2009年8月25日
黒沢映画「七人の侍」に8人目の侍がいたら…
米国映画でありながら日本人俳優による全編日本語の短編映画「THE 8TH SAMURAI(八人目の侍)」が、アカデミー賞公認の世界最大の短編映画祭「LA Shorts Fest」で、最高賞となるベスト・オブ・フェストを受賞しました。
同作は、黒沢明監督の「七人の侍」をモチーフに、もしあの映画に8人目の侍がいたら…とユーモラスに描いた作品。最初の予定では8人だった侍が、監督がクランクイン直前に見た夢が発端で7人にされてしまいます。8人目を演じるはずだった俳優の運命はいかに…。ハリウッドでもリメークが進んでいる「七人の侍」へのオマージュ作品に出演するのは、ハリウッドで活躍する日本人俳優たち。そして8人目の侍を演じたのは、「ラスト・サムライ」や「硫黄島からの手紙」に出演する尾崎英二郎です。今年2月に行われた短編映画際「Show off your short film festival」では、主演男優賞にも輝きました。メガホンを取ったのは、マーティン・スコセッシ監督らのもとで制作助手を5年間務めるかたわら、ウェブマガジンで映画記者としても活躍するジャスティン・アンブロシーノ監督。この作品は、奨学金を獲得して進学したロサンゼルスの名門映画学校AFI(アメリカン・フィルム・インスティテュート)の卒業制作として手がけた作品です。「七人の侍」という傑作の中にもう一つの作品を生み出したアイディア、そしてそれが米国人の視点で描かれているという点は、とても新鮮で見ごたえも充分。同賞受賞で通算10個の賞に輝いたのもうなずけます。
「全米や各国からの短編が競い合う映画祭での最高賞は本当に大切なステップ、将来への勇気につながりました。若き才能が集まってくるハリウッドの街で、黒沢明監督の傑作『七人の侍』をモチーフにした、全編日本語セリフ、日本人出演の僕らの映画が、これほどまでに愛され、高く評価されたことは非常に大きな意義があると自負しています」と主演の尾崎。
題材は世界的巨匠黒沢監督の「七人の侍」であり、監督は米国人、編集・美術・衣裳の担当は韓国人、音楽はイタリア人、そしてキャストは全員日本人というまさにインターナショナルな作品。現場では言葉を越えて、意見をぶつけ合いながら作品作りが行われたそうです。
「1950年代の日本の名作映画へのオマージュでもあり、モノクロで撮影された奥行きや情緒は、米国人監督の作品とは思えないリアルさで、米国短編作品群の中では異彩を放っています。“八人の侍”に入れなかった新人俳優の挫折とそこからもう一度立ち上がっていく心の動き、そして夢に賭けるひとりの男の心意気を感じ取っていただければ」と尾崎。
日本では7月3日から12日にわたって福岡で行われた第23回福岡アジア映画祭2009で初上映され、10月には札幌国際短編映画祭2009でも公式上映されることが決まっています。また、この賞を受賞したことで、正式に来年のアカデミー賞短編部門のノミネート候補となりました。過去、同賞受賞短編33作品がアカデミー賞の短編部門にノミネートされ、うち11作品がオスカーを手にしているだけに、この作品への期待も高まっています。
「今こうして、映画の国の映画の街で闘えることは本当に幸運なことだと思っています。僕らのような日本人出演陣への米国での評価が、日本の皆さんに伝わること、そして将来国境を越えて映画界で働きたいと夢を抱いている若い方々と少しでも希望を分かち合えるとしたら、この土地での競争に挑み続けていくかいがあります。アカデミー賞の実写短編ノミネートにまで手が届くかどうかは神のみぞ知るところですが、来年の春まで、またこの作品の行方にときめきと興奮を感じていられるのは、映画人として心から幸せだと、スタッフ、共演陣、支援者の皆さまに感謝しています。一緒に“奇跡”を祈っていて下さい!!」。
(このコラムの更新は毎週火曜日です)
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- 千歳香奈子(ちとせ・かなこ)
- 1972年、札幌生まれ。92年に渡米しシアトル大学付属語学学校に入学。93年サンタモニカ大学に入学し、写真を専攻。95年に同大学を卒業後、ロサンゼルスでテレビのコーディネーターなどを経験。96年に日刊スポーツ新聞社アトランタ支局でアトランタ五輪取材をアシスタント。99年6月から、ロサンゼルスを拠点にハリウッドスターのインタビューや映画情報を取材中。2008年1月末に学研より新書「ハリウッド・セレブ」を出版。
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