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2008年9月21日

テーマは死…でもすがすがしい

「おくりびと」(日)

 死をテーマにしているとは思えないほど、すがすがしい作品でした。納棺師を演じた本木雅弘の所作、ピタピタと泣き笑いどころが決まる脚本は、美しくて正確無比。雪に桜に山に川といった山形の四季の美しさも、状況や心情に寄り添っている風です。

 テーマがテーマだけに、気持ちが超低空飛行の時には見たくないかもと思っていました。でも意外なことに、全編通して客席からは笑いが絶えなかった。それに、正確で美しくて納得のいく展開なので、涙だって、悲しくて悲しくて、という涙じゃないんだな。
 食べ物のシーンがあったのも印象的。干し柿、フグの白子、フライドチキン…。よく「生きることは食べること」(その反対?)と聞きますが、一生懸命食べて生きなさい、と言われているようでした。

 今作、モントリオール世界映画祭でグランプリを取ったこともあって、お客さんの入りを確認しようと、再度、劇場で見てみました。込んでいたので前方で端の席へ。途中、そっと横を向くと、ゆるやかに弧を描いている横の1列ほぼ全員の顔が見えました。明るい光に照らされた顔は、全員が食い入るようにスクリーンを見上げていて、微動だにしていません。老若男女、本当に見事な光景でした。いい作品に出会うと、こんな顔になるんだな、と当たり前のことを教えてもらいました。

 エンドロールでは納棺儀式が長回しで見られますから、これも必見です。【小林千穂】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)


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