり前だが、それで片付けられない歴史的背景が、この映画に盛り込まれている。書棚にほとんど本がない小学校の図書館、家庭の事情で進学をあきらめる子供たち。貧困に苦しむ村を救うために、偽札造りの計画が浮上した。戦時中に日本軍が中国経済を混乱させるために、中国紙幣を偽造していたことも、作戦を後押しした。
統括役の戸浦文夫(段田安則)の言葉には説得力があった。「私は偽札を造るつもりはない。これから造ろうとしているものは、あくまでも、本物の紙幣です」。正義感に満ちて明るく偽札造りに励むメンバーたち。貧困から脱しようとするエネルギーは、世界的不況の今だからこそ、共感できるかもしれない。【柴田寛人】
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