日刊スポーツのニュースサイト、ニッカンスポーツ・コムです。


プレシャス!宝塚のイメージ画像

夢の舞台を創り続けて90年あまり。時代とともにスターを生み、話題作を手掛けてきた宝塚歌劇団。華やかなステージを作り続ける裏側で夕カラジェンヌは日々、厳しいけいこと競争の中で切磋琢磨を続けている。連載「プレシャス! 宝塚」では、そんな夕カラジェンヌの横顔を伝えます。

プレシャス!宝塚は以下のURLに移転しました。
(http://www.nikkansports.com/entertainment/column/takarazuka/)

最新記事はこちらから→

香り立つ色男/紅ゆずる

12年8月30日 [11:30]

 星組男役スター紅ゆずるは、主演公演「ジャン・ルイ・ファージョン-王妃の調香師-」(9月6~17日=兵庫・宝塚バウホール)で、仏王妃マリー・アントワネット御用達の香水商、ジャン・ルイ・ファージョンを演じる。王妃の心をとらえた実在の調香師役。紅は6月下旬、4泊6日の"弾丸フランスツアー"を敢行し、自由なパリの空気に魅了され、移住願望さえ芽生えたという。実際に調香体験もし、心はすっかり仏の香水商になりきっている。東京・日本青年館大ホールは同25~30日。

主演公演「ジャン・ルイ・ファージョン」の役どころについて語る紅ゆずる
主演公演「ジャン・ルイ・ファージョン」の役どころについて語る紅ゆずる

 スリムな体にクールな目元、ナイーブなルックスとは裏腹に、舞台では大胆な演技が特長の紅。大阪育ちで、しゃべりも達者。外見とのギャップも魅力だが、フランス弾丸旅行の報告も、さながら珍道中だった。

 「海外ではトラブルが起こるんで、苦手なんですけど、パリに行ったことがなくて、この機会を逃したら、もう行かないと思ったんで。パリに住みたい!って思っちゃいました」

 紅は今公演で、仏王妃アントワネット御用達の香水商を演じる。実在したジャン・ルイ・ファージョン。前作「ダンサ・セレナータ」の宝塚、東京公演の合間、6月下旬から4泊6日の強行日程で仏旅行へ出た。「みんな『6日で?やめとけ』って言っていましたけど(笑い)」。苦手意識があった海外旅行。霊感が強く、不安もあった。

 「パリって、霊的に感じることもあると聞いていましたが(宿泊先でも)特に怖くはなくて」。ホテル裏側の公園は、太陽が沈むとライトアップされていた。

 「サマータイムでずっと明るかったんですが、ようやく暗くなったので、オレンジジュースを飲みながら公園へ行ったんですよ。すごくきれいだった。誰もいなくて『(静かで)いいな~』なんて思いながら...」

 翌日、現地のガイドから、仰天の事実を聞かされる。その公園は、王妃ら、処刑された貴族の遺体が置き去りにされていた場所だった。「霊感があると思っていたんですけど、全然ない!新たな自分を発見してしまいました(笑い)」。

 街中でも、発見続き。カフェに入ると「歴史の遺物」らしきものが無造作に置かれていた。

 「日本だと、額縁に入れて博物館に置いてありそうなもの。アントワネット直筆の処刑台に行くときのサインらしき書面や、ロベスピエールの遺書らしきものが普通にポンと...。写真撮影もお構いなし。ベルサイユ宮殿でも何も言われないので、ここぞ!とばかりに撮りまくりました」

 紅の達者なトークは、フルスロットルで続く。

 「夜景を楽しもうと思って、ナイトクルージングに行ったら、あまりにサマータイムで(日中が長く)全然暗くならない。延々、夕方...。でもそれはそれ。なんてステキ!って」

 ハプニングもプラス思考で楽しんできた。今回の役柄は、アントワネットの心をとらえた腕を持つ香水商だ。実際に、調香体験もした。ジャン・ルイは、仏国内では名が知られ、彼についての説明もあった。

 「講習も受けまして、あの時代は体臭を消すのが目的で、においのきついものが主流でした。でも彼は、気持ちを落ち着かせ、幸せになるために香水はある、と。香水商というよりは芸術家、科学者みたいな感じ。何と何を混ぜたらどうなるか?と科学的に分析して作っていたそうです」

 紅も、好みのかんきつ系で香水を仕上げてみた。

 「すごくいい香りだと思ったのに、今かぐと何かが違う。自分で作っても気分や体調、湿度で好みのにおいは変わる。まして誰かのために作る場合は、自分の臭覚に加え、相手に合うにおいを考えないと。すごく繊細でいないといけない」

 身をもって、ジャン・ルイのすごさを知り、一方で共通点も見つけた。「私も鼻が利くんです!香水の残り香で、誰が通ったのか分かる」。下級生時代は「アロマテラピストの資格に興味を持っていた時期もあって、この役が来たとき、私が"香り好き"って知ってた?って」と笑った。

 公演ごとに香水も変える。「役のイメージで、香りを変えますね。けいこ場と、オフでも」。香りへのこだわりは強い。「今はローズ系。アントワネットが愛した花はローズらしい」。臭覚、空気感、五感から役へアプローチする。今作、贅(ぜい)の限りを尽くした仏王宮が崩壊していく様を描く。

 「ロココ調も、コスチューム系も好きですが、人間ドラマを描いているので『きれい』だけでは終わりたくない。世界観はベル(サイユの)ばらみたいに思われるでしょうけど、華やか一色ではなく、革命によって追い詰められ、本性が出てくる中、彼は死へ向かって覚悟している。強い芯のある男を見せたい。彼から学ぶことが多そうです」

 五感をフル稼働させ、革命の波にのまれていく男を演じる。【村上久美子】

 ◆ジャン・ルイ・ファージョン-王妃の調香師-(作・演出=植田景子氏) 仏王妃マリー・アントワネットの心をとらえた王室御用達の香水商、ジャン・ルイ・ファージョンの半生を描いたミュージカル。税金を浪費し、ぜいたくを極めていた仏王宮で、王妃から信頼され貴族と親交を保ちながらも、ジャン・ルイは「すべての人間は平等である」との考えを捨てなかった。絶対王制の崩壊。革命へと時代は進む中、民衆と同じ気持ちを持ちながらも、王妃の純粋さにも魅せられていく男を中心とした人間ドラマ。

 ☆紅(くれない)ゆずる 8月17日、大阪市生まれ。東大谷高を経て、02年「プラハの春」で初舞台。星組に配属。入団7年目のラストチャンスだった08年「スカーレット・ピンパーネル」で新人公演初主演。昨年は、1月にバウ公演「メイちゃんの執事」主演。同4月の本公演「ノバ・ボサ・ノバ」では、オーロ、マール、メール夫人を役がわり。身長173センチ。愛称「さゆみ」「ゆずるん」。

このコラム記事には全0件の日記があります。

プレシャス!宝塚の最新記事





日刊スポーツの購読申し込みはこちら