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2008年8月17日

バットマンから主役奪ったジョーカー

「ダークナイト」(米)

 特効薬を作れば耐性ウイルスが生まれ、人類は再び恐怖に突き落とされる。善と悪も同じ構造だ。05年の前作「バットマン ビギンズ」でダークナイト(闇の騎士)ことバットマン(クリスチャン・ベール)が誕生した反動で、ゴッサム・シティーに究極の悪が舞い降りた。今作の“主人公”ジョーカー。1月に薬物過剰摂取で急死したヒース・レジャーさん(享年28)が演じ、街を破滅に導く。

 主演のベールには気の毒だが、映画は彼の遺作として大いに注目されている。自身の話題は家族への暴行容疑(不起訴)ぐらい。劇中でもジョーカーに翻弄(ほんろう)され、主役を食われたのは仕方ないところか。戦いの中で存在意義を自問させられたバットマンは、ヒーローとは思えない心の弱さをさらけ出す。ジョーカーに舌なめずりされながら毒を吐かれ、黙らせようと殴れば恍惚(こうこつ)の表情を見せられる。愛する女性の生死まで握られ、主人公は防戦一方だ。

 つまり、今作の鍵を握っているのはジョーカー。だからこそ、この演技にレジャーさんは悩み、薬物に依存したとされる。公開後、76年の映画「ネットワーク」のピーター・フィンチ以来2人目となる死後のオスカー受賞も最右翼とされている。評論家らの声の受け止め方は人それぞれだが、スクリーンに焼き付いた最後の演技を見てもらえば感じる。どちらも現実味を帯びている。薬物依存もアカデミー賞も。

 クリストファー・ノーラン監督は「今までと違った作品にしたい」とシリーズで初めてバットマンの名をタイトルから外した。狙い通りの結果が待っていた。【木下淳】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)


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