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夢の舞台を創り続けて90年あまり。時代とともにスターを生み、話題作を手掛けてきた宝塚歌劇団。華やかなステージを作り続ける裏側で夕カラジェンヌは日々、厳しいけいこと競争の中で切磋琢磨を続けている。連載「プレシャス! 宝塚」では、そんな夕カラジェンヌの横顔を伝えます。

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とっつぁんはアメリカン/星条海斗

13年7月18日 [09:07]

 ダイナミックなパフォーマンスが持ち味の月組男役スター星条海斗は、兵庫・宝塚大劇場で上演中の「ミュージカル ルパン」(8月12日まで)で、トップ龍真咲演じるルパンを執拗(しつよう)に追う警部ガニマールにふんしている。前作「ミー・アンド・マイ・ガール」は役がわりでコミカルな弁護士を、前々作「ベルサイユのばら」では熱き衛兵隊士アランを好演。父が米国人で、日米で生活経験があり、実生活が多様なキャラクターの演技に生きている。東京宝塚劇場は8月30日~10月6日。

月組公演「ミュージカル ルパン」への想いを語る星条海斗(撮影・築山幸雄)
月組公演「ミュージカル ルパン」への想いを語る星条海斗(撮影・築山幸雄)

 173センチの長身。アメリカ人を父に持つ異色の国際派男役スター星条は、身長以上に大きく見える。その体を生かしたパフォーマンスは、ダイナミックだ。

 「すごくよく言われるんですけど、ブロードウェーの舞台を見ると、私の100倍大きいですよ!」

 豪快に笑う。星条は東京で育ち、小学1年からアメリカへ渡り、同5年のときに日本へ戻った。「日本語は下手になって、漢字も書けなくなっていた」。中学1年のとき、宝塚の存在を知り、大きな体格を生かす場所を宝塚と決めた。

 「ここ2年ぐらいで自分を出せるようになり、舞台が楽しくなりました。今は周りも、日本も、自分も、お客様も、すべてがいとしい」。今も、市民権はアメリカにあり、帰国すると、米国との違いに戸惑う。

 「自分に意見がないと生きていけない国。アメリカの政治のことも、今はあまり分からないのに、親戚が集まると、あなたはどう思う? って。答えられないと、じゃあ、宝塚歌劇団の歴史は? なんで入ったの? なんで男役なの? と質問攻め。すぐに、自分の意見を言えない人は恥ずかしいという考え方です」

 ただ、日本では過ぎた自己アピールは、調和を乱す。それゆえ「入団10年ぐらいは、フタをかぶされていた状態」と表現する。

 「ずっと宝塚の中で息ができない状態で、思うこともうまく言えなかった。『あの子外国人だから』って言われるのが怖かった」

 完全に殻を破ったきっかけは、昨年6月の「ロミオとジュリエット」だった。ロミオの友人ベンヴォーリオを演じるにあたり、演出の小池修一郎氏から「米国人でもあることを生かせ」と言われたことだ。

 「(外国作品だから)自分から生み出されてくるしぐさ、所作が必要。裏返せばコンプレックスが武器に。タキシード、スーツ、えんび服って外国のものだから、自分が一番似合わなきゃおかしいんだって」

 視界が広がった。「時間はかかったけど、2つの文化を経験していることを武器にしようと」。日本人の謙虚さと米国人の主張、どちらも持ち合わせ、分かることがある。多様な人々の中で育った経験から、多角的に物事を見ることができ、役作りにも生きる。

 「時代背景や育ってきた環境、その国の文化、食生活、宗教、使っている言語は-と掘り下げて、細胞からその役になるようにすると、すごく楽しいですよ」

 星条ならではの役へのアプローチ。舞台での表情も多様化する。今年1月の「ベルサイユのばら」では、荒くれ集団だった衛兵隊士のリーダー・アランが、オスカルに心酔し、隊をまとめていく様を熱演。5月の「ミー・アンド・マイ・ガール」は、パーチェスター、ヘザーセットを好演。とりわけ、08年博多座公演から2度目だったコミカルな弁護士パーチェスターは絶妙の間で巧みに演じ、舞台を引き締めた。

 「パーチェスターは英国紳士って所を掘り下げてからじゃないとダメだと思った。英国人は自分に誇りを持っている人たち。6年前より自分らしく演じられたかなと思います」

 演じる「自分」を愛し、信じ、感性を大切にすることが役に深みを与える。そして、今回の「-ルパン」では、トップ龍演じるルパンを追い詰める警部ガニマール。原作も読んだ。

 「ルパン三世でいえば、銭形警部のモデルになった人らしい。(原作の)『最後の恋』には出てこないですけど、ルパンの宿敵で追い続けることが生きがい。実際に捕まえちゃったら少し寂しい、というくらい。ある意味、恋に似た感情、憧れもあるんでしょうね」

 万人がルパンに憧れる気持ちも理解できる。「本当にいたら、好きになっちゃう。魅力的。頭が良くて、ちょい悪なヒーロー。女の人が求める理想の男性像って、ルパンそのものじゃないですか(笑い)。宝塚の男役の美学に似ていると思うんですよ」。ルパンを男役の理想像として、追い続けていく。【村上久美子】

 ◆ミュージカル ルパン~モーリス・ルブラン作「ルパン、最後の恋」より~(脚本・演出=正塚晴彦氏)フランス人気小説「アルセーヌ・ルパン」の作家モーリス・ルブラン没後70年だった昨年、発見された「ルパン、最後の恋」を舞台化。1921年、パリのイタリア大使館の舞踏会に出席していたレルヌ大公の令嬢は、父の急死から自身の出生の秘密を知る。彼女の親友アルセーヌ・ルパンは、窮地を救うべく奔走する。

 ◆グランド・レビュー「Fantastic Energy!」(作・演出=中村一徳氏)「躍動」をテーマにダンスでショーをつづっていく。

 ☆星条海斗(せいじょう・かいと)7月19日、神奈川生まれ。父が米国人で、小学1年から米国で暮らし、同5年のとき帰国。アメリカンスクール9回生(中3)のとき、宝塚歌劇を初観劇。子どものころからバレエ、声楽を習い、児童劇団の経験もあり、入団を決意。日本舞踊も習い、00年入団。花組公演「源氏物語 あさきゆめみし」で初舞台。06年「暁のローマ」で新人公演初主演。身長173センチ。愛称「マギー」。

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