2009年8月03日
人気お笑い番組で司会を務める大阪人
今、アメリカで日本人が司会のリアリティー番組「I Suvived A Japanese Game Show」が人気を博しています。アメリカのテレビ史上初の日本人司会者に大抜てきされたのは、大阪出身でロサンゼルス在住の俳優兼コメディアンの神田瀧夢(かんだ・ろむ)。日本在住の著名タレントも大勢受けたといわれるオーディションを勝ち抜き、栄光の座を手にしたのです。「最初にインタビューをして、その時にジョークを言ったのが受けました。そして1カ月後に台本を3ページもらってカメラテストを受けました」。米3大ネットワークの1つ、ABCテレビが昨年からゴールデンタイムに放送している同番組は、12人の田舎暮らしのアメリカ人が日本に連れて行かれて、25万ドルの賞金を賭けてさまざまなゲームを競うというもの。高視聴率を獲得し、現在は第2シーズンが放送中です。10エピソードの番組は、約1カ月かけてすべて日本で撮影されています。観客は日本人、ゲーム参加者はアメリカ人という特殊な状況。「日米両語を駆使しながら両者を笑わせるのが大変でしたね。1エピソードで15ページにも及ぶ台本を覚えても台本がコロコロと変わるし、時間がないからジョークもカットされてしまう。半分くらいはアドリブです」。
ニューヨークとロサンゼルスのコメディークラブでスタンダップ・コメディアンとして舞台に立った経験を生かして毎回、英語と日本語を駆使したジョークでアメリカ人の視聴者を存分に笑わせています。エンターテインメントサイトの人気投票で、08年度のNO・1ゲームショー・ホストに輝くなど、今やアメリカで神田瀧夢の名を知らぬ者はいないほどの人気者に。同番組のヒットで、さまざまなトーク番組にも引っ張りだこで、9月公開のマット・デーモンと共演する映画「インフォーマント」(スティーブン・ソーダバーグ監督)にも出演しています。
「日本を背負って世界に通用するエンターテイナーになる」ことを夢見て、日本の伝統芸能である殺陣や空手、剣道、日本舞踊、能・狂言などを通算26年もの歳月をかけて習得してきた神田にとって大きな転機となったのは、トム・クルーズ主演の映画「ラスト・サムライ」のオーディションに落ちたことでした。「武道など伝統芸能でずっと勝負してきたのに落ちたことで、渡辺謙さんや真田広之さんと同じ道で勝負をしても勝ち目はないと痛感しました。自分にできることは何かと考えた結果、コメディー(お笑い)だったんです」。そして、ニューヨークで大阪から来た友人と組んで漫才を始めたのです。「いきなりスタンダップに入ったわけではないんです。最初はボケとツッコミの漫才を英語でやっていました」。すぐに頭角を現し、ハーレムの伝説であり、ブラック・エンターテインメントの殿堂でもあるアポロシアター「アマチュアナイト」に出演。その後はスタンダップ・コメディアンとして一人でスタンダップ・コメディー全米大会に出場してアメリカ人を押しのけて優勝。ロビン・ウィリアムスらも出演した伝説の劇場ザ・コメディー・ストアでレギュラー出演者となりました。
日本ではまだ無名の神田ですが、その経歴はなかなか面白いものがあります。19歳で英ロンドンと米国に留学。この時受けたカルチャーショックがきっかけで、「日本のみならず、世界を舞台にしたエンターテインメントの世界で仕事をしたい」と決意。帰国後は日本で伝統芸能を習得する傍ら、87年に「Tokyo Pop」で俳優デビューを果たし、その後は北野武監督の「その男凶暴につき」(89年)を皮切りに「キッズリターン」(96年)まで、北野作品すべてに出演する快挙を成し遂げます。94年から96年の3年間は、アメリカ横断を皮切りに世界30数カ国を巡る一人旅を敢行。99年に再渡米してからは、ニューヨークを舞台にさまざまなテレビ番組や映画のオーディションを受け、日本で培った経験を生かしてテレビや映画、舞台などで活躍。06年にエンターテインメントの本拠地ロサンゼルスに移住。現在は映画のプロデュースも手がけています。
笑いの文化が違う日本人がコメディアンとしてアメリカで活躍するのは、とても大変なこと。「パンチライン(ジョークのオチ)は日本語と英語では違います。コメディークラブで分からないながらもアメリカ人と一緒になって笑っているうちに、なんとなく分かってくるんです。例えば日本ではたけしさんが被り物をして出てくると面白いじゃないですか。でもアメリカ人にはその笑いは分からないんです。ゴリラの格好をしていたら、ゴリラの真似して出てこないといけない。それがアメリカなんです。でも、ベタな笑い、万人に受ける、考えなくても良い笑いというのはあるんです。関西人なので、私はベタな笑いが好きですね」。
「I Suvived A Japanese Game Show」は、スイスのルツェルンで発表されたローズドール賞で、リアリティー番組として最高となるゴールデン・ローズ賞を受賞。世界153カ国に放映権も販売されています。「日本の素晴らしい文化もたくさん出ています。ぜひ日本の人にも見てもらいたいですね。日本人が見るとしらじらしいと感じる部分もあるかもしれませんが、アメリカ人が日本をどうとらえているのかをぜひ知ってもらえたら」。
今も日本に帰国するたびに伝統芸能を学び、ロスではアメリカ人相手に殺陣と演技を教えてもいます。将来の夢は日本のよさを世界にアピールすること。「日本は素晴らしい国なんだと分かってもらえるような映画を作りたい。自分の生き様を通して、日本の魂、武士道をアメリカ人に少しずつ伝えていけたら」。残念ながら「I Suvived A Japanese Game Show」は日本では、まだ放送されていませんが、この番組が近い将来、日本でも放送され、神田瀧夢の名が日本でも知れ渡る日を楽しみにしたいです。
写真=リアリティー番組「I Suvived A Japanese Game Show」で司会を務める神田瀧夢
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- 千歳香奈子(ちとせ・かなこ)
- 1972年、札幌生まれ。92年に渡米しシアトル大学付属語学学校に入学。93年サンタモニカ大学に入学し、写真を専攻。95年に同大学を卒業後、ロサンゼルスでテレビのコーディネーターなどを経験。96年に日刊スポーツ新聞社アトランタ支局でアトランタ五輪取材をアシスタント。99年6月から、ロサンゼルスを拠点にハリウッドスターのインタビューや映画情報を取材中。2008年1月末に学研より新書「ハリウッド・セレブ」を出版。
- 公式HPはこちら
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