2008年3月30日
旅と恋つなぐ手紙の妙
「マイ・ブルーベリー・ナイツ」(仏=香港)
ブルーベリー・パイにクリームが溶け出すCMにだまされてはいけない。甘いモノがOKな私でも「やり過ぎかな」と一瞬敬遠したくなるが、食べないと分からないのは映画も同じ。意外な甘酸っぱさやサクサクとした心地よい歯ごたえのような展開。一口ずつしっかりかみしめると、思わぬ深い味わいに驚かされた。
物語はシンプル。失恋した女性(ノラ・ジョーンズ)が旅をして、カフェのオーナー(ジュード・ロウ)との恋に踏みだそうとしていく。テーマは「距離」。終始、距離の意味をしみじみと意識させられる。
ニューヨークからメンフィス、ラスベガスと旅していく。女性は旅先で直面する出来事や素直な気持ちをオーナーに送り続ける。距離はどんどん遠ざかるのに、手紙というローテクな手段でオーナーとの距離をどんどん縮めていく。距離を立体的に見せる詩的な演出の数々は、センスとしかいいようがない。
演出は「恋する惑星」「2046」のウォン・カーウァイ監督。香港出身で英語作品は初めて。スタイリッシュな映像と音楽で見せる才能は本作でももちろん、楽しめる。米国の象徴的な街が舞台の今回も、これまで多用してきたアメリカンミュージック。映像、音楽はやはりしっくりくる。感情を主張する今までの音楽も好きだが、物語を補完するような心地よさも悪くなかった。
分かりやすい展開だけに、せっかちな人は旅の途中で寝てしまう危険も。旅は1時間35分と短い。急がず、たまには素直に、センチメンタルな気分に身を委ねるのもいいかもしれない。【近藤由美子】
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