2008年3月23日
不思議な存在感、金城だから出せた説得力
「Sweet Rain 死神の精度」(日)
俳優金城武につかみどころがなく、生きた死神ぶりを楽しみました。金城演じる主人公の死神は、外見は人間そのもの。どこからともなく人間界に現れ、不慮の死を迎えるはずの人間を1週間観察します。「実行」すなわち「そのまま死ぬ」か、「見送り」つまり「死ぬ予定を変更して生きていく」のどちらかを判定します。観察といっても実際は対象者に接触し、心情を探っていきます。このまま死んでしまってもいいのだろうかと。ファンタジーとはいえ、普通に考えたらあり得ないキャラクター。ところが金城が演じると、もしかしたらどこかにいるかも知れないと思わせるから不思議です。
もともと不思議な存在感を持つ俳優です。日本人の父と台湾人の母の間に生まれ、台北では日本人学校とアメリカンスクールで学びました。本格的な映画デビューは香港。日本では連続ドラマで人気を獲得。中国の巨匠とも仕事をして、ハリウッドでも認められました。金城は「一体自分がどこの国の人間か分からなくなることがあります」と冗談をよく言います。その無国籍ぶりが頭に残っていたせいか、この死神役が見ていて実にしっくりとなじむのです。
突然、目の前に現れた不思議な男に、対象者たちは心を開いていきます。みな「何だか面白い人ですね」と変わった雰囲気に引きつけられて。生活感がなく、実体がつかみにくい。つかみどころのない金城の印象そのままが、この展開に説得力を与えているのです。
正体不明の金城にはこれからも、架空のヒーローや特殊キャラをどんどん演じてほしいと思いました。【松田秀彦】
(このコラムの更新は毎週日曜日です)
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