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2008年5月11日

怪物より怖い人間の行動

「ミスト」(米)

 えたいの知れない恐怖が、ハリウッドの今の最大テーマと実感できるスリラーだ。恐怖の正体は霧。田舎町を突然深い霧が覆ってしまうのも怖いが、その中にもっと恐ろしい何者かが潜んでいて人間に襲いかかる。一見B級風だが、異常事態に直面した人間のパニック心理と不可解な行動にぐいぐい引かれていく。

 それもそのはず、原作はスリラーの第一人者スティーブン・キング。監督はフランク・ダラボン。このコンビの「ショーシャンクの空に」(94年)「グリーンマイル」(99年)は心温まる“非スリラー”でヒットしたが、3作目はキング本領のスリラーだ。

 霧に包まれた町で、主人公デヴィッドと息子はスーパーマーケットに閉じこめられてしまう。真っ白い闇も不気味だが、そこにシルエットのように映し出されるさまざまな怪物たちもおぞましい。公開中の「クローバーフィールド」はハンディカメラの視点から“恐怖の正体”が徐々に明らかになるが、こちらは霧の中から突然飛び出してきて驚かせる。前半は衝撃的な音で何度もドキッとさせる正統派恐怖映画でもある。

 だが、本当に怖いのは実はそこから。狂信集団を率いた中年女が神を説いて人々の信頼を勝ち得ていき、脱出をもくろむデヴィッドたちの障害になる。神を背負った人間が敵になる皮肉。そして最も恐るべき事態は最後に訪れる。絶望の果てに取った人間の行動。絶望こそが一番怖い…という充実コンビの結論にはうならせられた。【安永五郎】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)


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