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2008年6月15日

主役大沢は寅さん、ハマちゃんになれるか

「築地魚河岸三代目」(日)

 独特のトルク音を響かせるターレー(運搬車)が狭い市場を行き交い、魚河岸の職人から怒声が飛ぶ。「どきな、邪魔だよ!」。日刊スポーツはこの築地に本社を構え、市場は目と鼻の先。会社近くの光景にはさすがに親近感を覚えた。

 映画はエリート商社マン赤木旬太郎(大沢たかお)が築地市場の仲卸業者に転身し、成長する姿を描く。会社では冷血役員からリストラの陣頭指揮を任され、恩人の元上司に非情通告。一方、仲卸店「魚辰」では血気盛んな職人と心身をぶつけ合う。このコントラストが築地の人情味を強調させる。旬太郎と恋人の明日香(田中麗奈)には不覚にもウルッとさせられた。長野から東京に戻る列車で旬太郎が見せた涙、秘密を吐露した明日香が流す涙に心を揺り動かされた。

 しかし、2人の見せ場は中盤まで。「魚辰」を支える大黒柱の英二(伊原剛志)が輝きすぎ、終盤は英二の不器用な生きざまに焦点を当てたからだ。さらに、続編を見越した構成だったこともその理由だ。公開前に続編製作が決定し、松竹は「男はつらいよ」「釣りバカ日誌」に続くシリーズ化を目指す。終盤の猛スパートで主役を食った英二に対し、旬太郎がスタートラインに立つまでしか描かれなかった今作は「エピソード・ゼロ」という位置付けが適当だ。

 シリーズ48作の寅さん、19作のハマちゃんに旬太郎は続けるか。撮影中、大沢は自宅に大量の魚を持ち込み、さばき方や味を体で覚えたが、能力の発揮は次までお預け。物語は始まったばかりである。【木下淳】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)


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