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2008年3月09日

そうだ、インド行こう

「ダージリン急行」(米)

 題名を見た時、ふと「オリエント急行殺人事件」を思い出し、殺人がらみのミステリーかと恥ずかしい勘違いをしてしまった。3兄弟がインドを列車で旅し、心の傷を癒やしていく再生のロードムービー。インドに思い入れはないのに、3兄弟とともに癒やされていく不思議な力に驚いた。

 旅を通して映る映像すべてがダイナミック。すべてを包み込んでくれるようなスケール感が心地よい。

 タージマハルなど壮観な観光名所は出てこない。靴磨きの少年に靴を持ち逃げされたり、幼い兄弟が川に流され死んでいく姿を目の当たりにする。3兄妹の体験を丁寧に描くことで、日常と非日常が入り交じる旅の醍醐味(だいごみ)がリアルに描き出されていた。

 エメラルドグリーンの車掌の征服、オレンジ色やコバルトブルーの列車の内装。あざやかな色彩が映像を彩る。音楽も然り。インド音楽はもちろん、ロックや「オー・シャンゼリゼ」までと幅広い。何でもありに見えるが、長旅で感じる感傷やウキウキ感を絶妙に演出。ダイナミックさだけの大味な映画に終わらない。

 3兄弟の個性が悠久の大地に負けていないから、さらに物語を面白くさせる。仕切りたがりの長男、寡黙な二男、長男にも二男にもいい顔をする要領の良い三男。車内で取っ組み合いのけんかもするが、やはり3人とも似た者同士。兄弟の大げんかが原因で列車を降ろされたのに、結束して石を投げつけるなど、切っても切れない兄弟の特性をうまくちりばめている。

 映画だけでもヒーリング効果が絶大だっただけに、3兄弟同様、次の「傷心旅行」はインドにしよう。と心に決めた。【近藤由美子】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)

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