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◆石井宏美(いしい・ひろみ) 福井県生まれ。高校時代に陸上、水泳などのスポーツに夢中になり、大学時代にはアジア大会、ユニバーシアードなど様々なスポーツの本格観戦を開始。その後、専門学校を経て、98年からサッカーai(日刊スポーツ出版社)の記者としてJリーグ、高校サッカーの取材のため、全国を飛び回る。現在もサッカーを中心に高校生スポーツなど、ライター活動を続ける。05年から出版している「日刊スポーツが見たペ・ヨンジュン」の編集を担当したことをきっかけに、韓国ドラマ、K-POPに魅せられ、現在に至る。

K-POP=アイドルではない/古家正亨さんインタビュー 前編

13年1月16日 [20:18]

 1990年代から現在に至るまでの韓国のポピュラー・ミュージック史を、名盤とともに振り返ることのできる『ディスク・コレクション K-POP』(シンコーミュージック・エンタテイメント刊)。昨年12月27日に発売された同書には、先駆けであるソテジワアイドルからBoA、東方神起、少女時代、そして世界的スターとなったPSYまで、1990年代から2012年にかけて韓国でリリースされたアルバム約540枚を一挙に紹介しています。
その「ディスク・コレクション K-POP」の監修・執筆を担当した、現在、ラジオDJ、テレビVJ、K-POP音盤の解説を始め、大学などで韓国を中心とした東アジア研究に関する講義を行うなど、幅広く活躍中の古家正亨さんに韓国音楽についてお話を伺いました。

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――2009年頃から多くの日本人がK-POPを聴く機会が増えましたが、K-POPとひと言でいっても、そのジャンルは幅広く、多岐に渡っていることと思います。

「『K-POP』という言葉は1990年代の後半に日本人が作ったもので、昔からあったわけではないのです。それまで、韓国の音楽は『歌謡』と呼ばれ、おおまかにはバラードとダンスにわけられていました。それが1990年代後半からアイドルの出現ととともに、音楽の多様化が本格的に加速し、日本のメディアによって、K-POPという言葉が定着するところとなりました」

――それまでは「K-POP」と呼ばれていなかったんですね。

確か韓国国内でも2005年頃までは『K-POP』とは言っていなかったと思います。本格的に言い始めたのが2006年ぐらい。さらに、2010年のKARAの日本上陸で、日本でもK-POPと騒がれるようになりました。現在、日本では『K-POP=アイドル』という定義になっていますが、『K-POP』という言葉は、そもそも韓国の大衆音楽全般を指した言葉。特に若い人たちに、『K-POP=アイドルではない』ということを伝えたく、今回このタイトルにさせていただいたのです」

――著書「ディスクコレクション K-POP」では、膨大な韓国音楽の中から、600枚近く厳選しています。その作業はかなり、困難を極めたのではないでしょうか。

「韓国国内でも名盤とされ、韓国人が『これこそ韓国の音楽に影響を与えた音楽だ』という、韓国音楽を語る上では外すことのできないアルバムを網羅しています。また、そこに僕の嗅覚で選んだアルバムも加え、年代ごとに紹介しているのが特徴です。そこには16年に渡って務めてきたラジオDJのカンも働いていますね。ラジオでも『この音楽がかかったら、きっと耳に入ってくるだろう』、『前後で洋楽がかかってもK-POPとして浮かないだろう』というようなことを考え、違和感なく日本人が吸収できる韓国の音楽を選んで、入れています」

――古家さんはこれまでどのくらいの曲数の韓国音楽をお聞きになっているのですか?

「自宅にはCDが2万枚以上あります。すべて自分で購入しました。1999年から最低でも1カ月に1回はソウルにいっているのですが、それもかれこれ13、14年になります。そのたびに必ずCDを購入するようにしていて、1回の渡韓で100枚程度購入することも。おかげで、いつも足を運ぶCDショップの数少ないVIP会員です(笑)。購入したアルバムはすべて聴いて、いいものだけを番組でかけています」

――それだけ多くの音楽を聴いていると、選盤するのはもちろん、執筆するにあたっても、かなりご苦労があったのではないでしょうか。

「実は先日、この本を読んだ方から、すごくいい言葉をいただきました。それは、『これを読んだら、(韓国の音楽の)歴史がわかった』というもの。編集者の絶大な協力があってこそなんですが、この『ディスク・コレクションK-POP』は、ただ単純にアルバムが並べられているのではなく、アルバムの並びに前後の相関関係があるからです。たとえば、前のアルバムの作曲家と次のアルバムの作曲家が共通しているとか、このアーティストがここでフィーチャーされているなど、読んでいくと、韓国音楽業界の一連の流れがわかる。そこを読者に感じとっていただけたことは本当に嬉しいですね。ただ、数ある枚数の中からの絞り込みの作業は大変でした。それに、ギリギリまで新しい情報を入れようとしたため、何度も原稿を書き直すという作業もありました。それだけに、読んだ方から『すごくいいですね』という言葉をいただいた時は本当に涙が出るほど嬉しかったです」

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――ここはぜひ読んでもらいたいというポイントはありますか?

「この『ディスク・コレクション』を制作するにあたっては、『どうしても年代別にしたい』という思いがありました。それは、年代別にすることで、音楽的な流れがわかるのはもちろん、ジャンル別で区切るのだけでは見えないものが見えてくると思います。この本を読む方は、当然、韓国の音楽そのものが好きな方もいれば、単純にアイドルが好きという方もいると思いますが、たとえば、そのアイドルが好きな方が、後ろからさかのぼって読んでいくことで、『このアイドルはここに行きつくんだ』という新しい発見もできる。そのようにアルバムを通して、"韓国の音楽史を見る、知る"というテーマが、この1冊には詰まっています」

――おおよそ4年ごとに区切られているのは、韓国音楽界が4年周期で変化があるということなのでしょうか?

「まずW杯が行われた2002年と、韓流ブームが起こった2003年から2004年にかけてが、1つの大きな転換期でした。あとは東方神起が日本でブレイクする2008~2009年あたりも、韓国の音楽に対する認知がかなり日本でも広がってきた。それと同時に韓国国内では、それまでJ-POPの方に向いていた人たちが、洋楽の方向しか見なくなったという音楽的な転換期という意味での区切りではありますね」

――「ディスク・コレクション K-POP」では、古家さんならではのコラムも必見ですね。

「1990年代以前の韓国の音楽に関しては、かなり調べましたが、残念ながら漏れてしまった内容もたくさんありました。それをある程度、短いコラムの中で、じっくりと振り返れるという部分では、比較的有益な中身になっているのかなと思います。あとは、『韓国的R&B』というように音楽ジャンルをくくる時がありますが、その『韓国的』というものを定義づけることができたのではと思っています」

――そのあたりも含め、古家さんがこの著書で一番伝えたいことは?

「韓国の音楽とかかわる仕事始めて13年になりますが、この13年は激動の時間でした。自分が担当するラジオ番組でも日々感じるほどです。そのような出来事は、なかなか日本にいると経験できないのではないかというくらい、本当にいろいろなことがありました。それと同時に、韓国の音楽界も、流行の変化と同じように、音楽そのものの変化も大きかった。そういう音楽のダイナミズムというものは、残念ながら、日本の音楽界からは感じられないんです。
1990年代、日本は100万枚のアルバムが続出していました。それが、まさに今の韓国の音楽界といえるでしょう。約20年遅れで、隆盛を迎えているんです。しかし、これから先は必ず、いろいろな苦労が出てくるはず。ですから、隆盛を極めた2012年に、これまで自分がやってきたことを、一旦まとめて区切りを付けたいという思いがありました。この『ディスク・コレクション K-POP』は2013年に発売すると意味がないということで、版元さんや編集の方には無理を聞いていただきました」

――これから韓国音楽はどのような展開を見せていくと思われますか?

「この2,3年の韓国は1990年代の日本と同じように、プロデューサーシステムをもとに、ある固定されたプロデューサーが作ったものだけが、市場を席巻していました。しかし、このシステムでは、やはりどうしても飽きてしまいます。その後、日本の場合はシンガーソングライターやバンドなど、自分なりのカラーを持っている人たちが新しく音楽界を担ってきました。韓国も2012年がまさにその1年になり、Busker Busker、PSYなど、個性あるアーティストが注目を浴びました。アイドルも自分たちで曲を作れる人たちだけが生き残れるというように、個性重視の音楽界に向かい始めました。そういう意味では、韓国は今、一皮むける時期にきているのかなという気はしています」  

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後編に続く

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『ディスク・コレクション K-POP』
シンコーミュージック・エンタテイメント刊
監修・著/古家正亨

シンコーミュージック・エンタテイメント
http://www.shinko-music.co.jp/

<古家さんのサイン会決定!>
Mnet×TOWER RECORDS「応答せよ1997」スペシャル・イベント

1月18日(金)東京・お台場ダイバーシティにて、1997年の釜山を舞台に、90年代のアイドルブームをリードしたH.O.Tとジェクスキスを追いかける熱狂的ファンの女子高生たちの日常を見事に再現したことでも話題の韓国ドラマ「応答せよ1997」のスペシャル・イベントが開催されます。そのイベントに古家さんが参加し、1997年のK-POPや韓国文化を解説! また、当日はイベント終演後に書籍『ディスク・コレクション K-POP』の販売と古家さんのサイン会も行われます!

【日時】2013年1月18日(金)
【会場】ダイバーシティ東京プラザ 4F エンタメスペース
【開場/開演】18:30/19:00


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