2009年3月29日
2人の関係が「&」→「VS.」で魅力も掛け算
「フロスト×ニクソン」(米)
タイトルにある「×」。アンド(&)なのか、バーサス(VS.)なのか、それとも、掛ける、なのか。どう読めばいいのだろうと思ったら、何も発音しないのが正解だそう。
ニクソン元大統領とテレビ司会者フロストとの、インタビューでの攻防。取材にこぎつけるまでの過程や、舞台裏、その後を見ると、確かに2人の間には&もVS.もはさまっていない。親愛の情とも、ライバルとも違う。
始まりは、ウォーターゲート事件で大統領を辞任したばかりのニクソンにインタビューしたい、ということだけが目標だったフロスト。取材できればそれだけで御の字というフロストと、取材を足がかりにしてイメージアップしようというニクソンだったから、2人の間に入れる文字は、やっぱり&くらいだった。
何日かに分けて行い、細かい契約を取り交わして行うインタビューは、言葉のボクシング。ラウンドごとに勝敗がはっきり分かれる。そしてこの時点では、2人の間に、ハラハラさせるVS.が点滅する。
しかし、見終わってみれば、言葉の応酬で高揚した気持ちはどこへやら。敗者のさっぱりしつつ寂しそうな表情、勝者のほろ苦い笑顔を見ると、やっぱり1つの記号では表せない関係と歴史的インタビューだったんだろうなと思う。
歴史への興味と、俳優のぶつかり合い、密室劇おもしろさなど、魅力も倍々に×(掛け)られる作品だ。【小林千穂】
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