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2008年5月04日

単純に「楽しかった」と言わせぬ構成の妙

「相棒-劇場版-」(日)

 00年の土曜ワイド劇場で相棒になってから9年。02年に昇格した連ドラは第6弾を数え、すっかり茶の間になじんだ杉下右京(水谷豊)と亀山薫(寺脇康文)が、銀幕に舞台を移して難解なヤマ(事件)を解決する。頭脳派の右京が爆発シーンに身を委ね、肉体自慢の薫はスタントなしで橋から川に飛び込み、不審なボートと水上バトル! 数年前からドラマと映画の境界線がなくなったと嘆かれているが、映画らしいスケールアップは頼もしい。

 物語はチェスの棋譜に沿って流れるように展開する。何重もの伏線が張られ、犯人にたどり着いたかに見せて、実はその手から真相がすり抜ける。このスリル感がたまらない。いつもなら「この先は?」と自分に置き換えて推理するが、今回は右京に任せっきり。「右京さん!」と指示を仰ぐ薫と同じ気持ちで前のめりになっていた。

 ドラマ版は時事ネタを丹念に盛り込むことで鮮度を保ってきた。今回の劇場版も、ネット犯罪や東京マラソン、数年前に「自己責任」の流行語を生んだ海外の拉致事件を取り入れた。それらが絡み合い、クライマックスで真犯人が動機をぶちまける場面につながると、現実に呼び戻される。いつもは傍観者を決め込むくせに「悪」と断定したら徹底的にたたく現代社会、マスコミ、国家に批判の矛先を向けている。スリリングな展開に目を奪われていたら、実は誰もが持つ「無言の悪意」に気付かされる仕組み。単純に「楽しかった」と言わせない構成が心憎かった。【木下淳】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)

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