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2009年1月04日

目で“殺せる”ホアキン、役者辞めないで!

アンダーカヴァー(米)

 ホアキン・フェニックスが俳優をやめてミュージシャンになると宣言したという。実に、実にもったいない! この人は目がすごく印象的だ。暗くて、寂しそうで、その奥にすごい情熱を持っていそうな目。34歳とは思えない、複雑に色を変える目を持っている。

 「誘う女」では、そそのかされて殺人を犯す危なっかしい高校生を演じ、「グラディエーター」では孤独ゆえに暴虐の限りを尽くす皇帝を演じた。狂気に満ちた役が似合うなと思っていたら、「サイン」で演じた、家族を思いやる誠実な男がとても似合っていたので、ちょっと驚いた。

 どの作品でも思い浮かぶのは目だ。悲しそうな表情をすれば、目がもともと持つ悲しさで、感情が増幅される。ちょっとほほ笑んだだけでも、笑わない人が笑ったというギャップで、幸せな感情が倍加する。

 ホアキンには迷いや揺れ、板挟みという言葉がよく似合う。暗い目が一層、そんな心理状況にパンチをきかせているのだ。当作では、エリート警察官の父と兄に、麻薬捜査協力を依頼されるクラブ支配人という役柄だ。状況設定には目新しさを感じなかったが、ホアキンの目は健在だった。雨の中、前を走る車に、長い銃身が突き出されるのを見た時なんて、恐怖と絶望が入り交じった、すごくいい目をしていた。役者辞めるなんてもったいない、とあらためて感じた1作でした。【小林千穂】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)


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