2009年10月06日
マイケル・ムーア監督の新作が大ヒット
デビュー作「ロジャー&ミー」では、工場閉鎖で失業者が増大した故郷ミシガン州フリントのゼネラルモーターズを突撃取材し、アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した「ボウリング・フォー・コロンバイン」では米国の銃問題に鋭く切り込み、「華氏911」ではブッシュ前大統領を痛烈に批判し、前作「シッコ」では米国の医療問題に鋭いメスを入れたマイケル・ムーア監督。毎作、タイムリーな社会問題をテーマに問題定義を続けるムーア監督の2年ぶりとなる新作「キャピタリズム~マネーは踊る~」は、世界金融危機をテーマにウォール街に乗り込み、米国の市場原理主義の問題点を鋭くコミカルに暴いた「資本主義(キャピタリズム)と愛」の物語です。
サブプライム問題、リーマン・ショック、株価暴落、失業者の増大…と、100年に1度といわれる世界的な金融危機を招いたNYのウォール街。08年のリーマン・ショックを端に世界金融恐慌を引き起こした原因はいったい何だったのでしょう? 大企業の重役たちの欺瞞(ぎまん)に満ちた行動と企業と政治のペテンを独自の視点とおなじみの突撃取材で暴きだし、国民の税金を取り返すべくムーア監督がついに立ち上がりました。
借金を美徳とし、クレジットカードで次々と新商品を購入する米国人。同作ではその米国型の市場主義経済の崩壊と、金融危機が一般庶民に及ぼす破壊的な影響を克明に描いています。住宅ローンが払えず家を強制退去させられ、住む場所さえない人々。企業の重役が大金を稼ぐ一方で大量にリストラされる人々。庶民は苦しい生活を強いられる中、彼らの税金は公的資金として企業救済に使われるというばかげた現実。そして資本主義の行き着いた先は、中間層がない「裕福な1%の人」と「貧困にあえぐ99%の人」という両極端を作り出してきたということです。
50~60年代の米国は、誰もが家を持ち、家族で週末の余暇を楽しみ、子供を大学に通わせ、医療も保険でただでまかなえ時代でした。しかし、80年代に「新自由主義」を唱えたレーガン政権以降は、そのすべてが虚構となっていきます。今や中流階級の家庭ですら、ローン返済が出来ずに家を失い、高額な医療保険を支払うことができずに病気の治療が受けられず、子供を大学に行かせることすらままならないのが現状なのです。終盤で、米国の独立宣言の文章を読むシーンが登場します。そこには「平等」を目指すことが記されています。ムーア監督がこの作品で訴えているのは、単なる資本主義批判ではなく、まさに建国当初の精神であった「平等の精神」の復活なのです。
現代において、平等な教育、医療が受けられ、生活が保障される社会作りを目指すことは可能なのでしょうか。ムーア監督はシティバンクやモルガンスタンレーなどウォール街の銀行に大型車で乗り込み、“$”マーク入りの袋を手に「私たちのお金を返してもらいに来ました」と突撃し、犯罪現場用の立ち入り禁止の黄色いテープで建物を囲む大暴れも披露するなど、おなじみのアポなしゲリラ取材も展開しています。
9月23日からロサンゼルスとニューヨークで限定公開され、1館あたり6万ドルの興行をたたき出すヒットとなった同作。2日からは全米で拡大公開がはじまり、エンディングロールでは映画館が拍手喝采(かっさい)に包まれるほど人々の共感を得ています。日本では12月限定公開、来年1月に全国拡大公開される予定です。
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- 千歳香奈子(ちとせ・かなこ)
- 1972年、札幌生まれ。92年に渡米しシアトル大学付属語学学校に入学。93年サンタモニカ大学に入学し、写真を専攻。95年に同大学を卒業後、ロサンゼルスでテレビのコーディネーターなどを経験。96年に日刊スポーツ新聞社アトランタ支局でアトランタ五輪取材をアシスタント。99年6月から、ロサンゼルスを拠点にハリウッドスターのインタビューや映画情報を取材中。2008年1月末に学研より新書「ハリウッド・セレブ」を出版。
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