2008年4月13日
武勇伝排除、英雄の苦悩描く
「モンゴル」(ドイツ=カザフスタン=ロシア=モンゴル)
3週間前に映画担当となったばかり。劇場に足を運んだのは何年ぶりだろうか。しかも、1人で映画館を訪れたのも初めて。でも、記念すべき初挑戦の映画評なので、せっかくならばとアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた世界的作品を選んだ。私事だが「モンゴル系の顔立ち」と言われることも選択理由の1つではあった。
浅野忠信ふんするテムジン(即位前のチンギスハン)がモンゴル帝国の英雄に上り詰める姿を描く。物語の9割以上がテムジン時代の話。即位後、東は中国、西はヨーロッパの地中海に至る世界史上最大の帝国を築いた武勇伝は語らない。描くは、馬に引きずられ、矢で射られて気絶し、愛する妻の強奪まで許した末に奴隷として異国に売り飛ばされる半生だ。テムジンの精神修行が延々と続く。
前日、同じ題材の映画「蒼き狼」のDVDを借りた。より「モンゴル」の観賞がドラマチックになったようだ。日本人キャストが日本語で表現する姿が、全編モンゴル語に挑んだ浅野をよりモンゴルの草原に溶け込ませた。そして、脇役の生きざまにはほとんど触れず、テムジンの苦行のみを徹底的にクローズアップした点に、八方美人的な構成が目立つ邦画とは違った、制作サイドの一貫性を強く感じた。
とはいえ「蒼き狼」のアシストを受けても、他国の歴史への感情移入はなかなか難しい。それだけに、中国内モンゴル自治区で敢行されたロケに単身乗り込んだ、浅野の苦労が伝わってくる。【木下淳】
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