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夢の舞台を創り続けて90年あまり。時代とともにスターを生み、話題作を手掛けてきた宝塚歌劇団。華やかなステージを作り続ける裏側で夕カラジェンヌは日々、厳しいけいこと競争の中で切磋琢磨を続けている。連載「プレシャス! 宝塚」では、そんな夕カラジェンヌの横顔を伝えます。

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リアルな男に/蓮水ゆうや

13年3月21日 [10:52]

 ビジュアル系トップ凰稀かなめ率いる長身ぞろいの宙組で、男役スター蓮水ゆうやのしなやかな手足、174センチの長身は目を引く。兵庫・宝塚大劇場で上演中の「ミュージカル・プレイ モンテ・クリスト伯」(4月15日まで)では、敵役のヴィルフォール検事を演じている。報復がテーマの作品だが、蓮水自身は「怒りの沸点」が極めて高い温厚派。もっとも客観性を持ったスターは、冷静に役柄を分析し、「蓮水のヴィルフォール」で魅せる。東京宝塚劇場は5月10日~6月9日。

「ミュージカル・プレイ モンテ・クリスト伯」でヴィルフォール検事を演じる蓮水ゆうや(撮影・清水貴仁)
「ミュージカル・プレイ モンテ・クリスト伯」でヴィルフォール検事を演じる蓮水ゆうや(撮影・清水貴仁)

 舞台ではクールな美貌、ストレートな体形を生かした男らしい立ち姿だが、普段は、少年のようなさわやかな笑顔で話す。蓮水の魅力はギャップ、そのものだ。「最近では、ある意味それが特技かも(笑い)」。

 大劇場前作「銀河英雄伝説」ではトップ凰稀演じるラインハルトの部下、無口なロイエンタールを好演。今回は、凰稀ふんする主人公ダンテスが脱獄し、自分を無実の罪に陥れた人々へ報復に向かう話で、蓮水の役どころも、主人公の標的となる敵役の1人だ。

 「自衛本能でダンテスを陥れる役柄なので、『正義の味方と悪役』というシンプルなことではない。人の心にある嫉妬、人間味があふれているとの見方もあるかもしれませんね」

 今回の「モンテ・クリスト伯」は、日本では「巌窟王」として知られ、アニメ化もされた。海外ドラマが放送されたこともある。

 「小さいときに(海外ドラマを)見たことがあって、変装して復讐(ふくしゅう)に行く展開だけ覚えていました。子どもだったので、ワクワクする冒険ものだと。見直してみると、人のエゴや人間味が興味深い。たとえば私の役なら、自分の地位、家族を守るために、ダンテスを陥れる」

 怒り、恨みの渦巻いた人々の心をあぶり出す人間ドラマでもある。だが、自身の中には、良くも悪くも、その感情がないという。

 「私、怒りにかられることがない。『穏やか』『心が広い』と言われますが、怒りの沸点が高いのか、クソッと思うことがない」

 子どものころからだ。小学低学年ごろの運動会でのこと。徒競走で先頭を走っていたが、なぜかゴール前でみなが追いつくのを待ち、一緒にテープを切った。

 「後から母に聞いたんですけどね。競争の意味は分かっていたと思うけど、人を出し抜いて何かを...という性格ではなかった」

 今公演では、若い主人公の出世をねたみ、海運会社の会計士(悠未ひろ)らが、1等航海士への昇格が決まったダンテスを陥れる。

 「嫉妬はどの世界でもある。宝塚なら、自分より下級生にいい役がつくことで恨み始める感覚かな? そう考えると、自分にはない。自分の置かれた場所で、与えられた日々を、精いっぱい生きたいと思う。だから私は、すごく嫌なことをされても、おそらく仕返し精神は生まれないですね」

 その優しさが、競争社会においては「かせ」になることも自覚していた。そんな蓮水の心に変化があった。昨年、凰稀がトップに就き、同期で宙組仲間だった鳳翔大、春風弥里らが相次いで異動となったことだ。

 「今まで隣に春風、鳳翔がいて、3人そろった中での私の個性があった。でも、今は自分で個性を出さなきゃいけない。隣に並ぶ下級生がすごく若くなった」

 後輩を頼もしく思うとともに自分の立場、要求されていることを理解した。

 「ガンガン引っ張っていくタイプではないけれど、自分のやるべきことをしっかりやることで、下級生に『蓮水さんが頑張るなら私も』と思ってもらえたら。(後輩に)背中を見せていくのが宝塚の伝統だから」

 昔から、ひとたび決意すれば行動は早く、意志は固い。7歳からクラシックバレエを習い、中学でバスケットボール部に入部したが、筋肉質な脚はバレエに向かないと判断し、やめた。

 「バスケとは使う筋肉が違うから、脚がムキムキしてきちゃって。両親とも筋肉質で、私も体質的に筋肉がつきやすいみたい。バレエを続けたいから、バスケをやめたんです」

 小学校卒業時、すでに163センチと長身に恵まれた蓮水に、バレエ教師や友人が宝塚の受験を勧めた。進路を考え始めた高校時代、偶然、BS放送で公演を見て、その2カ月後、宝塚音楽学校の試験を受けていた。

 「1月に見て、3月に受験。踊りをやっていて、幼稚園のころから歌も好きだったし(入学が)難しいとも知らず。勢いでした」

 入団12年。笑いながら受験当時を振り返る。ファン時代がなかったからこそ、宝塚の魅力を冷静に見つめることができる。「男役の妙味を芸術としてすてきだと思える。客観性が私の個性かな、と思います」。先輩や知人から、最近「蓮水は男役というより、男に近い」と言われるという。

 「体形が男性的。骨盤が(張って)ないから、なんですけど。体形にも助けてられて、リアルな男性を目指したい」。天賦の才と客観性を武器に、男役道を究めていく。【村上久美子】

 ◆ミュージカル・プレイ モンテ・クリスト伯(原作アレクサンドル=デュマ・ペール、脚本・演出=石田昌也氏)日本では「岩窟王」の題名で知られ、映画、舞台化もされている。19世紀初頭のフランスを舞台に、若き航海士エドモン・ダンテスは、婚約者メルセデスとの結婚も決まり幸せの絶頂にあったが、無実の罪で孤島の監獄に投獄される。ファリア神父と知り合い、ダンテスは脱獄。モンテ・クリスト島の財宝を入手し、仕返しを始める。

 ◆レビュー・ルネッサンス「アムール・ド・99!!-99年の愛-」(作・演出=藤井大介氏)99年の歴史の中で、宝塚歌劇が繰り広げてきたショー、レビューの名作、名場面の再演を盛り込んだステージ。

 ☆蓮水(はすみ)ゆうや 4月6日、神奈川生まれ。02年に88期生として入団。同年、星組「プラハの春」で初舞台を踏み、宙組に配属。06年「維新回天・竜馬伝!」新人公演で2番手の中岡慎太郎役に抜てき。08年、宝塚バウホールのワークショップ「殉情」で初主演。同期の春風弥里、鳳翔大の男役3人で「みー、ちー、だい」と称され、宙組内で、切磋琢磨(せっさたくま)してきたが、昨年、春風は花組に、鳳翔は雪組へ異動となった。身長174センチ。愛称「ちひろ」「ちーちゃん」。

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