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2008年4月20日

M・ケイン36年後は老作家役に“昇格”

「スルース」(米)

 俳優の変化や熟成を見るのはオールドファンには実に興味深い。この映画は登場人物がマイケル・ケインとジュード・ロウのたった2人。老作家と若く魅力的な男のだましあい、先の読めないスリルが楽しい。アンソニー・シェーファーの原作は72年に「探偵スルース」として映画化され、老作家に英国代表の名優ローレンス・オリビエ、若者をケインが演じて、だまされる快感を味わった。名匠ジョセフ・L・マンキウィッツ監督の傑作だった。

 当時、若者だったケインが、今度は老作家として美形のジュード・ロウに脅かされるというのだから、時の流れは残酷というか、俳優の生命は長いというか。前作でオリビエはドシッと腰が据わって貫禄(かんろく)を見せたものだが、アブない青年だったケインは、老いてもどこかアブなさを感じさせるところが頼もしい。

 舞台となる一軒家は、前作の田舎の邸宅からハイテクで装われた豪邸に。青年の職業は美容師から俳優に変わっているが、ストーリーはほぼ同じ。作家の妻と通じているロウが家に乗り込んで「なぜ別れないのか」と迫り、ケインは「ぜいたく好みの妻を満足させることができるのか」と反撃。2人の虚々実々、火花を散らすような会話が深い。名優同士の芸、工夫が凝らされたセリフ、俳優の演技による映画は大人の味わいだ。中盤、2人合作の狂言泥棒から次々と状況が変わり、驚かせ、前作とは異なる予期せぬ結末へとなだれ込む。上出来の会話劇は、36年を経て装いを変えても、やはり上質なサスペンスだった。【安永五郎】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)

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